大災害の被災者にとって有意義な心のケアを考えるシンポジウムを開催しました

東日本大震災から12年目の3月11日、多文化共生社会研究所では、公開シンポジウム「東日本大震災と心のケア―被災者の受援意識に焦点をあてて―」を開催しました。
シンポジウムの第1部は、同研究所長の久田満総合人間科学部心理学科教授による基調講演を実施。第2部の公開シンポジウムには、福島県で被災者支援をしている、福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座の安村誠司教授、福島県南相馬市立総合病院看護部長の小野田克子氏、中央大学文学部心理学科の中村菜々子教授が登壇しました。
曄道佳明学長の開会挨拶の後、久田所長が「大災害時の心のケア―福島県における支援活動報告」と題して基調講演を行いました。縁のある福島県で取り組んできた被災者支援や支援者支援の事例を紹介しながら、被災者にとって有意義な心のケアとは何かと問題提起をしました。

開会挨拶をする曄道佳明学長
基調講演をする久田満所長

第2部では第1部を受け、中村教授がモデレーターとなり被災者への心のケアについて議論を深めました。
安村教授は、原発事故後全国に避難した県民21万人の心と体のケアが課題となり、メンタルヘルスケアが必要な人を対象に電話支援を開始したと説明。適切な支援をするには、健康、生活、人間関係など当事者が抱える悩みやその背景の把握が必要であり、継続して経過をみていくことの大切さを強調。支援が必要な人はまだ大勢いるので支援者には細く長く関わってほしいと語りました。また、被災地域の市町村職員など被災者を直接支援している人たちが一番疲弊している。支援の対象を被災者だけでなく、こういった支援者にも広げてほしいと伝えました。
小野田氏は、原発事故直後は休む間もなく数カ月働き続け、応援に駆けつけた災害派遣医療チームから労いの言葉とともに「休んでください」と言われ心が軽くなったと当時を振り返りました。また、久田所長から受けたさりげないアドバイスが病院スタッフへの支援の際に現場で生かせていると感謝を述べました。
最後に両氏は、心のケアで大切なのは「被災者と共に」という謙虚な姿勢と継続した関わりだと締めくくりました。


心のケアについて議論を深める登壇者(右から 中村菜々子教授、安村誠司教授、小野田克子氏、久田満所長)

上智大学 Sophia University