Grad Students’ Voices
大学院で研究に打ち込む院生と、その指導教員。探究を重ねる日々と、知を育む研究の現場を訪ねました。
学部生時代は国際関係学を主専攻とし、副専攻で日本語教育を学んでいました。教育問題への関心が深まったきっかけは、大学2年次に参加したカンボジアでのインターンシップです。その経験を機に、ゼミでも東南アジア諸国の教育問題に興味を持つようになりました。現地では、都市開発や貧困などが原因で教育機会を失った子どもたちに学習支援を行い、将来の経済的自立を支援するNGOで活動しました。彼らの生活や家庭状況を日々目の当たりにするなかで、カンボジアの教育が抱える課題と向き合う時間が増えました。
教育機会を阻む大きな要因の一つが貧困です。そして、貧困によって十分な教育を受けられず就業機会も奪われ、貧困が再生産されるという悪循環。こうした問題の解決に少しでも貢献したいと考えたときに、大学院で国際教育開発を学ぶことが自分の目指すキャリアにつながると思い、教育開発や人道支援を研究されている小松先生のもとで学ぶことを決意しました。
しかし、大学院進学は家族や周囲にとってなじみのない進路であり、その意義や価値を理解してもらうことは容易ではありませんでした。研究計画書を示しながら説明を重ね、進学への理解を得ることができました。今では研究活動を応援してくれています。
現在研究しているのは、カンボジアの子どもたちに対して公教育と学校外教育が果たす役割です。学校外教育とは、NGOなどの非営利団体が主軸となって、無償で運営する教育活動のこと。未だ公教育に通わず、NGOの教育で学習機会を得ている子どもたちは少なくありません。小学校の入学率は約100%に近いデータが発表されていますが、退学する子どもが後を絶たず、中学校への進学率は60%に下がるという現実があります。さらに、教員養成をめぐる問題も見逃せません。1970年から約20年続いたカンボジア紛争期に知識人が迫害され、教育基盤が失われました。影響は今も続き、最終学歴が高校卒業という教員も多く、教育人材の育成は大きな課題となっています。
現状を招いている原因は1つではありません。多角的に課題を捉える必要があり、その意味でも大学院で学ぶ意義は大きいと感じています。文献調査のみならず、現地の人々のリアルな生活や声を通して課題を整理し、自らの視野を広げることができます。
また、大学院の研究室は、世界各国からの留学生や教員経験者など多様な背景を持つ人々が集い、議論を通じて新たな視点を得られる刺激的な環境です。
卒業後は東南アジアのコミュニティ開発に関わり、教育分野を担当する予定です。貧困と教育の問題に自分なりの責任感を持って関わり続けることが、私の変わることのない目標です。どんな形であれ、諸問題の解決につながるように尽力していきます。
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佐々木 茜音
- 総合人間科学研究科 教育学専攻
国際教育開発学ゼミ 博士前期課程2年
- 総合人間科学研究科 教育学専攻
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日本大学国際関係学部卒業。カンボジアでのインターンシップを契機に、東南アジア諸国の教育問題に興味を持ち、国際教育や人道支援に関する研究が盛んな上智大学大学院への進学を決める。現在はカンボジアの子どもたちに関わる公教育と学校外教育について研究を進めている。
指導教員からのメッセージ
総合人間科学研究科 教育学専攻
小松 太郎 教授
国際教育開発学は、教育を通じて国を作り、人を作ることを目的としています。政治学、経済学、社会学など広範な分野を扱うため、院生には様々な研究手法を学んだうえで、自ら定めた研究テーマに取り組んでもらいます。院進学を考えているなら、学部では現場でしか得られない経験や知識を蓄積してください。また、考える力に直結する書く力を鍛えることも必要です。世界で活躍するには、専門性を高め自らに付加価値をつける修士号は大きな力になります。佐々木さんには研究テーマと真摯に向き合った2年間を、次のステージの糧にしてほしいです。
掲載:Sophialogue Vol.1 2026 AUTUMN / WINTER(p.22–23)
※この記事の内容は、2026年11月時点のものです。