
上智⼤学で最も古い伝統を持つ哲学専攻は、古代ギリシアからキリスト教教父、中世のスコラ学・神秘思想を経て、近世・現代の諸思想へと至る西洋哲学全般の伝統を歴史的・体系的に研究します。これとともに芸術、宗教、文化のあり方を根本から考え、また環境破壊や⽣命操作など現代社会が直面するさまざまな倫理的問題に対して、知識や技術の根拠を模索し、また人間理解の再考を通じて、より原理的な仕方で掘り下げることを目指します。
カリキュラムの特徴
カリキュラムでは、西洋哲学の古典文献を正確に読解するための訓練を重視し、近現代の英語・ドイツ語・フランス語はもとより、古代ギリシア、中世ラテン語の原典による文献研究のゼミナールを主軸に、さらに特殊問題を扱う講義が複数開講されています。
志願者は学部卒業の段階で十分な語学力をつけておくことを勧めます。博士前期課程は2つのコースに分かれ、A:哲学専修コースでは、古代ギリシアからキリスト教教父、中世のスコラ学・神秘思想を経て、近世・現代の諸思想へと至る西洋哲学の伝統を研究し、これとともに芸術、宗教、文化のあり方を根本から考えます。B:現代思想コースでは、現代的な視座から、環境破壊や⽣命操作など現代社会が直面するさまざまな倫理的問題を根本から考えます。両コースとも、上智大学の他学科出身者や他⼤学の卒業⽣も幅広く受け入れています。
博士後期課程は、それぞれの分野での専門研究者の養成を主眼においています。全国規模の学会や内外の研究会に参加し、研究成果を公表しながら研究指導教員の下に丹念に研究を進め、最終的に課程博士論文にまとめることが目標です。在学中に欧米の⼤学に留学する人もいます。
授与学位
- 博士前期課程:修士(哲学)
- 博士後期課程:博士(哲学)
取得可能な教員免許・免許教科
- 中学校専修(社会)
- 高等学校専修(公民)
※教員免許が取得できる専攻は、博士前期課程に限ります。また、1種免許状を取得済、あるいは1種免許状取得要件を満たしている教科のみ取得可能で、必ずしも全教科取得できるわけではありません。
哲学専攻の特色
研究の伝統
語学と原典を重視した授業。特に古代ギリシア、中世哲学、ドイツ観念論などの西洋哲学の授業には定評があります。また、西洋から学ぶだけでなく、東洋の精神的伝統を尊重し、明治以後の日本哲学の研究も行われています。
そして哲学の精神的伝統に深く根ざすことによって、環境・生命の倫理など、現代の社会が直面する諸問題を哲学的に根本から考えます。
弾力的なカリキュラム
前期課程は他の専攻の開講科目を8単位まで選択科目として履修でき、また慶應義塾大学、東洋大学、東京女子大学の都内3大学と委託聴講生制度を結んでいるため、履修の幅を広げることが可能です。
学内外の研究機関との連携
年2回行われる上智哲学会で卒業生と交流し、また学内の中世思想研究所、キリスト教文化研究所などと連携して、豊富な研究資料を生かすことができます。フライブルク大学およびミュンヘン大学との間で大学院レベルの交換留学の協定を結んでいます。
修了生の最近の主な研究テーマ
- フィヒテの中期知識学における信の概念
- エックハルト研究─ 宗教的生の探求構造
- 創造活動と生命─ ホワイトヘッド哲学の発展史研究
- トマス・アクィナスの経済論
- ヘーゲル『精神現象学』
- ソクラテスにおける無知
- ヘーゲル論理学
- 後期西田哲学の根本問題
- ヴァルター・ベンヤミンの哲学的写真論
- トマス・アクィナスの哲学的創造論
- ニーチェの力の哲学
- ベンヤミンの言語哲学
- アリストテレスの徳倫理学
- カントの構想力の概念
- 人間の尊厳、責任、刑罰
教育の方針
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博士前期課程
本課程では、学生が修了時に身につけているべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 西洋哲学史全般に関する基礎知識をもとに、各自の研究テーマを掘り下げて、じっくり考える力と、時流に流されない深い学識
- 現代社会のグローバルな危機に対して、対症療法に終わらない深い次元から解決の方向を見出す洞察力と賢慮
- 複数の外国語(英・独・仏・ギリシア・ラテン)を読む力と難解な古典文献の読解力
- 書き言葉と話し言葉の両面にわたる適切な表現の能力および文化的に異なる背景をもった人々を説得できる力
- 専門分野の研究実践能力を獲得し、修士論文をまとめる力
博士後期課程
本課程では、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 論文の個人指導や国内外の研究者との交流を通して得た知識により、学会での発表ができる能力と、それらを踏まえ博士論文としてその成果をまとめる能力
- 複数の外国語(英・独・仏・ギリシア・ラテン)を読む力と難解な古典文献の読解力
- 書き言葉と話し言葉の両面にわたる適切な表現の能力および文化的に異なる背景をもった人々を説得できる力
- 専門研究者として、大学等の高等教育機関において教育・指導にあたる能力
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博士前期課程
本課程では、ディプロマ・ポリシーに沿って、哲学専修コースおよび現代思想コースの2つのコースを設置し、以下のようにカリキュラムを編成しています。
- 哲学専修コースでは、古代から中世を経て近・現代へ至る西洋哲学の歴史をふまえて、科学、芸術、文化、宗教のあり方を根本から考えるとともに、哲学の文献研究の基礎を学ばせる。
- 古代から近代まで哲学の古典的著作を原典(英・独・仏・ラテン・ギリシア)で精読する文献研究を開設する。
- 現代思想コースでは、現代的な視座から哲学の根本問題を考察し、環境、生命、医療など現代社会が直面する多様な倫理的問題をとりあげる。文献研究以外に現代倫理学、美学・芸術学、東洋思想、日本思想、宗教思想などの科目を開設する。
- 両コースに共通の必修科目「哲学総合演習A、 B」によって、各自が自分の研究を発表し、討論する機会を設ける。関心の枠を拡げ、質疑応答や意見交換によって哲学的思索を深め、共同研究のやり方を幅広く学ぶ。また授業の一部を英語で行うなど、国際的な研究水準を意識させる。
- 入学後に各自の希望によって指導教員を決定し、個別の研究指導を通じて自分の勉学を深め、最終的には修士論文へと結実させる。
- 後期課程進学を希望する者は、大学院生の編集する『上智哲学誌』への投稿、上智哲学会での研究発表や『哲学論集』への投稿、などを通じて、学会発表を経験させる。
博士後期課程
本課程では、ディプロマ・ポリシーに沿って、専門的哲学研究者(大学・短大・高専の教員)の養成を主眼とし、また国際的な舞台で活躍できる人材を育成するようにカリキュラムを編成しています。
- 哲学の歴史研究においては文献講読を中心とし、古代から現代までを扱う「哲学特殊研究」を複数開設する。
- 文献研究以外に、現代倫理学、美学・芸術学、東洋思想、日本思想、宗教思想などを開設する。
- 各自が自分の研究を発表し討論する 必修科目「哲学特殊研究A、B」を開設する。
- 後期課程進学後に各自の希望によって指導教員を決定し、個別の研究指導を通じて自分の勉学を深め、口頭発表や論文投稿など学会活動を通じて研究成果を発表しつつ、最終的には博士論文へと結実させる。
- 大学院生の編集する『上智哲学誌』への投稿、上智哲学会での研究発表、『哲学論集』への投稿などを通じて、学会発表を経験させる。
- 上智大学の恵まれた条件を活かして海外留学を推奨する。また授業の一部を英語で行うなど、国際的な研究水準を意識させる。
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博士前期課程
本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。
- 前期課程は哲学専修コースと現代思想コースの2つのコースがあり、カリキュラム上では必修・選択科目に関して相違点がある。どちらのコースも、上智大学の哲学科の卒業予定者・既卒者のみならず、他大学他学部の卒業予定者、既卒者、も同じ条件で受験可能。
- 哲学専修コースの志望者には、(1)明確な研究テーマと問題意識、(2)哲学の古典的著作を原典で読むために必要な語学力、(3)西洋哲学史に関する基本的な知識、(4)ある程度の長さの論文を作成した経験、がある学生
- 現代思想コースの志望者には、(1)明確な研究テーマと問題意識、(2)広汎な社会的・現代的諸問題に対する関心と予備知識、(3)研究遂行のために必要な語学力、(4)ある程度の長さの論文を作成した経験、がある学生
博士後期課程
本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。
- 後期課程では専門の哲学研究者の養成に主眼を置くので、①修士論文の一定以上の成績、②文献を読解する語学力、③明確な研究計画と将来設計、をもつことが要求される。
- 高校教員や出版社など狭義の研究者以外の職業を目指す者も歓迎する。志望動機とそれを裏付ける勉学の実践、将来像が入学判定の成否となる。