もっと伝えて、もっと感じたいデータサイエンスという分野に宿る可能性。

「いろいろな人がデータサイエンスを学びやすくなるような情報発信を心がけています」と語る理工学部情報理工学科4年の大池樹さん。専門的な知識をYouTubeでわかりやすく伝えることに情熱を注ぐ彼がデータサイエンスに魅了された理由とは?

すべての始まりは“得意なことを好きになりたい”という想いにあった

私が理工学部を志望したのは「パソコンができたら格好いいな」という単純な理由から。タイピングやプログラミングに精通した自分の姿を想像するとワクワクしましたし、将来の選択肢も広がると思いました。でも、実を言うと、高校時代は数学よりも英語のほうが好きだったんです。英語に比べ、数学は今ひとつ実用性が低いような気がしていました。でも、自分が得意だったのは英語より数学。数学を実用的に活かす力がつけば、得意かつ好きになれるのではないかと思い、数学を使う職業に興味を持つようになりました。

データサイエンティストという職業に出会ったのは1年生の秋学期です。当時の私がデータサイエンスという言葉から連想したのは、今話題のAIやビックデータ、プログラミング。AIを駆使して大量のデータを取得しつつプログラミングができるスキルが身につけば、活躍の幅が広がって面白そうだなと思い、データサイエンスを専門に学ぶことに決めました。

その一方で、サークルはESSに参加して英語の勉強も継続しました。英語は海外の論文から最新の知見を入手して研究する上で欠かせません。また、英語力が高ければ、国際学会に挑戦するハードルが低くなります。コロナ禍でサークル運営がオンラインに切り替わったときは大変でしたが、メンバーと試行錯誤を重ねながら活動を続けました。学ぶ分野や目指すキャリアが全く異なる学生たちとの協働を通して人をまとめる力がつきましたし、理工学部の学生だけでは思いつかないようなテーマで話し合い、議論を重ねたことで、柔軟なモノの見方や考え方ができるようになりましたね。

データサイエンスを学ぶ楽しさは実用性と応用性の高さにある

情報理工学科でデータサイエンスを専門とする学生の中には1つの分野を突き詰めている人もいますが、私にとっては非常に幅広い分野を学べることがデータサイエンスの最大の魅力です。その分、自分の知識やスキルを活かせるシーンが増やせますから。例えば、顧客の購買履歴や特徴に関するデータを分析して企業の意志決定に役立てたり、今後の自動運転に役立てたりするのは、とても実用的で面白いと感じます。

キャンパスが1つに集約されている上智大学では理系・文系を問わず興味のある授業が履修しやすいので、理工学部に所属しながら幅広く学ぶことができたのは、知見を広げる上で有益でした。データサイエンスの知識が経済学のゲーム理論や心理学におけるアンケートデータ分析にも役立つことを学んだときは、その応用性の高さに驚きましたし、一般教養の授業で知的財産権について学んだときには、「ひょっとして、自分で書いたプログラムや自分で作ったシステムも知的財産になるのかな」という疑問が湧いて自分の興味関心の対象が広がりました。

理工学部の好きなところは、研究室が少人数であること。似たような興味を持つ学生たちと毎日のように意見の交換ができるのは、ものすごく楽しいです。先生方との距離も近くて、何か聞きたいと思ったときにすぐ聞ける。「そんなことは聞かないで」とか「そのくらい自分でやりなさい」と突き放されることがなく、「ここにはこう書いてありますが、自分はこう思うんです」というように、気軽に議論をしながら理解を深めていけるのは、とても嬉しいことですね。

YouTuberとして他者の学びをサポートしながら“伝える力”を身につける

もともと私は技術系のウェブサイトで情報発信をしていましたが、ゼミの活動の一環として、YouTubeにチャンネルを開設し動画発信を始めました。データサイエンスの領域は非常に広いので、自分が学びたい内容とは全く違う内容の書籍を手に取ってしまうことも珍しくありません。そうした自分の経験を踏まえ、YouTubeでは、データサイエンスにはどのような分野があって、自分が深めたい専門を学ぶためにはどの分野を選択すべきかなど、いろいろな人がデータサイエンスを学びやすくなるような情報発信を心がけています。

情報理工学科で学んだことを日頃からアウトプットして経験を積めば、今後の就職活動や研究において、自分の知識や経験を相手にわかりやすく伝える力も身につくので、自分にとってもプラスになります。また、人に教えることで自分の知識が定着し、より深まるというのを実感していますね。

卒業後は大学院に進学して、将来のキャリアに向けた土台を作りたいと思っています。YouTubeやウェブサイトで情報発信を続けてきたという経験を活かしつつ、自分が追求したい仕事に就けるように、データサインエンスの技術面を中心に学んで実力をもっとつけたいですね。その上で研究職を目指すのか、実務的な分析業務に携わりたいのかはまだ定まっていませんが、どちらかではなく両方やるという選択肢も視野に入れて考えていきたいです。今はとにかく、あと2年かけて大好きなデータサイエンスをさらに深く突き詰めていけることが楽しみで仕方ありません。

※この記事の内容は、2022年2月時点のものです

上智大学 Sophia University