地域からの発想とグローバルな視点を育てるプログラム

地域研究は地域への愛着や共感、現地社会の生活や文化に親しむこと、国単位ではない地域社会からの発想、複数の学問による共同研究などを特徴としています。21世紀に入って重要な課題となっていることは、国境を越えた飢餓問題や地域紛争、地球温暖化や生物多様性減少などの環境問題、地球規模に及ぶ共生の価値観の構築などです。これらの諸現象は、グローバル・イシューであると同時に、ローカルな現場での対応を要求し、ますます地域研究の必要性を高めています。

上智大学が1997年、専門的な地域研究専攻を設けたのはこのような時代の要請に応えるためでした。地域研究専攻では、東アジア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカを対象とした地域の歴史、社会、文化、政治、経済、開発などを広く学び、地域に関する高度な知識とその応用能力を有する専門家を養成すべく指導を行っています。

カリキュラムの特徴

博士前期課程ではゼミ形式の地域研究専門科目と各地域の開発等を検討する科目群やフィールドワークを履修して、対象とする地域への専門的理解を深めます。それとともに共通必修科目によって研究に必要とされる方法論を学び、2年次には指導教員のもとで修士論文の作成に取り組みます。

博士後期課程は所定のコースワークとともに複数の教員の指導を受け、各自の研究テーマを深く究めます。2年次には、博士論文提出資格試験(課題論文の提出と口述試験及び外国語試験)の後に研究計画書を作成し、博士論文の執筆に専念する体制となっています。この専攻の修了者には国内外の大学や地域研究専門機関、シンクタンク、メディア、官公庁、民間企業などへの進路が開かれています。

授与学位

  • 博士前期課程:修士(地域研究)
  • 博士後期課程:博士(地域研究)

地域研究専攻の特色

深い問題意識、高度な知識、大きな行動力

グローバル化の時代に地域に密着して新たな知見を見出す現代の地域研究には、世界のありように関する深い問題意識、地域に密着した高度な知識、日本と現地にまたがる大きな行動力が求められます。とりわけ、研究対象地域を内側から理解するために、地域言語の習得が必須です。

地域の視点に立ってグローバルな共生を志向

異なる複数の学問分野、あるいは別個の地域に関する様々な研究成果は一見、ばらばらに存在しているように思えますが、共同研究を柱とする地域研究は、これらの知識や発想などを共有し、たがいに交流することで、既存の学問ではとらえきれない問題に立ち向かいます。それは地域の視点に立ちつつ、グローバルな現象を明らかにする営みです。多様性が調和する世界を支える次世代地域研究者の育成に努めています。

修了生の最近の主な研究テーマ

修士論文

  • Cambodian Prehistory: Past Achievements and Future Challenges in Archaeological Research
  • アラブの口頭伝承『シーラ・バヌー・ヒラール』:誰のための物語か
  • カイロの街区・地区における日常世界の変容:対面的交流が生み出す関係性と相互扶助
  • 低所得者層のキャリア戦略:メキシコの「未来を構築する若者プログラム」を中心に

博士論文

  • キリスト教への入信と信仰継承に関する民族誌的研究:台湾原住民族アミとカトリック教会を事例として
  • 19世紀英領ビルマにおける米国バプテスト派宣教と植民地支配:カレン・バプテスト側の理解と対応の諸相
  • Indian Migrants in Tokyo: A Study of Their Socio-Cultural, Religious, and Working Worlds

教育の方針

博士前期課程

本課程では、現場の視点を重視した地域立脚型のアプローチに基づき、歴史的文化的背景に配慮しながら、グローバル・イシューの原点解明と解決をめざすフィールド・ワーカー養成を目的とし、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。

 

  1. 東アジア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパの各地域の言語を用い、フィールド・ワークに基づいた方法論を確立する力
  2. 国単位ではない地域社会からの発想、及び複数の学問による共同研究によって既存の学問ではとらえきれない問題へ挑み、分析・理解する力
  3. グローバルな諸現象の解明に地域の視点とアプローチから学術的・社会的に貢献し、次世代地域研究者としてグローバルな市民社会とローカルな多様性を支える力
  4. 明確な問題意識をもち、十分な先行研究を行った上で、的確な論文構成と整合性のある論旨展開を備えた修士論文を仕上げる力

博士後期課程

本課程では、研究課題解明のための適切且つ独創的な地域へのアプローチと方法論に基づき、関連学問分野の発展に貢献する地域研究の高度な学術水準を満たすことを目的とし、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。

 

  1. 今日的課題解決のための適切なアプローチを、学問上の貢献と合わせて開発・確立し、さらに研究課題の解明に必要十分な言語能力を運用したうえで、フィールド・ワークを遂行し独自の資料入手と分析をする力
  2. 将来の学際的な共同研究も視野に入れた、研究課題の設定及び学術的貢献の可能性を洞察する力
  3. 博士前期課程で身に着けた方法論や知識をもとに、自らの専門領域を深めるべく研究を進め、独自性があり、学術的社会的貢献が期待できる博士論文を仕上げる力

博士前期課程

本課程では、ディプロマ・ポリシーの実現を目的として、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。

 

  1. 必修の基礎科目により、地域研究の基礎と多様で総合的な方法と地域立脚型の視点を修得させる。
  2. 地域間比較科目により、研究対象とする地域及び主として用いる方法論の相対化を促し、また比較の視野を培うことによって個別研究の学術的貢献について客観的に把握する力をつける。
  3. 地域研究専門科目により、研究対象に適切な方法論及び専攻研究成果を踏まえた、整合性のある論理展開が出来るように訓練する。

博士後期課程

本課程では、ディプロマ・ポリシーの実現を目的として、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。

 

  1. フィールドワークによる独創的な資料入手及びアプローチの開発を促すために、指導教員との個別論文指導を行う。
  2. 指導教員及び専攻内で開設されている科目への積極的な参加を通じて、他分野、他地域の学生と幅広く議論する。
  3. 博士論文提出資格試験により、言語能力、論理的思考も含めた学術水準の到達度を審査する。
  4. 博士論文提出資格試験に合格したのち、博士論文計画書審査と博士論文計画セミナーの実施を経て博士論文完成へと導く

博士前期課程

本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。

 

  1. 東アジア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパなど諸地域における個別的な諸現象・問題ならびにグローバルな諸問題を理解するために必要な基本的な文献を理解するための言語能力を有する学生
  2. 社会的・学問的な探求心と向上心を持ち、特定の課題に対して論理的思考を重ねた論述ができ、かつ主体的に取り組む姿勢を有する学生
  3. グローバルな市民社会と、ローカルな多様性を支えるために、実践的に社会に貢献できる専門家となることを志向する学生

博士後期課程

本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。

 

  1. 論理的思考に基づいた研究課題に取り組んだ実績がある学生
  2. 研究課題解明に必要十分な資料入手と分析に必要不可欠な言語能力を有する学生
  3. 地域社会及び社会への貢献を、学問分野と実践の上から志向する学生

教員一覧

東アジア

権 香淑 准教授

東南アジア

久志本 裕子 准教授

根本 敬 教授

丸井 雅子 教授

南アジア

サリ アガスティン 教授

田中 雅子 教授

中東

岩﨑 えり奈 教授

澤江 史子 教授

辻上 奈美江 教授

山口 昭彦 教授

アフリカ

戸田 美佳子 准教授

眞城 百華 教授

矢澤 達宏 教授

ヨーロッパ

内村 俊太 准教授

髙橋 暁生 教授

ネーヴェス マウロ 教授

松原 典子 教授

ラテンアメリカ

子安 昭子 教授

田村 梨花 教授

長谷川 ニナ 教授

幡谷 則子 教授

上智大学 Sophia University