複合的な学びの中で、目指したい研究、研究者像を見出す喜び

「理工学の基礎をしっかり学びながら、将来は材料科学を専門とするマテリアルサイエンティストとしての道を進みたい」と語る、理工学部物質生命理工学科グリーンサイエンスコース1年・岐阜県出身の八田瑞希シルバさん。1年生で国際寮のリビンググループリーダーを務めることを決意した背景や、将来の夢について語ります。
科学者を目指すために、まずは横断的で幅広い知識を身につける
私が上智大学を目指したのは、理工学を英語で学びたいという思いがきっかけでした。英語で学べる理系学部をもつ大学は他にもたくさんあったのですが、1年生から1つの専門に絞って勉強する大学が多い印象がありました。でも、上智の理工学部は生物、科学、物理、情報など、さまざまな分野を基礎から勉強した上で、自分の専門を決めることができるカリキュラムです。理工学の基礎をしっかり学んでから自分の専門を決めたかった私にとって、このカリキュラムはとても魅力的だったので、上智大学を選択しました。
私は高校時代をスリランカで過ごしていたため、大学選びにおいては家族の協力が不可欠でした。直接大学に足を運ぶことが難しかったので、情報収集に協力してくれた家族には感謝の気持ちでいっぱいです。岐阜で生まれ育ってスリランカの高校を卒業するまで、私は東京での生活経験はありませんでした。東京での暮らしをはじめた時、大きなビルが立ち並ぶ景色と人の多さに圧倒されたのを覚えています。最近はようやくこの街での生活に慣れてきましたが、東京には文字通り「何でもある」と感じています。大きなターミナル駅や観光地にも、四谷キャンパスからだと電車1本で行けるというアクセスの良さは、上智の魅力の一つですよね。
LGLの経験は、チームをリードする研究者になる第一歩

私が暮らす祖師谷国際交流会館には、世界各地からさまざまな言語を話す学生が集まっています。元々留学していたこともあり、言語に強い関心がある私にとっては、ある意味理想的な環境とも言えます。それでも入寮前は語学面で周りと上手く馴染めるか不安でしたし、慣れない東京での生活にも緊張はありました。そんな私がスムーズに寮生活に馴染めたのは、寮生たちがあたたかく受け入れてくれたから。国際寮では、母語や文化が異なるのは当たり前です。相手が本当に伝えたいことは何なのかを理解しようとする「他者理解」の文化が根づいていることもあり、寮は私の第二の家のような居場所になりました。
国際寮では、LGLと呼ばれるリビンググループリーダーを務めています。LGLの役割は、寮生活をより豊かに、心地よくするために寮生とコミュニケーションを取ったり、親睦を深めるイベントを企画したりすること。「リーダー」という響きに少し身構える自分もいましたが、リーダーシップを学び実践する上でとてもよい機会だと考えて立候補しました。私は将来研究職に就くことを目指していますが、研究者はさまざまな組織や人々と共同で取り組むプロジェクトに関わる機会が多いですよね。プロジェクトをリードする経験を今から少しずつ重ねていきたいと思っていた私にとって、LGLはとてもよい機会となっています。
自分の意見を相手に伝えることは勇気のいることではありますが、LGLとして活動する中で、バックグラウンドが異なるさまざまな人とコミュニケーションを取る機会が増え、自信もついてきています。この経験のおかげで、授業でのディスカッションなどでも自分の意見が言いやすくなりましたし、より活発な議論ができるようになりました。自分の意見を発することは、相手の意見を否定するのではなく、相手の意見に寄り添うからこそ出来ることだと国際寮での生活から学びました。
寮生活を通じて、科学者として目指したい道が見えてきた
大学の授業はどれも興味深いものですが、印象に残っているのはクリティカルシンキングの授業です。このクラスでは毎週提示される文献を読んでディスカッションするのですが、ある時、留学生がテーマの記事を扱ったことがありました。私以外にも留学生が大勢いるクラスだったのですが、「留学生」と一括りにしても、一人ひとりのバックグラウンドや来日した理由はバラバラです。当たり前のことではあるのですが、突っ込んだ議論をしながらそれぞれの経験や背景など、自分とは異なる立場にある人の考え方にたくさん触れたことで、自分の視野が広がりました。
理工学部で学ぶ学生として、理工学に関連するイベントにも積極的に参加しています。先日も寮生企画のイベントに参加したのですが、それはSDGsとオフィス環境整備の両立がテーマでした。それまで私は日常生活と理工学の繋がりをなかなかイメージすることが出来ていなかったのですが、このイベントに参加して、授業で学んだ「生物の構造を真似た建物を作ることで効率良く環境問題を解決する」ことがイメージを持って理解することができたんです。社会生活と研究の関係性に気づくきっかけとなった、私にとっては印象深い出来事でした。
高校時代から何かを発明して社会貢献をしたいと漠然と思っていましたが、さまざまな物質や材料について研究する「マテリアルサイエンス」領域への関心が強まってきています。特に興味があるのは、有機化学やナノテクノロジー。今はまだ1年生なので基礎的な勉強が中心で、所属したい研究室も決まってはいませんが、自分が進むべき専門を見極めるためにも勉強に力を入れていくつもりです。これから学年が上がるにつれ内容が専門的になっていきますがどんな学びができるのか、今からとても楽しみです。将来的にはマテリアルサイエンティストとして、研究職に就くことができるよう努力を重ねていきたいと思っています。
※この記事の内容は、2023年7月時点のものです