
日進月歩の躍進を続けている言語諸科学は近年、内部にさらなる飛躍の可能性を持ちつつ、その分析と説明の対象となる現象の範囲を広げつつあります。言語学専攻では、各自の専攻言語(英語、ドイツ語、フランス語、イスパニア語、ロシア語、ポルトガル語、日本語)の研究と一般言語理論の研究は相即不離の関係にあると考えて指導を行っています。
同時に言語教育、言語聴覚障害研究など、一般言語理論と関連する応用言語の研究面も充実させています。また各分野における著名な学者を招いたり、国内外の優秀な学生を受け入れたりすることで、研究を発展させる知的な刺激が得られる環境を整えているのも特長の一つです。こうした取り組みの成果として数多くの修了生が教育機関を中心に活躍しています。
カリキュラムの特徴
博士前期課程では各自の専攻言語の知識を基礎に、言語学の基礎的概念と方法を学び、特定領域をテーマとする修士論文を作成し、研究方法や論文のまとめ方を身につけます。博士後期課程では3年間での博士論文作成を第一の目的としています。入試は研究計画書等の提出、面接を実施し、計画内容の適切性と実現可能性の視点から選抜します。
授与学位
- 博士前期課程:修士(言語学)
- 博士後期課程:博士(言語学)
取得可能な教員免許・免許教科
- 中学校専修(英語・ドイツ語・フランス語・イスパニア語・ロシア語・ポルトガル語)
- 高等学校専修(英語・ドイツ語・フランス語・イスパニア語・ロシア語・ポルトガル語)
※1 教員免許が取得できる専攻は、博士前期課程に限ります。また、1種免許状を取得済、あるいは1種免許状取得要件を満たしている教科のみ取得可能で、必ずしも全教科取得できるわけではありません。
※2 言語聴覚研究コース、日本語教育学コースを除きます。また、各自の専攻言語に応じて1教科のみ免許状を取得できます。
言語学専攻の特色
多種多様な科目が開講
必須科目である「音声学・音韻論基礎」「統辞論基礎」をはじめとして、応用言語学や社会言語学に至る多種多様な科目を開講。幅広い素養を備えた研究者の育成を行います。
専門分野以外も履修
博士後期課程では、各自の専攻言語や専門分野の体系についての知識を深めると同時に、特定の専攻分野に片寄らない観察力と分析力も養うため、専攻分野以外から履修ができます。
3つのコース
言語聴覚研究コース
言語聴覚研究コースでは、コミュニケーション障害について基礎理論から臨床(治療教育やリハビリ)に至る科目を通じて、広い視野と豊かな人間性を備えた指導者および研究者の養成を目指しています。指定科目を履修することにより言語聴覚士の国家試験受験資格の取得が可能です。
英語教授法コース
英語指導の理論的知識を基盤として、さらに高度な実践力を鍛えることを目標とした、現役の英語教員、および将来英語教育に携わりたいと考えている方々を対象にしたコースです。必要な単位はすべて英語で取得することができます。
日本語教育学コース
日本語教育に携わりたいと考えている方を対象にしたコースです。日本語の習得に関する研究を進めながら、効果的な日本語教育について考えます。研究科内の他コース科目を履修することもできます。また、学内の日本語教育のティーチング・アシスタントや留学生の日本語指導員として実践を通して学ぶことができます。海外の大学の日本語プログラムの学生との交流もあります。
修了生の最近の主な研究テーマ
修士論文
- Flashcard Format Strategies for Vocabulary Retention: Effects on Stuents’ Learning of Nouns and Verbs
- Comparing the Efficacy of Different Feedback Timings in a Focus-on-Form Lesson
- On the Status of Clause-Initial for in English Infinitival Clauses
- Native-speakerism and Authenticity: An Analysis of Japanese Approved Textbooks Aimed at Junior High School Students
- Investigating the effect of teacher and student translanguaging on the participation of Japanese EFL learners: Exploratory action-research of CLIL in Japan
- Using Shadowing with a Communicative Task: An Exploratory Study
- Raising Young Learners’ Metacognitive Awareness: Its Effects on Language Proficiency and Attitude Towards Learning English
- The Influence of Adapted and Unadapted Versions of Listening Materials on the Learner’s comprehension – the Case of Myanmar Students Learning English as a Foreign Language at Higher Education
- Examination of Authorized Junior High School Textbooks in Japan in Light of Second Language Acquisition Research
- Effects of One-on-one Online English Lessons on L2 Motivation in a Japanese Secondary School Context
- Effective of Incidental Vocabulary Acquisition through YouTube Stories – The Case of Myanmar Primary School Students Learning English as a Foreign Language
- 漢字書字におけるチャンキングについての検討 – 漢字・図形間での比較 –
- 構音発達についての新たな視点 – モーラの確立過程から見て –
- 失語症者のインターネットを利用したコミュニケーションの現状とその支援について
- 認知症の人の会話における話題の展開
- 会話における同調傾向 – 吃音者と非吃音者の比較 –
- 身体部位ごとの痛みを表すオノマトペの異同について
- 中国人日本語学習者の「よほど」「よっぽど」の意味理解 – コーパス分析とアンケート調査をもとに –
- 中国人JSL学習者の「不満表明」表現に関する一考察
- 在日中国人大学生の感謝表現に関する研究 – 感謝ストラテジーの使用と母語話者の容認度を中心に –
- 失語症者における言語流暢性課題に影響する要因について – 名詞と動詞の提示、心理言語学的要因における違い –
- 中国人日本語学習者における語用論的転移の双方向性 – 再誘い行動について –
- 日本語コミュニケーション意欲の形成における動機づけと教室環境の役割 – 中国の大学の日本語学習者を対象に –
- 一側性難聴者の人工内耳装用に関するインタビュー調査 – 人工内耳装用に至る経緯、装用効果に焦点を当てて
博士論文
- Functional Parametrization Hypothesis in the Minimalist Program
- Measuring Plagiarism Knowledge: Development and Validation of an In-class Assessment Tool for Japanese L2 Academics Writers
- 日本語複合動詞の習得における明示的/暗示的指導の効果 – 用法基盤的アプローチから見た習得プロセス –
教育の方針
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博士前期課程
本課程では、言語という人間の最も根本を成す能力を探求することにより、本学の設立目的及び使命を果たそうとする人材の養成を目的として、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 幅広い言語学の分野から自らの専門領域を確立させるため、初年度より各々の分野で所定の科目履修をすることにより得た、言語研究の現状理解と方法論
- 解決すべき問題を研究課題という適切な形式で問う力
- 問題解決のために最も適切なデータ収集、および分析を行い、意味のある解を見つけ出す力
- 言語学の基礎概念と方法論を広い視野に立って身につけ、学究的な思考方法を学び、特定の専門領域を究明する力
- 結果の意味づけができ、専門性を活かして社会に貢献する力
博士後期課程
本課程では、言語という人間の最も根本を成す能力を深くかつ広く探求することにより、本学の設立目的及び使命を果たそうとする人材の養成を目的として、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 博士前期課程で身につけた専門領域での方法論と知識をもとに、オリジナリティのある研究を行い論文にまとめる力
- 独力で高度の研究を遂行することができる学究的能力
- 言語学および関連諸科学に関する高度に専門的な理論および方法論に熟達した自立した研究者として、国際的なレベルで認められるような学術論文を完成させる力
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博士前期課程
本課程では、ディプロマ・ポリシーに沿って、言語を学術的に深く考察するよう、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています
- 専門の如何にかかわらず言語に関する基礎的な知識を修得する。そのために各コースにおいては以下の科目を必修科目と指定しており、できる限り1年目で履修させる。1) 言語学一般-音声学・音韻論基礎、統辞論基礎 、2) 言語聴覚研究-言語聴覚障害学特論、言語聴覚障害研究法B(実験計画法)、言語聴覚障害研究法D(文献講読)、3) 英語教授法-Introduction to TEFL in Japan、Second Language Acquisition、Introduction to Linguistics、4) 日本語教育学-日本語教育文法Ⅰ、第二言語習得Ⅰ、言語・文化・社会、日本語教授法概論。
- 英語、ドイツ語、フランス語、イスパニア語、ロシア語、ポルトガル語の6学科に合致させた形で各言語に関する音声、音韻、統辞法、意味、文体、歴史に関する科目を開設する。
- 上記の必修科目および他選択科目を履修することにより、各コースにおいて専門的なテーマを追求するために必須となる理論的知識、理論を応用する能力、問題解決能力、批判的思考能力、適切なデータを収集分析解釈する能力、個々のデータから一般化し理論を構築する能力を修得させる。
博士後期課程
本課程では、ディプロマ・ポリシーに沿って、言語を学術的に深く考察するよう、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。
- 音声学・音韻論を含む理論言語学、言語聴覚障害学、応用言語学のうちから特定のテーマを選び、それについて特定の教授の個別面談に基づいた論文指導を受けさせる。
- 各自の専門分野の研究を深化させると同時に、関連分野の知見も取り入れ、専門的教養・学識を高めて独創的な研究を行わせる。
- 入学後2年次に資格試験を受け合格し、さらに2編の論文を査読付きの学術雑誌に掲載することを必須とする。
- 主として指導教員から研究指導を受け、必要とされた言語学専攻で開設されている科目を履修させる。
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博士前期課程
本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。
- 言語に関する次のいずれかの分野に学術的な関心をもっている学生。理論言語学、個別言語学(英語、ドイツ語、フランス語、イスパニア語、ロシア語、ポルトガル語、日本語)、応用言語学、言語聴覚障害学、英語教授法、日本語教育学。言語聴覚障害学専攻希望の場合には言語聴覚士の国家試験受験資格取得を目標としてもよい。
- 当該専門分野における学識および教養を高める意思があり、独自の研究成果を挙げ、社会に還元する意思をもっている学生
- 理論言語学、個別言語学、応用言語学、英語教授法を専攻する学生は修士論文を外国語(日本語教育学では外国人学生の場合、外国語としての日本語)で作成することが要請されるので、この要件で修士論文を完成するに足る外国語能力を有している学生
博士後期課程
本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。
- 博士前期課程での研究にもとづき、博士論文として研究する方向性を明確に有している学生
- 各自の専門分野の研究を深化させると同時に、関連分野の知見も取り入れ、専門的教養・学識を高めて独創的な研究を行う学生
- 学会発表や学術雑誌に投稿し、自力で研究を遂行する実力を身につけ、在学期間中に学位取得を志している学生。学会発表や学術雑誌に投稿し、言語運用能力も含め自力で研究を遂行する実力を身につけている学生
教員一覧
言語学一般、理論言語学
Herve COUCHOT 教授
応用言語学、英語教授法、日本語教育学
Antonio DONAS 准教授
Robert MACINTYRE 准教授