程永華 駐日中国大使の講演会が開催されました

2019年4月18日(木)、程永華 駐日中国大使の講演会「大使が見た日中関係の10年」が、国際関係研究所の主催により、2号館国際会議場で行われました。当日は、本学の教職員・学生など約150人が参加しました。司会は、国際関係研究所の納家政嗣特任教授が務めました。

程永華大使

程永華大使は、中国外交部アジア局や在日本中国大使館に勤務し、マレーシアや韓国の大使を歴任した後、2010年に駐日大使として赴任しました。通常3年程度で交代するところ、9年間もの長きにわたって駐日中国大使を務め、この5月に離任することになりました。

講演に先立ち、曄道佳明学長から挨拶がありました。程大使の講演会は2011年と2014年に続き3回目となりますが、大使離任が発表されて以来非常に多忙な中、以前からの約束ということで今回の講演会が実現したことは本学にとっても大変喜ばしいと語りました。さらに、本学は中国から正規/非正規合わせて約900人の留学生を迎えており、また、現在中国の15の大学と交換留学協定を結んでいると述べ、本学の学生も中国の大学に留学してほしいと学生に呼びかけました。

講演会で、程大使はまず、本学との関係について話しました。大使として赴任した直後に、温家宝首相(当時)が訪日しました。宿泊先に近いということもあって上智大学への訪問が決定し、温家宝首相と硬式野球部の学生たちとの交流が行われ、それをきっかけに上智大学と中国との交流も盛んになりました。今後、本学と中国の大学との間に、単位の相互認定やダブル・ディグリーが実現することを期待していると語りました。

続いて、大使として赴任していた9年2か月の間の日中関係について解説しました。日中関係は山あり谷あり、任期前半は問題が多く、後半は改善の兆しが見えてきたと述べ、3つの時期に分けて説明しました。

第1の時期は着任時から2012年頃まで。その時の日中関係は良好で、日本と中国の交流を進め、両国の協力を拡大しようという気概を持って赴任したそうです。
後に、中国漁船と日本の巡視艇の衝突事件や領土問題が勃発。それらの問題が落ち着きを見せていたときに、東日本大震災が発生しました。中国国内では、四川大地震で日本から多大な支援を受けたことから、次は中国が日本を支援する番だという雰囲気だったそうです。程大使は、中国大使館を24時間体制で業務に当たるよう指示し、被災地の状況把握に努めるほか、日本国内にいる中国人の状況把握や一時帰国の支援などを行いました。中国から日本への支援についての具体的な事例も幾つか紹介しました。

第2の時期は、国交正常化以降、日中関係が最も厳しい時期で、国民感情が両国とも著しく悪化した時期でもあったと振り返りました。その間、元駐米日本大使であった藤崎一郎氏(元本学特任教授)に招かれ、上智大学で開催された講演会で、大使としての考えや日本と中国の関係をどのように進めるべきかを率直に語ったとのことです。

第3の時期は、2014年以降の、日中関係の改善期であると述べました。2014年11月に北京でAPEC総会が開催された時、日中両国は水面下で何度も協議を重ねました。程大使は「レールのポイントを切り替える」という表現を使って、両国関係の改善に努めたと話しました。
また、2016年9月に杭州で開かれたG20サミットにおいて、日中関係にとってプラス要素を増やし、マイナス要素を減らす努力を共にすることが確認されました。2017年には、日本からの訪中団が習近平主席と単独会見を行い、この後に、日中関係改善の方向性が定着したと考えているとのこと。2018年には、ようやく日中関係が再び正常な軌道に戻り、両国間の平和友好事業は再スタートを切ったと語りました。日中関係がこれからステップアップすることを北京から見守りたいと、今後の日中関係に期待を寄せています。

両国間の関係が改善されたとはいえ、新たな問題が発生することがあるかもしれないが、今までの経験、教訓から解決の道を探ってもらいたいと語りました。さらに、国民交流の拡大の重要性も指摘しました。昨年、双方向の交流が1100万人を超えました。中国から日本へは838万人であるのに対し、日本から中国へは269万人であり、日本からもっと中国を訪れ、中国を自分の目と耳で理解を深めてもらいたいと語りました。また、両国政府間で2019年を日中青少年交流推進年と定め、5年間で3万人の相互交流を行うことを予定していると説明し、上智大学の学生もぜひ参加してほしいと呼びかけました。

最後に、程大使は、上智大学は「叡智が世界をつなぐ」という教育理念を有しているが、学生たちが叡智と国際的な視野を得て、日中両国、ひいては、人類社会の発展に貢献することを期待していると語り、国内では最後となる講演会を締めくくりました。

程大使は、離任挨拶など多忙の中、予定の時間を延長して質疑応答にも対応されました。最後に、総合グローバル学部4年の永田理紗さんから花束が贈呈され、程大使は上智大学を後にしました。

上智大学 Sophia University