ウクライナの復興について考えるワークショップを慶應義塾大学・東北大学と共同で開催しました

対面とオンラインを併用して活発に議論されました

上智大学、慶應義塾大学、東北大学は、6月30日に第1回3大学連続ワークショップ「ウクライナ復興そして未来を考える」を本学四谷キャンパスで開催しました。本ワークショップは、ウクライナの戦後復興に向けた議論が各所で始まっている今、国内外における復興へ向けた活動の最新状況、日本の果たすべき役割、産官学の連携の在り方などについて、多角的に考え、具体的な貢献につなげることを目的としています。学術機関、行政機関、NGO、そして産業界が培ってきた知見を融合し、復興支援に向けた具体的な構想を議論しました。

曄道佳明上智大学長

森下哲朗上智大学グローバル化推進担当副学長の司会のもと、曄道佳明上智大学長は冒頭の挨拶で「誰も取り残されない社会に向けて歩みを止めないのは、人間の尊厳こそが最も尊ばれる人間社会の根本であるという共通認識が世界にあるから。戦後の未来を見据えて各国が動き出す中、私たちはどう貢献できるかを一緒に考えたい」とワークショップに期待を寄せました。

アメリカからオンラインで講演を行った植木安弘教授

はじめに、元国連広報官で国際協力人材育成センター所長の植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授が、海外からオンラインで基調講演を行いました。欧米諸国を中心とした復興支援の動向を説明したのち、日本ならではの支援の可能性について、①戦争が継続している中での支援②停戦あるいは和平協定後の支援③支援のための司令塔の設立と国内体制作りの3つの軸で論じました。

次に「国内外の動向を考える」セッションでは、産官の視点から、復興に向けた取り組みや復興支援の課題などについて語りました。

外務省欧州局参事官の中村仁威氏は、ウクライナ侵略は国際秩序を揺るがす問題であることを強調。日本の途上国支援の特徴である顔が見える支援を示し、「国際社会の決意と団結を示すためにも、各国で復旧・復興の認識を統一し、支援の意図を明確にしていくことが重要」と訴えました。

日本経済団体連合会国際経済本部統括主幹の森田清隆氏は、B7*東京サミットでの共同提言を始め、経済界における支援施策を紹介。さらに、ウクライナ支援を目的とするチームの発足など、産業面での積極的関与を強調しました。

JICA中東・欧州部ウクライナ支援室長の小早川徹氏は、復興に向けた基盤整理、生活再建・環境改善、農業生産回復・産業振興、民主主義・ガバナンス強化の4つに重点を置いた支援方針を紹介。さらに各分野における人材育成が、今後復興の軸の一つになるとし、学術機関への期待を述べました。

世界銀行駐日特別代表の米山泰揚氏は、拡大し続ける被害への援助を担保するためには、政府だけでなく民間セクターの積極的関与が不可欠であると指摘。戦後復興を目的に設立された世界銀行の歴史から、復興に必要な資金供給の重要性を語りました。

欧州復興開発銀行東京事務所所長の大矢伸氏は、エネルギーやインフラ、農業、貿易・金融、民間企業に重点を置いた融資施策を紹介。資金需要が莫大であるため、それらをどのように確保するかが今後の課題であると述べました。

NPOジャパン・プラットフォーム事業推進部長兼事業評価部長兼事業管理部長の樋口博昭氏は、NGO側の視点からウクライナ支援の特徴や課題を解説。日本の多くのNGOは、ウクライナおよび周辺国での人道支援経験が浅いことから、増大するニーズへの対応が困難になりつつある実情を指摘し、行政・国際機関・NGOのさらなる連携と調整が必要であると強調しました。

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 田中浩一郎教授
東北大学理事・副学長 植木俊哉教授

続いて「我が国の果たすべき役割を考える」セッションでは、慶應義塾大学と東北大学が大学における支援の在り方について発表しました。

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の田中浩一郎教授は、大学の役割として歴史的知見を反映した政策への提言と人材輩出を挙げ、過去に行われた平和構築との類似点、相違点から考えることの大切さを説きました。

東北大学理事・副学長で同大国際法政策センター長の植木俊哉教授は、東日本大震災の被災地にある大学という立場を踏まえ、「震災国である日本の復興に関する知見をどうウクライナに還元できるかが重要」と述べ、分野を超えた学際的な施策の提案を呼びかけました。

閉会後は参加者が登壇者に直接質問する姿も見られました

専門家の発表の後、オンラインを含め130人近くの参加者から活発な発言が続きました。また、来場された逢沢一郎衆議院議員からも、日本の役割の重要性や大学による取り組みへの期待などが述べられ、盛況のうちにワークショップは終了しました。

第2回ワークショップは9月8日に東北大学主催で行われる予定です。

B7*:Business 7 

上智大学 Sophia University