国文学・国語学・漢文学、多角的に問う日本人の原点
本専攻では、国文学(古典文学・近代文学)、国語学、漢文学の研究を行っています。この3分野はそれぞれが孤立したものではなく、ある分野のことがらを研究する際にも、他の分野についての知識と理解を持ち、さまざまな視点から総合的に研究対象をとらえることが必要となります。そこで本専攻のカリキュラムは、総合的な力が身につくように意図して構成するとともに、研究指導においてもそれを十分念頭に置いた方針をとっています。
博士前期課程のカリキュラムは、各自が研究テーマとする専門領域を深く研究するとともに、その他の領域も積極的に履修することが求められます。修士論文の審査は主査1名、副査2名の体制で行いますが、口頭試問は全教員によって実施します。
博士後期課程では、指導教員の指導のもと、さらに研究の深まりと広がりを求め、授業を通じての指導とともに、論文指導の機会を設けています。研究の成果を着実に結実させていく日々の研鑚が強く求められ、明確な研究計画を立てて最終的には博士論文執筆の域にまで達することが期待されます。このため、在籍中に2篇以上の論文を学会誌に発表することが課せられています。
こうした教育研究の体制の下、特に研究者の養成と国語科教員の養成に力を入れており、特徴ある人材を輩出しています。また、2014年・2019年には釜山大学(韓国)、2017年には輔仁大学(台湾)との合同で国際シンポジウムを開催し、教員・院生が発表するなど、国際的共同研究にも積極的に取り組んでいます。
国文学の特質
国文学研究は正確に本文を読み取ることを基本にし、そこから作品の訴えかけるものの理解、作品の価値、存在意義の解明へと進みます。これらを多角的な視点から遂行するために、文学史の流れ、思想背景などの考察、中国文学や西欧文学との比較研究なども取り入れています。
国語学の特質
国語学研究は日本語の音韻・文法・文体・語彙・文字表記の史的研究を中心に据え、海外との文化交流からもたらされたキリシタン語学・蘭語学・英語学などにも目を向けながら、各時代の日本語を考えます。また、合わせて国語研究の方法論を学説史的に再検討します。
漢文学の特質
漢文学研究は中国古典研究を踏まえ、中国古典がわが国にどのように受容され、いかなる地平を拓いたかという、漢文学が担うべき課題を自覚的に考究します。対象領域は中国古典学がそうであるように、文学・思想等の区分を設けず、むしろ融合して扱います。
修了生の最近の主な研究テーマ
- 「 記紀歌謡」の比較研究
- 『日本書紀』α群・準引用文の研究
- 秋風と蟋蟀─『万葉集』における自然にまつわる諸発想及び中国文学の受容と変容についての一考察─
- 『源氏物語』における『和漢朗詠集』所収句の引用についての考察
- 『源氏物語』の展開と人物造型に関わる形容表現─「うつくし」「らうたし」を通して ─
- 仏教説話としての『撰集抄』
- 奥浄瑠璃『天狗の内裏』論
- 西鶴浮世草子諸問題の調査・考察
- 初期読本作家たちの言葉と文体
- 正岡子規の文学理論の研究
- 森鷗外文学における個々の〈欲望〉と社会
- 漱石文学における《神経》の諸相
- 田村俊子の文学─ セクシュアリティと感受する〈身体〉
- 『日葡辞書』の訓釈について
- 明治期文章史における尾崎紅葉作品の意義
- 近代日本における〈敬語〉意識の形成
- 『漢書』における「滑稽」について
- 東坡詞試論
- 離魂譚の淵源と展開─「離魂記」を中心として─
学位論文の最近の主な研究テーマ
- 近世中期文学と白話小説 — 初期読本成立史の再構築 —
- 近世後期テニヲハ論の展開と活用研究
- 森鷗外の現代小説 — 対等・平等の研究 —
- 日本書紀段階成立論 — 文体、語法、注記から見た編纂過程の研究 —
- キリシタン版『日葡辞書』の構造についての研究
大学院生も発表できる学術雑誌
本専攻の大学院生は、専攻教員および国文学科卒業生とともに「上智大学国文学会」を組織しており、現在700 名を擁する学会に育っています。年2 回開催される大会は院生にとって研究発表の絶好の機会となっています。学会誌『国文学論集』はすでに54 号まで巻を重ね、学界において一定の評価を得ており、レフリー制のもと大学院生が研究成果を論文として応募、発表できる有効な場となっています。また大学院月例会は、教員・大学院生が参加し、院生が主体的に研究発表と質疑応答をする機会として、定期的に開催しており、これも本専攻特有の研鑚の機会となっています。