世界屈指の指揮者レナード・スラットキン氏が来校

上智大学管弦楽団を12月定期演奏会に向けて特別指導
現在はデトロイト交響楽団などの音楽監督を務めるスラットキン氏

11月16日世界的に有名な指揮者レナード・スラットキン氏が、本学の学生オーケストラ、上智大学管弦楽団の特別指導のために来校しました。同楽団の指揮者である金山隆夫氏がセントルイス交響楽団で3年間スラットキン氏の指導を受けられ、それ以降長年にわたり親交を重ねてきたご縁が今回の来校に結び付きました。

スラットキン氏はNHK交響楽団の演奏のため来日。そのリハーサルの後に本学11号館7階教室の練習場所を訪れ、2時間もの間、惜しみなく指導してくださいました。練習曲は12月の定期演奏会の曲目からラフマニノフの交響曲第2番。練習に参加した100人余りの部員が、指揮棒を振るスラットキン氏の指先や発する言葉によって見事に統率され、演奏により磨きがかかっていきました。

練習の最後に、スラットキン氏は「楽譜という言語に命を吹き込むことが、音楽をつくる私たちの仕事です」と音楽と真剣に向き合う部員たちへ印象的なメッセージをおくりました。この他にも、若者たちが一緒に音楽つくることの素晴らしさや音楽への愛と尊敬の大切さを伝え、人生を楽しみ、音楽と自分の個性を生かして、世界をより良い場所にしていってほしいと若き部員たちへ語りかけました。部員たちはスラットキン氏の演奏指導やメッセージを糧に、12月26日の定期演奏会に向け練習に一層励んでいきます。

スラットキン氏の指導の様子は、指導を受けた2人の部員の感想からご覧ください。
◆平山柊一郎さん(法学部地球環境法学科3年)/ヴァイオリン(Vn)パート、インスペクター)
スラットキン氏のタクトに応える楽団員たち

レッスンが始まってからすぐにスラットキン先生の音楽に誘い込まれました。こちらから「先生の音楽に近づかなければ」と力む必要はありませんでした。
ラフマニノフの1楽章の冒頭で、先生の手の動きが自分自身を吸い込んでいき、それに抵抗は無く、むしろ、心地良さを感じていました。
小節を移動する僅かな、一瞬の変化に、先生の指先のリードが重なっていました。その指先に込められたメッセージは「こっちに来い」ではなく、「こちらにおいで」と優しく手を背中に添えて、押してくださるような合図でした。
先生は自ら「ここはこのように音を出して」と全面的に主張されることはなかったと思います。部員が抱いている、つくりだしている音楽を見極め、指揮棒が私達の音色に合わせてくださっていたと感じています。
演奏者(部員)のコンディション、会場(練習場所)の作りを踏まえた音楽づくりが展開されていた印象を抱きました。指揮者の合図をしっかり受け取るということを間近で勉強させていただいた、貴重な時間でした。

◆小山路佳さん(経済学部経済学科3年/ヴァイオリン(Vn)パート、コンサートミストレス)
楽譜とは言語だと語るスラットキン氏

日本語話者でない方から音楽の指導を受けるのは、私にとって初めての経験でした。だからこそ、音楽で会話をしている感覚をより強く味わえたような気がします。スラットキン先生の頭の中を知りたくて、指揮をする手はもちろんですが目をよく見ていました。
私と先生は言葉で完全な意思疎通をすることは難しいかもしれないけれど、音楽で繋がっている。こちらが表現したいことも、音楽で伝えられる。それはすごく楽しいことで、楽器をやっていてよかったと心から思いました。最後にいただいた「楽譜とは言語である」というお話ともリンクしました。
巨匠が来る、と知ったときこそ身構えましたが、当日は萎縮することもなくただ集中することができました。それは先生の温かいお人柄と、棒を構えた瞬間から私たちを惹きつけて離さない指揮のお力によるものだと思います。短い時間の中でも新しいアイディアを沢山いただき、早く次の練習がしたくなりました。まだ自分たちの音楽には色々な可能性があるのだと希望を抱いた、忘れられない2時間となりました。

上智大学 Sophia University