国際機関、国際協力組織で活躍できる人材を育成

現代社会においては、一つの国だけでは対処できず、複数の国や機関・組織が力を合わせなければ解決できないグローバルな課題への対応が常に求められています。この課題への対応と持続可能な平和や経済・社会・教育開発を促進する上で、国際協力は不可欠な要素です。国際協力学専攻では、国際機関や政府、民間企業など国際協力分野の第一線において、多様化するグローバルな課題解決を担う人材を育成します。

カリキュラムの特徴

国際協力学専攻の特徴としては、以下の3点が挙げられます。

  1. 国際社会が必要としている高度な学術的能力と実践力を併せ持つグローバル人材を育てるニーズが日本において高まっていることに対応する
  2. 国際連合や他の専門的国際機関、国際開発金融機関でも、優秀な若い日本人を登用すべく採用努力をしているが、まだそれを満たすだけの人材が確保されていないことに対応する
  3. 国際協力人材の養成に特化した専攻をグローバル・スタディーズ研究科に置くことにより、国際協力に特化した科目だけでなく、他の研究科の関連科目も履修できる体制を作り、大学内により学際的な新たな教育実践の場を展開する

国際機関や民間セクターの役割と機能に関する中核科目群や国際協力をはじめとする平和構築・国際政治などに関する専門科目群のほか、国際機関・国際協力の実務経験を豊富に有する専門家によるコースワークが数多く開講されるなど、国際協力の現場で即戦力として活躍するための実践的なカリキュラムとなっています。

また、国際機関における実地研修などの実践的なプログラムが選択必修科目として組み込まれています。

なお、開講科目の多くは教授言語が英語となります。

授与学位

  • 修士課程:修士(国際協力学)

国際協力学専攻の特色

教育研究の柱:「平和協力・平和構築研究」「持続可能な開発/社会・教育開発研究」

国際協力学専攻の教育研究の柱はこの二本柱となっており、科目配置もこれに拠っています。

前者の「平和協力・平和構築研究」では、紛争解決や平和維持、平和構築における国際連合や他の国際機関の理念や活動及び二国間の協力関係などを学ぶことにより、これらの分野で将来即戦力として活躍できるための素地を作ります。平和構築活動は、主に紛争後の国家再建や統治制度の再確立と人材育成、治安部門の育成、経済の再生など幅広い分野で文民職員が活躍できる活動でもあります。

後者の「持続可能な開発研究/社会・教育開発研究」では、特に持続可能な開発の観点で、国際社会の大きな目標となった「2030年アジェンダ」の中核となるサステナビリティの考え方や持続可能な開発目標(SDGs)の中でも、貧困や飢餓の撲滅、環境と開発、企業支援、官民パートナーシップなどがテーマとなります。また、社会開発や教育開発においては、国際社会が抱える人の移動や人口問題、地域社会と文化、女性のエンパワーメントやジェンダー論、障害者支援、そして、特に途上国の開発に不可欠な教育開発のあり方とその促進に向けた国際協調・協力のあり方に関する研究にはなお大きな期待がかかっており、同時に地域の特性が強く反映しているため、一通りの学問領域や理論だけでは課題解決への実践が難しく、より多角的なアプローチが必要となるため、それに応える授業科目編成を敷いています。

平日夜間・土曜の開講と集中講義、長期履修制度の導入

社会人教育を主眼とすることから、授業は早朝あるいは夜間開講(0限/4~6時限)、土曜日開講、集中講義などに多く開講されています。2年間の学費で3年間在籍できる「長期履修制度」も導入しています。

想定される進路

国際協力の分野で即戦力として活躍できる人材としてのキャリアを目指すことになります。例えば、既に職業経験のある人は、国際協力学専攻修了後に日本政府が実施しているジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)試験に臨み、合格すれば、2年ないし3年に渡り国際連合や他の専門的国際機関で専門官として勤務し、その後国際機関に長期に渡って勤務できる可能性が出てきます。

また、政府機関、開発協力機関、国際NGO、さらに、途上国の開発に不可欠となった国際民間企業などへの就職も考えられます。各種国際機関は、定期的に日本へキャリアミッションを送り込み、日本の国際的人材を確保するための努力をしており、国際企業も国際的素養と経験を踏まえた人材の確保に力を入れています。

主な開講科目

授業の約半分は英語で行う予定です

中核科目
  • 国連研究、同演習
  • 国際機構論、同演習
  • 平和構築論演習
  • グローバル・ガバナンス論
  • 国際政治と国際協力、同演習
  • 国際教育開発論研究
  • 持続可能な開発のための教育
  • 国際社会と地域・コミュニティ論
  • 環境と開発
  • 持続可能な開発論
  • 社会科学研究デザインとアカデミック・ライティング
海外実習科目
  1. 国連の役割と機能(国連集中研修プログラム)
  2. ジュネーブ国際機関集中研修プログラム
  3. バンコク国際機関実地研修
  4. タイ北部フィールドワークプログラム
  5. 実務型国連集中研修プログラム
  6. 持続可能性に関するスタディツアー
専門科目
  • 平和協力と日本の支援研究
  • 平和協力論、同演習
  • 外交と国際協力論
  • EUの対外政策と国際協力
  • 人の国際移動論
  • 難民の国際保護
  • 人間の安全保障と平和構築論
  • 開発政策研究
  • ノンフォーマル教育と生涯教育
  • 日本における環境史と政策論
  • ジェンダーと政治
  • 国際コミュニケーション論特講
  • 国際公務員制度と国際協力人事体制論
  • コーポレート・コミュニケーション論
  • プロジェクト・マネジメント論
  • 国際人道支援の基本理念・実践と国際人道法
  • 国際開発金融機構論
  • 国際開発金融機関と私企業
  • 国際開発協力:人口と国際保健、ジェンダーの視点から
  • 世界銀行プロジェクト・マネジメント、他

教育の方針

本専攻では、一国の枠組みを超えた、さまざまな「グローバルな課題」に対処し、国際社会の連帯を必要とする平和協力や平和構築、持続可能な経済や社会の開発、教育開発などの分野で、幅広い知見と実践力を兼ね備えた「グローバル人材」を育成することを目的とし、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。この修了要件を満たし、論文ないし研究課題審査に合格すれば、これらを身につけたものとみなし、学位を授与します。

 

  1. 国際社会が必要とする国際協力の分野に関し、国際協力の理念、概念、理論を整理、理解し、さらに国際協力の方法論や国際協力を推進する国際機関、政府機関、NGO、民間セクターなどの役割と機能を学び、その上に立って国際協力に従事する上でのスキルと実践力を持つ。
  2. 平和協力・平和構築や持続可能な開発/社会・教育開発の各分野で、国際社会のこれまでの取り組みや現状の状況に関する深い知見を持ち、さまざまな課題解決のために実践的かつ実現可能な政策や方策を見出す力を持つ。
  3. 国際協力を推進する上で関連する国際関係論や国際社会学、国際経済学、統計学、教育開発、文化社会、地域研究など幅広い学識分野と連携させながら国際協力を考え、批判的および論理的議論の展開力、実践的コミュニケーション能力を有する。
  4. 先行研究をふまえ、的確な構成、緻密な分析、明快、論理的で説得力のある学術論文もしくは研究課題を書く力

本専攻では、ディプロマ・ポリシーを達成するために、「平和協力・平和構築研究」と「持続可能な開発/社会・教育開発研究」の二つの専門領域を柱とし、基礎科目(A群)と海外実習科目(B群)から成る中核科目群と、応用科目(C群)、応用実務科目(D群)、連携科目(E群)から成る専門科目群の2つの大科目群と5つの小科目群の中に、その二つの専門領域の科目をバランス良く配置します。それぞれの専門領域に応じて、中核科目群の基礎科目(A群)で得た幅広い知識をベースに、海外実習科目(B群)で海外の現場で国際協力に従事する上でのスキルと実践力を学び、専門科目群の応用科目(C群)や応用実務科目(D群)、連携科目(E群)を通じて、各専門領域の分析、論理構成、知見をさらに深め、専門性と実践力を高めるカリキュラムを編成しています。

 

  1. 基礎科目(A群)では、二つの専門領域の基礎となる科目を配置し、幅広い領域を扱う国際連合や関連した専門的国際機関の役割や機能を学び、さらに国際協力に関する基礎科目や研究の基礎となる調査方法論、スキルの向上、国際公務員制度、コミュケーション論などに関する科目を配置することにより、国際協力に関する基礎知識を修得させるとともに、思考力、論理的議論の展開力、実践的コミュニケーション力の基礎を養います。
  2. 海外実習科目(B群)では、国連機関の本部が集中するニューヨークやジュネーブ、バンコクなどを拠点として、修了後の国際キャリアを目指す上で貴重な実体験を提供することにより、実務型の知識とスキルや実践力を向上させます。
  3. 応用科目(C群)および応用実務科目(D群)では、各領域の知識を広め、分析力や思考力および議論の展開力を高め、専門性を深めるための科目を配置します。平和協力・平和構築領域では、国際連合などによる平和協力だけではなく、地域機関やサブ地域機関、専門的国際機関、国際NGO、民間セクターとの連携や主要国の外交が与える影響、人間の安全保障への貢献などの理解を深めます。持続可能な開発では、国連開発計画(UNDP)など開発系の国際機関や世界銀行やアジア開発銀行など国際開発金融機関の役割、政府による開発援助、私企業を含む民間セクターの直接投資、環境やジェンダーに即した開発論など、より実践的な科目を中心とします。社会・教育開発では、人口や人の移動と開発の関係や地域社会の役割、環境と開発のバランス、公教育における教育の公平性や質の向上だけでなく、学校外のノンフォーマルな教育開発にも寄与する要件を学ぶ機会を提供します。
  4. 連携科目(E群)には、国際政治や国際政治経済の理論から国際開発協力における地域の特性や地域的開発アプローチの研究、海洋法やジェンダー論など多様な科目を配置し、二つの専門領域に関する学識分野についての幅広い知見を強化する役割を果たします。必要に応じて、他の研究科、専攻の科目を履修できるように設計し、専門領域の知見と分析力や思考力および議論の展開力をさらに高める機会を提供します。

本専攻では、次のような資質を持つ学生を求めています。

 

  1. 国際社会の政治的、経済的、社会的動きをよく理解し、グローバルな課題に対する国際社会の対応を国際システム、国家、地域社会レベルから分析する能力を持ち、国際協力に貢献する強い意思を持つ学生
  2. 高い学問的探求心を持ち、同時に政策実現のための分析力、論理的思考力、表現力を備え、国際社会で通用する卓越した英語力とコミュニケーション能力を持つ学生
  3. 国際協力分野での明確なキャリア志向やそれを実現するだけの能力に関し、過去の指導教員や職業上の上司にあたる人を含め、重要な資格において指導にあたった人物からの強い推薦を受けた学生

教員一覧

国際機関や民間企業のセクターの役割と機能に関する中核科目群や、国際協力をはじめとする平和構築・国際政治などに関する専門科目群の多くは、国際機関・国際協力の実務経験を豊富に有する専門家が講師となっています。

梅宮 直樹 教授

研究分野 [国際教育開発論]アジア・アフリカ地域の教育開発、国際高等教育、比較国際教育

杉浦 未希子 教授

研究分野 [ 水資源管理 ] アジアモンスーン地域の河川水をめぐる開発・管理・環境
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東 大作 教授

研究分野 [ 国際関係論 ] 平和構築、和平調停
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丸山 英樹 教授

研究分野 [ 教育学 ] サステイナビリティと生涯学習

水谷 裕佳 教授

研究分野 [ 地域研究、文化人類学 ] 北米大陸の境界研究、先住民研究、文化復興
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渡辺 紫乃 教授

研究分野 [ 国際関係論 ] 中国の内政と外交、東アジアの国際関係、国際開発金融

李 ウォンギョン 准教授

研究分野 [国際関係論、地域研究]国際政治、東アジアの国際関係、科学技術協力、国際機構論
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上智大学 Sophia University