上智大学主催の「金・ルビー・銀・銅祝式典」について、2月20日(日)に2020年度式典が、2月27日(日)に2021年度式典が、それぞれ四谷キャンパスで挙行されました。
「金・ルビー銀・銅祝式典」は、卒後50年(金祝)、40年(ルビー祝)、25年(銀祝)、15年(銅祝)の節目を迎える卒業生の皆様を本学へお迎えし、上智大学として直接祝意をお伝えする場として開催されるものです。
長引くコロナ禍の影響を受け、2020年度式典、2021年度式典ともに度重なる延期を余儀なくされましたが、各祝で会場を分散させるなどの感染防止対策を徹底し、かつ、祝賀会(飲食を伴う懇親会)を行わないことを条件に、このたび対面での開催が実現しました。
式典では、曄道佳明上智大学長の式辞に続き、各祝の代表者にラテン語で書かれた祝状と花束が贈呈されました。また、佐久間勤上智学院理事長、鳥居正男上智大学ソフィア会会長の祝辞の後、各祝代表者による謝辞があり、それぞれの在学時の思い出や卒業後の様子、母校への想いなどが語られると、会場では当時の様子を思い出すかのように、時折頷きながら耳を傾ける来場者の姿が多く見られました。
式典の最後には、上智大学応援団による祝賀パフォーマンスが披露されました。応援団から来場の卒業生にエールが送られると、会場からは大きな拍手と笑顔があふれ、華やかな雰囲気の中、式典が締めくくられました。
コロナ禍を考慮し、規模を縮小しての開催となりましたが、当日は、各日ともに500名近い卒業生が久しぶりの母校を訪れ、当時の面影を残すキャンパスを懐かしむ姿や、旧交を温める姿が見られました。
当日、ご来場が叶わなかった卒業生の皆様へのメッセージとして、曄道佳明上智大学長の式辞を以下に掲載いたします。
本日金祝・ルビー祝・銀祝・銅祝を迎えられた皆さま、誠におめでとうございます。そして、長年にわたり物心両面で上智大学を支えてくださり、心から感謝申し上げます。そのご支援はもちろんのことですが、私は、皆様が卒業生としてこの式典に足を運んでいただけたこと、そのことに感動の気持ちをお伝えしたいと思います。
私自身、上智大学を思う気持ちは誰にも負けないと自負しておりますが、この大学を考えるとき、それは現在進行形の、教育、研究、学生支援、社会貢献であることと同時に、卒業生、学生、教職員の皆様によるこのコミュニティあるいはファミリーの尊さであります。上智大学という場を共有した、そして社会への志をぶつけ合った仲間が世代を越えて構成するこのコミュニティは、誰に誘導されることもない、まさに上智大学そのものの自然体であるからです。とりわけ上智大学を長らくその意識の中に留めて頂いた皆さまにあられましては、まさに本学の成長を、あるいは時にもがきを、そして発展を、温かい眼差しをもってご覧いただいてきたものと思います。その眼差しこそが誇るべき本学の自然体であろうと思うのです。
皆様が卒業されたそれぞれの年から今日まで、様々な出来事がありました。人間社会の大いなる飛躍を予感させた当時をはじめ、総じてこの50年、40年、25年、15年を振り返るだけでも、日本社会は、あるいは国際社会は、大いなる発展を確信し、また頓挫し、そして回復し、という繰り返しの歩みを進めてきたように思います。昨今の国内外の状況との対比において、私たちの社会がいかに不透明な未来に向けて模索を繰り返してきたものかと痛感させられます。
今のキャンパスに目を転じたいと思います。コロナ禍中にあって、在籍する学生達は、やはり不透明な未来を、不安な眼差しで見つめています。高校とは明らかに異なる学びのステージに進むと同時に、全く新しいオンラインでの教育環境にも適応することを求められました。経済的な状況も厳しくなる中、卒業生の皆様からの温かな学生へのご支援がどれだけ学生を奮い立たせたことでしょう。不透明な未来を見つめる、実はこの状況はいつの時代でも同じなのだと思います。大事なことは若い世代が不透明さに怯むことなく、むしろ奮い立つ動機をいかに持ち合わせられるのか、その機会提供を行う私たちの意気込みであろうと思います。上智大学の存在の意義を、社会の不透明さの意味を熟知される皆様の、大学への助言を、学生への激励を心より期待するものであります。
本日の会場であるこのソフィアタワーが竣工して5年が経ちました。教皇フランシスコをこの場にお招きし、上智大学への期待のお言葉を頂戴し、国連事務総長グテーレス氏を迎え、学生に国際社会の未来を語って頂いた会場であります。現在は、いわゆるメインストリート路面の改修工事を行っており、この春には模様替えした姿をお見せすることができるはずです。1号館は当時の姿をとどめておりますが、この夏には15号館が竣工する予定になっています。また、大学では、新たな全学共通教育をこの4月より開始いたします。本学の伝統であるキリスト教人間学を軸として、人間を理解し、現代社会のリテラシーとして思考力とデータサイエンスを学び、そして社会課題の認識の仕方を具備する、全ての学生がこれらを必修科目として履修いたします。そこで学生に訴えかけることは、自己を知り社会への関りを考える意識と、他者とりわけ弱者への眼差しであります。上智大学の教育の軸はぶれることはありません。その軸を現代社会の中でどのように表現するか、これが私たちの腕の見せ所であろうと認識しております。コロナ禍による留学生の送り出し、受け入れが停止している状況も本学にとっては大きな懸案事項です。コロナ禍前には92ヶ国からの留学生を迎えていたこのキャンパスも、その活気を取り戻すのに少々時間を要しそうです。
私たち大学は、今感じざるを得ない社会の先行きの不透明さに怯むことは許されません。そして停滞することなく、今こそ上智大学から社会に向けた新しい発信を行わなくてはなりません。その中心は、誰も取り残さない社会の実現に向けた実践であり、地球の持続性に向けた取り組みであろうと思います。改めまして、本日、時間、空間を共に過ごさせて頂けたことに深く感謝申し上げます。私たちが、皆様をお迎えすることを、どれだけ楽しみにしていたか、うまくお伝えできたでしょうか。本日のこの機会が、皆様が旧交を温め合われると同時に、上智大学というファミリーの一員であることを誇りに感じて頂ける時間となれば望外の喜びであります。
本日は誠におめでとうございます。
上智大学長 曄道佳明