上智大学国連Weeks October 2026を開催しました

10月5日から27日まで、「国連の活動を通じて世界と私たちの未来を考える」をコンセプトに、「第26回上智大学 国連Weeks October, 2026」を開催しました。国連Weeksは、在学生をはじめ、高校生や一般の方など国内外から多くの参加者が集う、本学を代表するイベントの一つです。期間中には、グローバルヘルス、平和調停・紛争解決、国連改革、科学技術イノベーション、国際協力キャリアなどをテーマに全9件のプログラムが実施されました。参加者は、国際社会が直面する課題とその解決に向けた取り組みについて理解を深めました。

2045年、感染症のない未来へ ―すべての子どもの健康を守る、多国間協力の力―

10月5日、ゲイツ財団や国連児童基金(UNICEF)と協力し、シンポジウムを開催しました。本シンポジウムでは、2045年の感染症のない未来の実現に向けて、感染症や母子保健、子どもの栄養改善をめぐる課題と、子どもの命と健康を守るために必要な国際協力のあり方について議論しました。

飯島副学長による開会の挨拶

開会にあたり、本学グローバル化推進担当副学長の飯島真理子教授が挨拶しました。飯島教授は、社会的・経済的な格差や、ジェンダー、国籍による不平等によって、保護や治療、ケアを受ける機会に差が生じている現状に触れ、グローバルヘルスの推進には国境や組織、専門分野を超えた協力が不可欠であると述べました。また、次世代を担う若者に対し、身近な人との対話を通じて課題への理解を深めるとともに、国際交流や国際協力への積極的な参加を呼びかけました。

柏倉氏による基調講演

続いて、ゲイツ財団日本常駐代表の柏倉美保子氏が、同財団の取り組みを紹介しました。柏倉氏は、5歳未満児の予防可能な死亡を減らすことを重要な課題として、ワクチンや診断技術、医薬品などの研究開発に加え、それらを必要とする人々に確実に届ける仕組みづくりや、母子保健、栄養改善への取り組みについて説明しました。また、GaviやCEPI、UNICEFをはじめとする多国間パートナーシップが、感染症対策やワクチン普及の推進に重要な役割を果たしていることを紹介しました。

パネルディスカッションでは、国連児童基金(UNICEF)アジア太平洋地域東京事務所代表のSaul Guerrero Oteyza氏が、子どもの死亡率は過去30年間にわたり減少してきた一方で、その改善が今後も継続するか不透明な状況にあることを説明しました。また、技術革新だけでなく、一人ひとりが社会課題に関心を持ち続けることの重要性を強調し、「無関心ではなく、関心を持ち続けることが変化への第一歩になる」と参加者に呼びかけました。あわせて、命を守るためにはワクチンや治療法だけでなく、栄養も重要な役割を果たすことを説明しました。

本学総合人間科学部の吉野八重准教授は、国際協力の現場においては、現地の人々を信頼し、その可能性を信じることが重要であると述べました。また、看護師や助産師、母親など一人ひとりが持つ力に着目するとともに、最も弱い立場にある人々の声に耳を傾けることの重要性を語りました。

本学国際協力人材育成センター所長の近藤哲生特任教授は、アフリカでの国連勤務時代にチャドで世界エイズ・結核・マラリア対策基金の事業に関わった経験をもとに、感染症対策のためにも多国間協力が欠かせないと語りました。

さらに、Professionals For Impact, Inc.代表/ゲイツ財団コンサルタントの平井光城氏の進行のもと、登壇者らが感染症対策や栄養改善、教育、技術革新をどのように結び付けていくかについて意見を交わしました。AIをはじめとする新技術の可能性が語られる一方で、人に寄り添う支援やケアの重要性についても議論が行われました。

最後の質疑応答では、高校1・2年生を含む参加者が積極的に質問や意見を述べ、活発な意見交換が行われました。登壇者らは、正確な情報を見極める力や、当事者の声に耳を傾ける姿勢の重要性を伝えました。

本シンポジウムは、感染症のない未来の実現に向けて、多国間協力の可能性と課題について理解を深めるとともに、一人ひとりが果たせる役割について考える機会となりました。

科学技術イノベーション 国際戦略

多くの学生や高校生が参加

10月8日、講演会「科学技術イノベーション国際戦略」を開催しました。当日は、理工学部の一柳満久教授の司会のもと、東京大学名誉教授で前外務大臣科学技術顧問の松本洋一郎氏が登壇し、科学技術を取り巻く国際環境の変化や、日本の科学技術力と国際競争力の現状、そして今後の国際戦略について講演しました。学生・教職員に加え、高校生や学外からの参加者も来場し、科学技術と国際社会の未来について理解を深める機会となりました。

冒頭では、宮武昌史 理工学部長が挨拶を行い、科学技術が国際社会の課題解決に果たす役割の重要性について述べるとともに、科学技術イノベーションにおいては「競争」と「共創」の両立が不可欠であると強調しました。また、AIの可能性と課題に言及し、若い世代に対して既存の枠組みにとらわれない積極的な意見発信への期待を示しました。

前外務大臣科学技術顧問の松本洋一郎氏

講演で松本氏は、気候変動、感染症、少子高齢化、資源制約、地政学的リスクなどにより、将来予測が極めて難しい時代に入っていると指摘しました。その一方で、AI、バイオテクノロジー、量子技術、認知科学といった先端分野では国際的な競争が激化しており、各国が科学技術を国家戦略の中心に据えていることを説明しました。

 

また、日本の現状について、経済成長や研究力、国際競争力の停滞に加え、人材の国際流動性の低下や海外経験を持つ研究者・学生の減少が大きな課題であると分析しました。研究者が大学、企業、国立研究機関の間を行き来しづらい構造や、研究以外の業務負担の増大、博士課程進学者数の減少などが、日本の科学技術基盤の弱体化につながっていると述べました。

さらに、国際共同研究や海外経験の重要性にも言及しました。海外との人的交流が減少することで、世界の研究動向を把握する機会が失われ、研究の国際的な影響力低下につながると指摘。研究者や学生が積極的に海外へ出て経験を積み、多様なバックグラウンドを持つ研究者と協働する環境を構築することが、高い研究成果やイノベーション創出につながると強調しました。

質疑応答の様子

質疑応答では、科学技術外交における外務省の役割、日本が活かすべき強み、円安が研究活動に与える影響、海外で活躍するために学生時代からできることなど、多岐にわたる質問が寄せられました。松本氏は、若手研究者や学生が海外へ積極的に挑戦し、現地で人的ネットワークを構築することの重要性を繰り返し強調しました。また、博士課程学生への支援については、経済的支援制度や海外インターンシップ、国際共同研究の機会が拡充されつつあることを紹介し、それらを積極的に活用してほしいと呼びかけました。

最後に松本氏は、科学技術イノベーションの推進には、国境や組織の壁を越えた人的ネットワークと多様なステークホルダーによる共創が不可欠であると述べました。そして、研究機関、産業界、行政、そして若い世代がそれぞれの立場から国際社会とつながり、新たな知や価値を生み出していくことが、日本の未来を切り拓く鍵になると力強く語り、講演会を締めくくりました。

国連Weeksは例年、6月と10月の年2回開催しています。多様化・複雑化する国際社会を生き抜くため、課題解決に向けた必要な視点を学び、専門家たちと共に議論を重ねる場として、今後も継続していきます。

上智大学 Sophia University