第44回「地方の時代」映像祭で文学部新聞学科生の作品が優秀賞を受賞しました

優秀賞を受賞して壇上で挨拶する中野さん

優秀賞は新聞学科3年・中野美子さんによる「まつぼっくりと牛丼」

「地方から社会の今を見つめる」というコンセプトで放送局やケーブルテレビ、それに市民や大学生、高校生らが制作したドキュメンタリーの中から優れた作品を表彰する「第44回地方の時代映像祭」(大阪府吹田市の関西大学で開催)で、文学部新聞学科3年の中野美子さんが個人制作した作品が優秀賞に選ばれました。

同映像祭の「市民・学生・自治体部門」に応募があった80作品の中からの入賞です。上智大学の学生作品が入賞するのは8年連続で、入賞のうち上位にあたる優秀賞は昨年に続いて2年連続の快挙です。

中野さんは新聞学科でドキュメンタリーを制作する水島宏明教授のゼミに所属しています。

中野さんが受賞したのは「まつぼっくりと牛丼」という作品です。サラリーマンの街として知られる東京・新橋で靴みがきの仕事をしている92歳の中村幸子さんの人生を綴りました。高度経済成長、バブル景気、バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍など日本経済の変遷とともに変化してきた働く人たちの足元を70年以上も路上から見つめてきました。

中野さんの作品「まつぼっくりと牛丼」より

幸子さんは靴墨を自分の素手で革靴に直接塗りこんでいきます。そうすると革に馴染むそうですが、そのせいで手はいつも真っ黒です。「転職したら、以前と違う仕事で苦しいなと感じています」靴磨きに訪れた男性からそんな仕事の悩みを打ち明けられることもあります。

「人間は食べることも生きることも大変。仕事を辞めないでコツコツやるのが一番なのよ」自分自身の体験から出た言葉をかける幸子さん。サラリーマンとのさりげない会話を記録しました。

幸子さんがいつも商売道具のそばに置いているのが、まつぼっくり。お客さんを「待つ」という意味を込めた願掛けです。そんな彼女の楽しみは仕事が終わったら近くの店で牛丼を食べること。外に座りっぱなしだった一日を締めくくるささやかな楽しみです。

「ビジネスは足元から」とよく言われますが、彼女に靴を磨いてもらうと仕事がうまくはかどるという評判があり、「商売の神様」という異名がある幸子さん。そんな“神様”の日常を記録した映像は見る者に人生の意味を静かに問いかけてきます。

テレビ局のドキュメンタリー番組のプロデューサーを務める審査員からは「市井で生きるこんな92歳をどうやって見つけたのかと驚いた。社会の端っこで生きている人の人生に焦点を当てた着眼点がすごく良かった。幸子さんとお客さんとのやり取りから、その場の温かさを感じさせる作品に仕上がっている。作品のタイトルの意外性や映像撮影の画角、選曲などが作品の空気感とぴったり合っていて、随所に制作者の脱群のセンスが光っている」と高く評価されました。

受賞の喜びを分かち合おうとかけつけた新聞学科の水島ゼミの学生たち

受賞にあたって中野美子さんと同じゼミに所属する新聞学科の学生たちも東京から駆けつけて一緒に祝いましたが、今回の受賞について中野さんは次のようにコメントしています。

「制作にご協力いただいた全ての方に感謝いたします。これからも映像作品を通して、社会のさまざまな問題に目を向けていきたいと思います」

表彰式の翌日に行われた高校生と大学生の映像制作ワークショップの様子

「地方の時代」映像祭は、毎年、大阪・吹田市の関西大学で行われますが、優れた映像作品を表彰するだけでなく、映像制作を実践するための啓発活動も行っています。表彰式に合わせて、審査員らが主催して高校生と大学生のための映像制作のためのワークショップが行われ、映像制作について互いにアイデアを出し合っていました。

表彰式やワークショップなどを通じた映像制作の学び。参加者たちは、他の大学や高校生ら映像制作に携わる若者同士の交流を楽しみながら刺激を受けていました。

 


今回の受賞作品の一覧は こちらをご覧ください。

上智大学 Sophia University