電気自動車購入後の環境配慮型保険への加入意向を左右する要因を解明

環境配慮に関する情報は加入意向に直接作用せず、保険への好感や信頼、価値認識を通じて影響することを明らかに

本研究の要点

  • グリーンEV保険は、EV購入後の運転や修理において環境に配慮するための選択肢になる。
  • 環境配慮に関する情報は、消費者が保険をどう評価するかを通じて加入意向につながり、とくに保険への好感が重要な役割を果たす。
  • 価格を重視する人ほど、環境価値が明確な場合に強く反応する。
  • 気候変動への関心が低い人では、環境配慮に関する情報への反応が弱くなる。

研究の概要

上智大学大学院地球環境学研究科博士後期課程のYimeng Zheng大学院生、Zhao Chen大学院生および同研究科の銭 学鵬教授の研究グループは、中国で電気自動車(EV)・新エネルギー車を所有または運転する758人を対象に、環境配慮型EV保険への加入意向を調査しました。

その結果、環境配慮に関する情報が加入意向に直接結び付く関係は明確ではなく、保険への好感、環境面の信頼や価値の認識、加入できるという感覚、周囲からの期待を通じて加入意向につながることが示されました。なかでも、態度(保険への好感)を通じた経路が最も強い結果でした(図1)。また、価格を重視する人ほど環境配慮に関する情報と加入意向の結び付きが強く、同様の傾向は気候変動を身近な問題と感じる人でもみられました。一方、関心が低い人では明確な結び付きはみられませんでした。

図1 五つの要因を通じた結び付きの強さ(出典:原論文 Fig. 3に基づいて編集したもの) 四角は各経路の推定値、横線は95%信頼区間です。GS=環境情報、PI=加入意向、ATT=保険への好感、GT=環境面の信頼、GPV=環境面で感じる価値、PBC=加入できるという感覚、SN=周囲からの期待。

本研究では、構造方程式モデリング(SEM: Structural Equation Modeling)や必要条件分析(NCA: Necessary Condition Analysis)、ファジィ集合質的比較分析(fsQCA: Fuzzy-set Qualitative Comparative Analysis)を用いて、環境配慮に関する情報と加入意向の関係を多角的に分析しました。その結果、保険への好感が加入意向を高める上で重要な役割を果たすことが示されました。本研究成果は国際学術誌Journal of Retailing and Consumer Servicesに2026年8月10日に掲載されました。

論文及び著者

媒体名

Journal of Retailing and Consumer Services 

論文名

Extending sustainable consumption after EV purchase: Green signals and purchase intention toward green EV insurance

掲載巻号

第94巻(2027年1月号) 論文番号105039

掲載日

2026年8月10日にオンライン公開

URL

https://doi.org/10.1016/j.jretconser.2026.105039

著者(共著)

Yimeng Zheng1, Zhao Chen1, and Xuepeng Qian1

Affiliations

1Graduate School of Global Environmental Studies, Sophia University, Japan

研究の背景

持続可能な消費は、EVを購入して終わるものではなく、その後の運転や修理、保険などのサービス選びにも広がります。環境配慮型のEV保険は、通常の補償に加え、エコドライブへの特典や環境に配慮した修理、バッテリー支援などを通じて、環境負荷の低減につながることが期待されるサービスです。

保険の環境面での効果は、契約前に確かめにくいものです。たとえば、環境に配慮した修理によって資源をどの程度節約できるかを消費者が事前に把握することは容易ではありません。そこで、政策や保険会社から発信される情報が判断の手掛かりになります。本研究では、こうした環境配慮に関する情報と加入意向の関係を調べました。

研究の意義

本研究は、環境価値を事前に確かめにくい保険において、政策と企業の情報が消費者の判断にどう結び付くかを示しました。消費者が政策と企業の情報を一つの手掛かりとして受け取る働きを、本研究では「受け手側のシグナル整合性」と捉えました。

政策側には環境価値の基準を、保険会社にはその根拠を分かりやすく示すことが求められます。加入意向と最も強く結び付いたのは、保険への好感でした。保険会社は、エコドライブへの特典や環境に配慮した修理の価値を具体的に伝えることが重要です。価格を重視する人ほど環境情報に強く反応した一方、気候変動への関心が低い人では明確な関連がみられませんでした。費用とサービス内容を比較できる説明も有効と考えられます。

今後の展望

本研究では、環境配慮型EV保険への実際の加入や環境負荷への効果は確認していません。今後は、加入意向が実際の契約や更新につながるかを追跡する必要があります。また、情報の示し方を変える実験や、環境価値を確認しやすい商品との比較を通じて、保険の「確かめにくさ」が判断に与える影響を検証します。


研究内容に関するお問合せ

上智大学大学院地球環境学研究科 教授 銭 学鵬 (qianxp@sophia.ac.jp)

報道関係のお問合せ

上智学院広報グループ (sophiapr-co@sophia.ac.jp)

上智大学 Sophia University