地域研究専攻


地域研究専攻は、「地域」の視点から、国際協力、貧困、開発、宗教、紛争、テロリズム、難民、地球環境問題など「グローバル・イシュー」と呼ばれる地球規模の諸課題に取り組む研究を目指しています。学際的な幅広い視野と、複数の言語によるコミュニケーション力を活かし、現場の視点を重視して、歴史的・社会的・文化的背景に配慮しながら、グローバル・イシューの解決を目指すためのフィールドワークができる人材を養成します。
東アジア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカを研究対象地域とする教員が所属しています。
カリキュラムの特徴
博士前期課程では、ゼミ形式の地域研究専門科目と研究対象とする地域や方法論の相対化を促すための地域間比較科目や、フィールドワークを履修して、対象とする地域への専門的理解を深めます。それとともに、地域研究の基盤を作るための方法論や視点を養う基礎科目を学び、2年次には指導教員のもとで修士論文の作成に取り組みます。
博士後期課程は所定のコースワークとともに複数の教員の指導を受け、各自の研究テーマを深く究めます。2年次には、博士論文提出資格試験(課題論文の提出と口述試験及び外国語試験)の後に研究計画書を作成し、博士論文の執筆に専念する体制となっています。この専攻の修了者には国内外の大学や地域研究専門機関、シンクタンク、メディア、官公庁、民間企業などへの進路が開かれています。
授与学位
- 博士前期課程:修士(地域研究)
- 博士後期課程:博士(地域研究)
地域研究専攻の特色
深い問題意識、高度な知識、大きな行動力
グローバル化の時代に地域に密着して新たな知見を見出す現代の地域研究には、世界のありように関する深い問題意識、地域に密着した高度な知識、日本と現地にまたがる大きな行動力が求められます。とりわけ、研究対象地域を内側から理解するために、地域言語の習得が必須です。
地域の視点に立ってグローバルな共生を志向
異なる複数の学問分野、あるいは別個の地域に関するさまざまな研究成果は一見、ばらばらに存在しているように思えますが、共同研究を柱とする地域研究は、これらの知識や発想などを共有し、たがいに交流することで、既存の学問ではとらえきれない問題に立ち向かいます。それは地域の視点に立ちつつ、グローバルな現象を明らかにする営みです。多様性が調和する世界を支える次世代地域研究者の育成に努めています。
修了生の最近の主な研究テーマ
修士論文
- Cambodian Prehistory: Past Achievements and Future Challenges in Archaeological Research
- 第一次世界大戦後におけるトランスヨルダン政府の成立経緯
- コロンビア、キンディオ県における公教育の教材開発:国際協力とその適応の過程
- クルド人地域とクルド系スーフィーのネットワークの宗教的中心性:トルコにおけるクルド系スーフィー教団と極右トルコ民族主義者の関係性に関する研究
- 20世紀前半サハラ砂漠におけるトゥアレグ蜂起に関する一考察
- 地域に根差した機会を創造する若者たち:コロンビア、カリ市の民衆居住区を事例に
- ジャワ社会におけるカトリック教会の発展と実践:独立後インドネシアにおける社会変容と宗教間関係に関する一考察
- ミャンマーの人びとによる人権の「翻訳」:1988年民主化運動以降の法意識をめぐる一考察
- インドネシア・ジャカルタにおける水へのアクセスと地盤沈下問題:都市発展と地域住民の視点から
博士論文
- 19世紀英領ビルマにおける米国バプテスト派宣教と植民地支配:カレン・バプテスト側の理解と対応の諸相
- キリスト教への入信と信仰継承に関する民族誌的研究:台湾原住民族アミとカトリック教会を事例として
- ブラジル大豆産業の構造と変化:2010年代における大豆生産者と大豆集荷業者間の関係変化からの考察
- 「バジョである」ことの民族誌:インドネシア南東スラウェシにおけるバジョ/サマの社会文化的動態と海
- 現代エジプトのマウリドの動態と多義性について:日常・非日常概念に基づく人類学的研究
教育の方針
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博士前期課程
本課程では、現場の視点を重視した地域立脚型のアプローチに基づき、歴史的文化的背景に配慮しながら、グローバル・イシューの原点解明と解決をめざすフィールドワーカー養成を目的とし、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 東アジア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカの各地域の言語を用い、フィールドワークに基づいた方法論を確立する力
- 国単位ではない地域社会からの発想、及び複数の学問による共同研究によって既存の学問ではとらえきれない問題へ挑み、分析・理解する力
- グローバルな諸現象の解明に地域の視点とアプローチから学術的・社会的に貢献し、次世代地域研究者としてグローバルな市民社会とローカルな多様性を支える力
- 明確な問題意識をもち、十分な先行研究を行った上で、的確な論文構成と整合性のある論旨展開を備えた修士論文を仕上げる力
博士後期課程
本課程では、研究課題解明のための適切且つ独創的な地域へのアプローチと方法論に基づき、関連学問分野の発展に貢献する地域研究の高度な学術水準を満たすことを目的とし、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 今日的課題解決のための適切なアプローチを、学問上の貢献と合わせて開発・確立し、さらに研究課題の解明に必要十分な言語能力を運用したうえで、フィールドワークを遂行し独自の資料入手と分析をする力
- 将来の学際的な共同研究も視野に入れた、研究課題の設定及び学術的貢献の可能性を洞察する力
- 博士前期課程で身に着けた方法論や知識をもとに、自らの専門領域を深めるべく研究を進め、独自性があり、学術的社会的貢献が期待できる博士論文を仕上げる力
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博士前期課程
本課程では、ディプロマ・ポリシーの実現を目的として、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。
- 必修の基礎科目により、地域研究の基礎と多様で総合的な方法と地域立脚型の視点を修得させる。
- 地域間比較科目により、研究対象とする地域及び主として用いる方法論の相対化を促し、また比較の視野を培うことによって個別研究の学術的貢献について客観的に把握する力をつける。
- 地域研究専門科目により、研究対象に適切な方法論及び専攻研究成果を踏まえた、整合性のある論理展開が出来るように訓練する。
博士後期課程
本課程では、ディプロマ・ポリシーの実現を目的として、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。
- フィールドワークによる独創的な資料入手及びアプローチの開発を促すために、指導教員との個別論文指導を行う。
- 指導教員及び専攻内で開設されている科目への積極的な参加を通じて、他分野、他地域の学生と幅広く議論する。
- 博士論文提出資格試験により、言語能力、論理的思考も含めた学術水準の到達度を審査する。
- 博士論文提出資格試験に合格したのち、博士論文計画書審査と博士論文計画セミナーの実施を経て博士論文完成へと導く
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博士前期課程
本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。
- 東アジア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカなど諸地域における個別的な諸現象・問題ならびにグローバルな諸問題を理解するために必要な基本的な文献を理解するための言語能力を有する学生
- 社会的・学問的な探求心と向上心を持ち、特定の課題に対して論理的思考を重ねた論述ができ、かつ主体的に取り組む姿勢を有する学生
- グローバルな市民社会と、ローカルな多様性を支えるために、実践的に社会に貢献できる専門家となることを志向する学生
博士後期課程
本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。
- 論理的思考に基づいた研究課題に取り組んだ実績がある学生
- 研究課題解明に必要十分な資料入手と分析に必要不可欠な言語能力を有する学生
- 地域社会及び社会への貢献を、学問分野と実践の上から志向する学生
教員一覧
東アジア
東南アジア
福武 慎太郎 教授
研究分野 | [ 人類学・東南アジア地域研究 ] 紛争、難民、開発などの人類学的研究、東ティモール、インドネシア地域研究 |
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丸井 雅子 教授
研究分野 | [ 東南アジア考古学 ] カンボジア地域研究、文化遺産研究 |
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久志本 裕子 准教授
研究分野 | [ 文化人類学・イスラーム地域研究 ] 東南アジア島嶼部におけるイスラーム知識の伝達、教育とムスリム社会の歴史的変容に関する研究 |
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南アジア
サリ アガスティン 教授
研究分野 | [ 南アジアの政治と社会 ] 文化ナショナリズム、マイノリティと人権問題、世俗主義と宗教間対話、アイデンティティにおける暴力紛争等 |
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田中 雅子 教授
研究分野 | [ 南アジア社会開発研究 ] 移民性のリプロダクティブ・ヘルスやジェンダー暴力、移民の子どもの言語教育について研究 |
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中東
赤堀 雅幸 教授
研究分野 | [ 人類学・イスラーム地域研究 ] べドウィンの研究から始めて、遊牧と部族の研究、イスラームの聖者崇敬と聖遺物信仰を研究 |
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岩﨑 えり奈 教授
研究分野 | [ 北アフリカ社会経済・地域研究 ] 主に北アフリカの農村・都市社会、開発、貧困、水利慣行、家族など現代の社会経済問題について研究 |
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澤江 史子 教授
研究分野 | [ トルコの政治社会と外交 ] 現代トルコの政治体制やマイノリティ問題、地域大国主義的外交の動向の他、より広く西洋中心主義的認識の知と現実政治社会への影響を研究 |
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辻上 奈美江 教授
研究分野 | [ 中東地域比較ジェンダー論、サウジアラビア地域研究 ] 現代中東地域のジェンダーおよび権力に関する研究 |
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山口 昭彦 教授
研究分野 | [ 歴史学・イスラーム地域研究 ] クルド・ナショナリズム運動への関心を出発点として、前近代から近代までの中東地域における多民族統合の歴史的変容を研究 |
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アフリカ
眞城 百華 教授
研究分野 | [ アフリカ研究 ] サハラ以南アフリカにおける政治・社会・歴史に関する研究、エチオピアならびにエリトリア研究 |
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矢澤 達宏 教授
研究分野 | [ アフリカ地域研究・ブラックディアスポラ研究 ] アフリカ(サハラ以南)の主に政治・歴史、並行してブラジルの黒人も研究 |
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戸田 美佳子 准教授
研究分野 | [ アフリカ地域研究・人類学 ] 主に中部アフリカにおける生態・環境人類学、アフリカにおける障害者の人類学的研究 |
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ヨーロッパ
内村 俊太 教授
研究分野 | [ スペイン近世史 ] 16、17世紀スペインを中心とする国制史、歴史編纂、都市史に関する研究 |
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髙橋 暁生 教授
研究分野 | [ 近現代フランス研究 ] 特にフランス革命史、フランスのナショナリズムとコロニアリズム、フランスにおける植民地表象と自己像 |
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ネーヴェス マウロ 教授
研究分野 | ヨーロッパ、ラテンアメリカおよびアジアのポップカルチャー比較 |
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松原 典子 教授
研究分野 | [ 近世スペイン美術史 ] 特に16、17世紀の絵画、彫刻、および美術理論 |
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牧 陽子 准教授
研究分野 | [ フランス社会研究 ] フランスを中心に、女性の就労や、ケアと労働の関係について社会学的に研究 |
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ラテンアメリカ
子安 昭子 教授
研究分野 | [ ブラジル現代政治・外交研究 ] 民主化後の政治動向および新興国ブラジルの国際関係を研究 |
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谷 洋之 教授
研究分野 | [ ラテンアメリカ経済 ] メキシコにおける農業部門の動向およびラテンアメリカから提起される経済思想・開発思想に関する研究 |
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田村 梨花 教授
研究分野 | [ ブラジル社会開発 ] コミュニティ主導の開発、子どもの権利に関する活動を行うNGOのノンフォーマル教育の研究 |
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幡谷 則子 教授
研究分野 | [ ラテンアメリカ現代社会 ] 社会運動と民衆の生業に関する研究。開発と紛争の関係や連帯経済の可能性にも注目している |
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