基礎と臨床を幅広く学べる大学院

人間行動と人間理解についての知識を高め、それによって人類の福祉に貢献しようとする科学が心理学です。この学問は基盤こそ共通していますが、医学でいえば基礎医学にあたる基礎心理学系の諸領域と、臨床医学にあたる臨床心理学系の諸領域に分けられ、それぞれに固有の対象と方法をもって発展してきました。

その双方を学ぶことができる心理学専攻は、教育学専攻心理学コースを前身とした開設当初から、研究能力を持つ心理専門職を社会へと輩出してきました。心理学専攻では今後もサイエンスとヒューマニズムを統合して人類の福祉に寄与する高度の専門家を養成していきます。

カリキュラムの特徴

博士前期課程では心理学の研究能力の基礎を養い、将来心理専門職として活躍するための実践的なトレーニングを行います。基礎心理学コースと臨床心理学コースがあり、臨床心理学コースは、(公財)日本臨床心理士資格認定協会の第1種指定大学院となっています。また、公認心理師を養成するためのカリキュラムにも対応しています。

博士後期課程では専攻領域における研究能力を高め、あわせて将来、研究者あるいは指導的心理専門職として自立するための実践的トレーニングを行います。博士論文の審査申請にあたっては、学術雑誌に掲載または受理された複数の研究論文があり、博士論文の構想を構想発表会で発表することが義務づけられています。

授与学位

  • 博士前期課程:修士(心理学)
  • 博士後期課程:博士(心理学)

取得可能な教員免許・免許教科

  • 高等学校専修(公民)

※教員免許が取得できる専攻は、博士前期課程に限ります。また、1種免許状を取得済、あるいは1種免許状取得要件を満たしている教科のみ取得可能で、必ずしも全教科取得できるわけではありません。

心理学専攻の特色

上智大学臨床心理相談室

臨床心理学コースでは、「上智大学臨床心理相談室」にて大学院生の訓練が行われます。この施設は学外からの相談を受け入れるとともに、臨床心理学を専攻する大学院生の実習・訓練を行うものです。

国際化時代の研究を推進

心理学専攻では大学院生の国内外の学会発表を支援しています。心理学の「基礎」領域と「臨床」領域を専門とする教員がおり、双方を幅広く学ぶことができます。

臨床や研究の現場との密な交流

修了生の多くは公的機関や医療・教育関連機関のカウンセラー、セラピストなど心理臨床職として活躍。修了生の職場で実習を行うなど、大きなヒューマン・ネットワークの中で研鑚を積むことが可能です。

修了生の最近の主な研究テーマ

修士論文

  • 大学生の関係性攻撃傾向と集団に居続ける理由との検討に関する研究
  • 多様化する心理療法からみた 治療者の態度および行動の比較検討 ― 中立性に焦点を当てて
  • 児童が見せる行動のもう一つの意味 ― マイクロ・エスノグラフィーを通して見た現実
  • いじめ目撃場面での被害者援助行動と傍観行動との関連要因の検討
  • 中学生のレジリエンスとコーピングの関連 ― 学校場面におけるストレッサーと適応感に着目して ―
  • 統合失調症傾向・自閉症傾向と表情真偽判断との関連 ― 健常群/定型発達群を対象として ―
  • ネコの音楽聴取におけるストレス軽減効果の検討
  • コロナ禍が大学生の運動部活動に与える影響
  • 潜在的自尊感情と自己卑下呈示との比較検討 ― 他者評価への恐れとの関連に注目して ―
  • カフェイン急性投与時のラットの空間学習成績に対するカフェイン摂取経験の効果
  • 高齢者における首尾一貫感覚が転倒自己効力感に及ぼす影響
  • 親の離婚による喪失体験と閉ざされた怒りが子どもに及ぼす影響について
  • 高齢の顧客対応で生じる銀行員の困難とその対応に関する調査
  • M-GTAを用いた夢を語る体験についての研究
  • ひとりでいられる能力とロールシャッハ反応との関連
  • 自我境界が空想と現実の区別に与える影響について ― ロールシャッハ・テストを用いた検討 ―
  • 自己志向的完璧主義傾向と攻撃性傾向に与えられる人種差別経験の影響
  • 入院中の小児がん患児をもつ親に他の親がソーシャルサポートとして果たす役割に関する 検討 ― きっかけを主な着眼点として ―
  • 被害者非難プロセスの検討 ― 被害者への親密さの観点から ―
  • 摂食障害を抱える女性が母親になるプロセス

博士論文

  • 精神分析的心理療法における行き詰まりの治療的利用
  • 集団宿泊活動への参加が子どもにおよぼす心理的効果
  • 拗れた夫婦関係への支援と課題
  • 非主体的来談学生に対するカウンセラーの理解と対応 ― システム論に基づくコミュニティ・アプローチの学生相談実践 ―
  • 組織内の職場復帰支援における人事担当者と心理職の協働

教育の方針

博士前期課程

本課程では、キリスト教ヒューマニズムに基づく人間の尊厳を守る社会を実現するために、心理学の知識の理解、研究方法の修得や実践を通し、学修の成果を研究活動として結実させ、心理学の専門家・専門職として社会に貢献できる人材の養成を目的として、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。

 

  1. 基礎心理学コース、臨床心理学コースの両コース共に、心の働きの実証的理解、心と行動の普遍性およびその多様性と可塑性の理解、心理学の社会的役割の理解 心を生み出す仕組み(機構)と心理学の諸理論の正確な理解を踏まえて、人間についてより深く理解する力
  2. 専門職業人として、本学の建学の理念である「隣人性」「国際性」を達成するために、基礎分野および臨床分野(医療、教育、福祉等)で活かすことのできる知識や技術、それを的確に伝える力
  3. 多様な他分野、多職種との連携が可能となる広い知見
  4. 自身の専門領域を深め、学会などでの発表を踏まえ、修士論文としてその成果をまとめるとともに、広く発信する力

博士後期課程

本課程では、キリスト教ヒューマニズムに基づく人間の尊厳を守る社会を実現するために、心理学の知識の理解、研究方法の修得や実践を通し、学修の成果を研究活動として結実させ、論文の形で問うことができるようにします。「心」を探求する専門的な知識と経験を、総合的視野に立って駆使し、研究者・教育者として社会に貢献できる人材の養成を目的とし、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。

 

  1. 心理学の多様な分野での知見を深め、臨床的視点をもつ研究者、研究者の視点をもつ実践家となる力
  2. 科学的視点を基盤にし、さまざまな場で対人支援を実践できる専門家としての能力
  3. 自身の専門領域を深め、学会誌、国際学会などでの発表を踏まえ、博士論文としてその成果をまとめるとともに、広く発信する力
  4. 多職種連携を必要とするがん医療の分野をはじめとする喫緊の課題解決に資する能力

博士前期課程

本課程では、ディプロマ・ポリシーに沿って、心と行動の仕組みとその働きを理解し、心理学の専門的知識と技能を用いて、広く社会に貢献できる人を育てるために、臨床心理学コース、基礎心理学コースの2つのコースを設け、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。

 

  1. 心理学の専門家としての基盤を作るために、1年次、2年次に、研究法に関する科目、各心理学の専門領域に関する科目を開設する。
  2. 学修の成果を研究活動として結実させるために、1年次、2年次の2年間を通して、論文演習を開設する。
  3. 臨床心理学コースにおいては、臨床心理士として必要とされるさまざまな知識や技能を具体的な臨床事例に即して得、実習や実践を通してより一層深められるよう必修科目を開設する。
  4. 学部生の指導やチューターをする中で、自分自身の学びを深めることができる実習科目を開設する。

博士後期課程

本課程では、ディプロマ・ポリシーに沿って、「心」を探求する専門的な知識と経験を、総合的視野に立って駆使し、研究者・教育者・臨床家として社会に貢献できるよう、心理学の基礎から応用にわたる研究法、高度な先端的知識を身につけるよう、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。

 

  1. 心理学の研究者・教育者・臨床家として必要な先端的知識、専門的技能を修得し、それをさまざまな場で発信することができるように、1年次から3年次にかけて、講義科目と演習形式による論文演習を開設する。
  2. 博士論文の構想発表までに、査読論文2本を書く。このためには、学会などのさまざまな機会を通して、自らの研究を発表し、他の研究者との研鑽をしていく。
  3. 学部生、博士前期課程の学生に対する心理学研究法などのチューターを通して、心理学の知識や技能をより深めるとともに、研究者・教育者・臨床家として、それを他者に伝えるための技能を得させる。
  4. がん医療関連科目として4大学院連携(上智大学、東京慈恵会医科大学、昭和大学、星薬科大学)の連携授業を履修することを認める。

博士前期課程

本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。

 

  1. 心理学に関する基礎から応用分野での高度な専門的知識と、実証的データ収集、解析技能、臨床的な実践的知識や技能を身につけることを目的としている。このための心理学の専門家として、自律的に研究を遂行する意欲と能力を備えた学生
  2. 人間の尊厳を尊重し、他者に対する暖かなまなざしをもつと同時に、事象を論理的かつ客観的に分析できるセンスをもつ学生
  3. 将来、さまざまな実践の場で他分野の専門家と対等に議論するために、知識修得の意欲をもち、柔軟に考え、多様な専門家と協力できる学生

博士後期課程

本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。

 

  1. 心理学に関する基礎から応用分野での高度な専門的知識と、実証的データ収集、解析技能、臨床的な実践的知識や技能を身につけている学生
  2. 将来、心理学の研究者、教育者、実践家として活躍できるような、人間の尊厳を尊重し、他者に対する暖かなまなざしをもつと同時に、事象を論理的かつ客観的に分析できるセンスをもつ学生
  3. 心理学の高度な専門的知識や自らの研究の成果を、論文などの形でまとめ、それを他者に的確に伝えることのできる学生

教員一覧

吾妻 壮 教授

研究分野 [ 精神分析 ] 精神分析に関する研究を、特に関係性の問題に焦点を当て、理論的および実践的に行う

岡田 隆 教授

研究分野 [ 記憶の生理心理学 ] 記憶に重要な海馬シナプス可塑性について電気生理学的手法により研究
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齋藤 梓 准教授

研究分野 [ 臨床心理学・被害者支援 ] 犯罪や暴力などのトラウマを経験した人の心理および心理学的支援について研究
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齋藤 慈子 准教授

研究分野 [ 発達心理学 ] 養育行動、親子関係を中心的テーマとし、乳幼児期から成人期にわたる発達について、調査・実験的手法を組み合わせて研究
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樋口 匡貴 教授

研究分野 [ 社会心理学 ] 社会的感情を中心とした種々の社会的要因と健康行動との関連について研究
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日髙 聡太 教授

研究分野 [ 認知心理学 ] 人の知覚・認知における多感覚情報処理について、実験心理学的手法を用いて研究
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廣瀬 英子 教授

研究分野 [ 学習活動とその評価・測定 ] 心理・教育データの項目分析や、学びのプロセスの中での学習方略や自己効力感などについて研究

松田 修 教授

研究分野 [ 老年臨床心理学 ] 認知症・軽度認知障害を含む、高齢者の認知行動に関する臨床心理学的研究
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毛利 伊吹 准教授

研究分野 [ 臨床心理学 ] 認知行動療法の視点から、主に成人への心理的援助について研究する
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横山 恭子 教授

研究分野 [ 小児医療における臨床心理学 ] 小児期における慢性疾患、免疫疾患、小児がん等の子どもやその家族への心理学的支援について研究
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吉村 聡 教授

研究分野 [ 人格心理学 ] ロールシャッハ法などの投映法を中心とした心理アセスメント、および精神分析

上智大学 Sophia University