「1つの記事に対しても、読み手が10人いれば10通りの解釈があります」と語る文学部新聞学科3年の柏夏紀さん。新聞記者を目指す彼女が学部横断的な授業やドキュメンタリー制作を通して感じた、これからのジャーナリストに求められる力とは?
実際にやってみたから、思っていたより難しいということに気づけた
私が上智の新聞学科を選んだのは、昔から報道の仕事に興味があり、ジャーナリズムを専門に学びたいと思ったから。情報の受け手の1人として、そして未来の発信者の1人として、両方の立場からメディアが作られる過程や社会に与える影響を学ぶのは、とても面白いですね。新聞とテレビという2大媒体だけでなく、出版や広告に関する授業が豊富にあるのも、上智の新聞学科の魅力の1つ。さまざまな角度から学ぶことで、情報発信の在り方は自分が思っていた以上に多岐にわたるという気づきがありました。
入学前は座学中心に学ぶのかなと思っていましたが、実践的な学びをとても大切にしているところも新聞学科の好きなところです。報道の現場を見たり、コンテンツ制作に挑戦したり、マスメディアの最前線で働いている方の話を聞いたりという機会が多く、実践的な学びができていると感じています。入学前から楽しみにしていたテレビ番組制作の授業では、チームに分かれて、企画・撮影・出演・収録をすべて自分たちで行いました。「何もかもが想像以上に難しかった」、の一言に尽きるのですが、カメラの操作、カット割の検討、メンバーへの指示出しなど、テクニカルな面はもちろん、出演者として感じたことを表現することの難しさも、実際に経験しないと分からない。この点に気づけたことが最大の学びであり、楽しさでしたね。
上智の新聞学科は、ジャーナリズムを学ぶ学科としては日本で最も歴史があります。実際、マスコミュニケーションの歴史を紐解くと、上智大学新聞学科の名称が出てくることも多いですし、私自身、その学科の一員であることに誇りを感じています。伝統的な学科ならではの堅いイメージがあるかもしれませんが、実際は学生にも先生にも面白い人が多く、和気あいあいとした雰囲気の中で、みんな自由にやりたいことをやっています。私も新入生をサポートするメンターとして、新入生がいいスタートを切れるよう、イベントの企画や運営を行っていましたね。
全く異なる授業で学んだことが繋がって、理解が加速するから面白い
文学部には学科の垣根を越えて7学科が連携する「文学部横断型人文学プログラム」があるのですが、そこで私は時代背景や表現方法を踏まえて戯曲の原文を読み解く授業を履修しました。いつも新聞学科では情報を発信する側の立場で学ぶ機会が多いのですが、この授業で重視されたのは読者、つまり情報の受け手がどのようにその作品を解釈するかという視点。報道に携わる上でも、情報がどのように受け取られるかという視点を忘れることなく発信しなければならないのではないか、ということを考えるきっかけになりました。
マスメディアと深い関係がある、心理学の授業も履修しました。情報の受け手の心理状況についてなど、専門に関わる授業をより深く理解することができたのも、心理学を勉強していたから。上智は全ての学部が1つのキャンパスに集まっているので、学部学科の壁を越えていろいろな授業を履修できます。上智で学んでいると、このように全く異なる別々の授業場所で学んだことが繋がる瞬間が多くて、学んでいてワクワクします。
上智では自分の専門以外のことも学びやすいです。アフリカの文化に関する授業では、アフリカ出身の先生と学生みんなで一斉に伝統的なダンスを踊りました。こんな授業は、上智でしか体験できないんじゃないでしょうか。また、英語以外の言語が幅広く学べるのも、上智の好きなところの1つです。私はイタリア語を選びましたが、ヨーロッパの言語を1つ学んだことで、今までは英語を通してしか見ていなかった世界が少し広がったような気がしています。
読み手によって解釈が違うからこそ、記者にはするべきことがある
この3年間では自分の興味関心に従って、さまざまなことに取り組めたと思っています。その中でも特に頑張ったのは、ゼミで行ったドキュメンタリー制作。取材テーマの選定から取材・撮影・編集までをすべて1人で行いました。大変でしたが、自分の手で一から何かを作り上げるという経験は今後の人生に必ず活きてくると思います。
将来の夢は新聞記者になることです。新聞学科でメディアの勉強をする中で、同じ事象を扱っても書き手によって内容が変わることに気づきました、そして、1つの記事に対しても読み手が10人いれば10通りの解釈がある。つまり、同じ情報に対する人々の認識に誤差があるということです。この誤差をいかに小さくして伝えるかが、これから記者を目指す人や現役の記者に課せられた課題ではないでしょうか。
メディアは私たちの周りに溢れています。時事問題や政治経済だけでなく、スポーツやエンターテイメントを伝えるのも、雑誌や漫画もメディアです。そう考えると、私たちは生きているだけでメディアから発信されたものを摂取していると言っても過言ではないでしょう。だからこそ、メディアの存在に気づくためのアンテナを張っておきたい。さらに今はソーシャルメディアを使って誰もが発信者になれる時代。その中で本当に必要な情報や信頼できる情報を見分けるためには、いろいろなメディアを通して、さまざまな角度から1つの問題を見ることが大切。記者を目指す上で、このことは社会に出ても忘れずにいたいですね。
※この記事の内容は、2021年11月時点のものです