アントレプレナーシップを、力に変える。

寺田 瑛梨さんと前坂 海英さん

総合グローバル学部 総合グローバル学科4年 寺田 瑛梨
法学部 国際関係法学科4年 前坂 海英

CROSS TALK

異なる立場をつなぎ、新たな気づきをもたらす。

上智大学でアントレプレナーシップ(挑戦者としての思考と行動)を学んだ二人のソフィアン。その結果、起業という道を選んだ一人と、スタートアップ企業への就職を決意した一人が、上智での学びと挑戦について語り合いました。

上智で学んできたこと

前坂 海英さん
前坂

3年次は、国際ビジネスの問題を題材に、仲裁と交渉を実践的に学ぶゼミに所属していました。交渉理論や国際取引法、紛争処理の仕組みを学んだうえで、秋に開催されたインターカレッジ・ネゴシエーション・コンペティションに参加。紛争解決や合意形成のシミュレーションを通じて競う大学対抗戦で、日本を含む世界27大学が集い、実務家や研究者からなる審査員団を前に、2日間にわたり議論を繰り広げます。結果は日本の大学では1位、世界の大学でも3位という好成績でした。医療業界でのAI導入をテーマに、世界各国の学生と真剣に議論を重ねた経験は、AIに携わる今につながっていると感じます。

寺田 瑛梨さん
寺田

私も、大学での学びが今の活動につながっていると実感しています。総合グローバル学部では、世界を俯瞰して学ぶ国際関係論と、地域に根差した視座から現場を見つめる地域研究を掛け合わせて学ぶことで、地球規模の課題を立体的に捉えます。私は主専攻に「市民社会・国際協力論」、副専攻は「中東・アフリカ研究」を選択。国際協力論では国際的な開発支援の枠組みを学ぶ一方、資金や物資の援助が必ずしも問題の解決にならないことを学びました。一時的な支援ではなく、現地の人たちが自分で収入を得られるような、地域に根差す仕組みづくりが重要だと考えるようになります。また、アフリカ研究では、アフリカを一括りにせず、国や地域ごとの歴史や文化、政治、経済の違いを丁寧に見る視点を培いました。

アントレプレナーシップを学び、選択肢を増やす

寺田 瑛梨さん
寺田

入学当初からアフリカの社会課題解決に貢献したいという思いがありました。そのため、「国連Weeks」「アフリカWeeks」などの学内イベントに参加し、様々な視点・視座を得ながら、アフリカとの関わり方を模索していました。同じ時期に、現地では固定電話がないままモバイル決済が先に普及する「リープフロッグ型」と呼ばれる飛躍的な発展が進んでいました。それをけん引しているのが現地のスタートアップ企業や起業家たちだと知ったことが、起業を一つの手段として意識し始めたきっかけです。

前坂 海英さん
前坂

私も同じです。起業はアイデアを実現するための一つの手段と捉えていました。それを実感したのが、大学での学びで印象的だった投資運用会社のスパークス・グループ株式会社協力のもと開講されるアントレプレナーシップ養成講座です。起業の基礎を学んだうえで、事業を提案し、資金を得て活動することもできました。その過程で、欧州発の開発ツール「Lovable」に出会い、アンバサダーとしてソフトウェア開発の民主化に貢献。プロトタイプ作りをきっかけに、ふと思った疑問をAIで解決するプロジェクトを複数立ち上げるようになります。振り返ると、自ら行動しながら予期せぬ出会いや機会を受け入れてきたことが、新たな挑戦を生み出してきました。こうした経験は計画的偶発性理論の実践例と言えるかもしれません。

ガーナの新たな価値を世界の市場へ

寺田 瑛梨さん
寺田

アフリカの社会課題に向き合う方法を模索するなかで、次第にビジネス・起業というアプローチにも関心を広げていきました。海外のビジネスコンテストに参加したり、JICAでアフリカのスタートアップ支援に関わる部署でのインターンシップを経験するなど、ビジネスを通じた社会課題への向き合い方を学びました。その後、アメリカのワシントン大学へ留学し10か月間の起業プログラムに参加。そこで出会ったガーナ出身の友人から、カシューナッツ収穫時に大量廃棄されるカシューアップルの存在を教わりました。留学中にこの可能性を知り、現状を確かめるためにそのままガーナへ向かいました。農家100人に収益構造や課題等をインタビューすると、ナッツのみから収入を得ている方が多く、「果実を買い取ってほしい、早く工場をつくってくれ」とまで言われたのです。事業化することで食品ロス解決だけでなく、新たな収入源と雇用機会の創出につながる可能性を感じました。帰国後は試作と試飲会を経て2026年4月に「POT3NTIA.合同会社」を設立。現在はガーナでの販売可能性を検証するため、現地でのテスト販売に向けて準備を進めています。

国際ビジネスの世界で生き抜くために

前坂 海英さん
前坂

現在、AI革命の中心地であるサンフランシスコのAIスタートアップで、フルタイムで働いています。少人数のチームで幅広い業務に携わりながら、Google、OpenAI、AnthropicといったAI開発企業をはじめ、政府機関や多様な分野の専門家・実務家と関わる機会を得ています。変化のスピードが速い環境だからこそ、新たな知識や視点に触れる濃密な日々です。現在は、3人のファウンダーがそれぞれ担当するプロジェクトを並行して率いています。求められる水準は非常に高く、彼らの知識と能力に圧倒されながらも、そのすべてを学びとして吸収しています。私自身、この環境に飛び込んで強く感じたのは、世界トップレベルの現場では、年齢のように自分では変えられない属性が決定的な障壁になることは少ないということです。問われるのは「できるか、できないか」というシンプルな基準であり、それと同じくらい重視されるのが、チームの中で信頼関係を築けるかという人間力です。どちらも生まれ持ったものではなく、自分の努力によって磨いていけるものだと実感しています。

家族は最大の理解者

寺田 瑛梨さん
寺田

二人の姉に海外経験があったため、留学や起業は反対されませんでした。ただ、起業は一般的な進路ではないため、家族が心配するのも当然です。それでも、実際の課題に向き合い、自分で問いを立て、必要なことを学び、周囲の人の力を借りながら形にしていく。その経験は、これからどんな道に進むとしても自分の力になると思っています。だからこそ今は、本気で向き合いたいと思ったことに全力で挑戦したいです。

前坂 海英さん
前坂

私は逆で、諸手を挙げて賛成されたわけではありません。ただ、その根底には「最善の選択をしてほしい」という両親の想いがありました。両親の不安は、先行きの不確実性にあります。だからこそ、王道ではない道を選ぶのであれば、どんな世界で活躍したいのかの理想を描き、自分が選択した道と向き合うことが大切だと思うのです。自分にとっての正解は、必ずしも「リスクをとらないほうが安心だ」という一般論の中にあるとは限りません。キャリアを選択する際に、厳しい言葉をかけてくれた両親には心から敬意を抱いています。

ベンチで対話する寺田さんと前坂さん

上智で育むアントレプレナーシップが導く未来

寺田 瑛梨さん
寺田

留学前は、起業に関する情報を自ら探しに行く必要がありましたが、帰国後はソフィア・アントレプレナーシップ・ネットワーク(SEN)事業が立ち上がっていました。インパクト投資家から直接学べるなど多様なプログラムや、起業に関心を持つ学生同士がつながる機会もあり、自ら問題意識を深めながら挑戦できる環境が整っています。ただ単にビジネスを形にする方法を教わるのではなく、社会課題に対してどのような事業で向き合うかを共に考えられる点が、上智らしいプログラムだと思います。いまだ価値を見出されていないアフリカの資源や文化、人の可能性を、現地の持続可能性や誇りにつなげる形で社会に広げていくことが大きな夢です。

前坂 海英さん
前坂

私が考えるアントレプレナーシップとは、現状を正確に見極め、理想とのギャップを的確に把握したうえで、その差を埋めるソリューションを築くことです。この過程で最も必要なのが傾聴力だと考えています。分断や認識の齟齬が広がる世界では、「他者を理解したい」という好奇心から課題を問い直し、第一原理に立ち返ることが鍵です。前例が通用しなくなるなか、不確実性を受け入れて動けるかが問われるでしょう。


寺田 瑛梨

  • 総合グローバル学部 総合グローバル学科4年

高校時代に参加したボランティア活動で、アフリカの社会課題に興味を持つ。ガーナに新しい産業と雇用を創出することを目的に、地元の農産物を使った新商品の開発・販売事業を立ち上げ、2026年に会社を設立。

前坂 海英

  • 法学部 国際関係法学科4年

幼少期を海外で過ごし帰国。国内外に活動の場を広げ、外交とアントレプレナーシップを掛け合わせながら知識と経験を蓄積。上智のアントレプレナーシップ養成講座で生まれた縁から、AIエコシステムを牽引するサンフランシスコ発のスタートアップへ就職。

掲載:Sophialogue Vol.1 2026 AUTUMN / WINTER(p.2–5)
※この記事の内容は、2026年11月時点のものです。

上智大学 Sophia University