世界遺産アンコール・ワットの西参道開通祝賀式典および「渡り初め儀式」が行われました

開通した西参道の前で記念撮影(右から4番目サリ・アガスティン上智学院理事長、5番目石澤良昭上智大学教授、6番目ノロドム・シハモニ国王陛下、7番目ハン・ペウ アプサラ機構総裁、9番目プーン・サコナ文化芸術省大臣)

日本カンボジア友好70周年を迎えた本年11月4日、カンボジア・シェムリアップで、アンコール・ワットの西参道開通を祝う式典および「渡り初め儀式」が同国政府主催の国家行事として執り行われました。上智大学元学長、アジア人材養成研究センター所長の石澤良昭教授を中心とする、本学の33年にわたるカンボジア人の遺跡保存官養成と西参道修復工事が完了し、長さ200メートルの西参道が開通しました。

式典には、カンボジアからノロドム・シハモニ国王陛下、フン・マネット現首相、フン・セン前首相、プーン・サコナ文化芸術省大臣、政府閣僚・高官、ハン・ペウ カンボジア王国国立アンコール遺跡整備機構総裁(アプサラ機構 APSARA National Authority)、本学からはサリ・アガスティン上智学院理事長、石澤教授などが登壇しました。国内外の来賓、関係者に加え、国民、生徒、総勢約1,000人が西参道前の会場を埋め尽くし、盛大で華やかな式典と「渡り初め儀式」が繰り広げられました。

挨拶をする石澤教授 ©カンボジア王国政府提供

石澤教授が挨拶に立ち、「カンボジア人による、カンボジアのための、カンボジアの遺跡保存修復」を国際協力の哲学に掲げ、ソフィア・ミッションとして遺跡保存官の養成と遺跡保存修復を展開してきたこれまでの経緯について国王陛下にお伝えしました。そして「何よりも、カンボジアから水や石の問題、保存修復の理念の問題、アンコール王朝の輝かしい歴史の問題など、たくさんの知識を学んだことに感謝し、カンボジアに敬意を表したい。これからもカンボジアの皆さんとともに協力を続けていきたい」と語りました。

シハモニ国王陛下に拝謁するアガスティン理事長(右)、石澤教授(左)

シハモニ国王陛下からは、「アンコール遺跡群のために、持続可能な方法で遺跡保存や遺跡保存官の人材育成を推進してくれた石澤教授らに感謝する」とお言葉があり、アガスティン理事長ほか本学とアプサラ機構 の関係者に勲章が授与されました。続いて、国王陛下らによるテープカットおよび渡り初めが行われセレモニーは終了しました。セレモニー終了後、西参道は一般開放され、修復に携わった作業員、お祝いに駆けつけた人、観光客など、アンコール・ワットを背景に記念撮影をする姿が多く見られました。

今後も本学は、アプサラ機構とともに西参道の定期的保守管理およびカンボジア人遺跡保存官の人材養成支援を継続してまいります。

テープカットに加わるアガスティン理事長(中央)©カンボジア王国政府提供
渡り初めをするシハモニ国王陛下 ©カンボジア王国政府提供

<上智大学とアンコール・ワット西参道修復工事について>

アンコール・ワット西参道は、参詣者がアンコール・ワットの中央尖塔に向かうために設けられた環濠を横断する出入り口にあたり、過去に幾度か崩壊し、修復が繰り返されてきました。

本工事で中心的な役割を果たしてきたのはアジア人材養成研究センター所長の石澤良昭教授です。石澤教授は、内戦で失われたカンボジア人遺跡保存官の人材養成のため、1991年からプノンペンの王立芸術大学で考古学、建築学を学ぶ大学生のために集中講義を開始。1996年、西参道第1期工事の着工と同時に、シェムリアップ市内に上智大学アジア人材養成研究センターを建設、修復工事現場に寄り添いながら、今日まで33年間にわたり保存官養成に尽力してきました。現在、石澤教授の教え子たちは、大学教員や官僚など、同国の文化財・遺跡保全に係る分野をけん引する人材として活躍しています。石澤教授の業績と貢献は高く評価され、アジアのノーベル賞とも言われる「ラモン・マグサイサイ賞」や「カンボジア王国友好勲章(サハメトレイGrand Croix=大十字章)」等を受賞しています。


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