理工学部情報理工学科の荒井隆行教授が手がけた声道模型がエストニア国立博物館で展示

理工学部情報理工学科の荒井隆行教授は、音声コミュニケーションや音声の福祉工学など、人間が音声によって相互にコミュニケーションをとる際の音声生成過程、音声知覚過程の科学的研究やその工学応用、教育応用、福祉応用、臨床応用などに取り組んでいます。その研究活動の一環として、「声のしくみ」を説明する声道模型が、エストニア国立博物館に展示されています。

荒井教授(左)が手がけた模型

エストニア博物館では、同国の文化や歴史、自然を国内外に周知していくことをミッションに掲げ、さまざまな教育研究活動に取り組んでいます。世界で最も難しい言語のひとつとされるエストニア語の啓発活動にも力を入れており、音声学を専門とする荒井教授に音声模型の制作依頼が入りました。荒井教授は同博物館関係者 の音声を録音・分析し、エストニア語の9つの母音 を体感できる音声模型を開発しました。

体験展示には9つのふいごが設置されており、その上にそれぞれ、クラリネットのリードのような振動体と筒状の模型が連結されています。足でふいごを踏むと管を通して筒へと空気が送られ、筒の入り口にある振動体が振動し、それが「声の源(音源)」となります。その先につながれた筒の形状は母音によって違うのですが、それを目で確認しながら筒から出てくる音を聞くことができるようになっています。

荒井教授は、2018年 に国際的な団体である国際音声コミュニケーション学会(ISCA, International Speech Communication Association)より、世界各国から毎年2名ずつ選ばれるDistinguished Lecturerに選出されました。2年間の在任中、今までインドネシアでの講演活動をはじめ、国内外で教育研究活動に取り組んでいます。

荒井教授は「世界には様々な言語があり、民族のアイデンティティを形にするという側面でも私が長年取り組んできた『声道模型』の研究が活かされたことに新たな応用の可能性を感じています。Distinguished Lecturerとして各地を訪問し現地の方々と話をすることで、少数民族やその地域でのみ話されている少数言語がたくさんあることを改めて知りました。展示や講演を通じて、多くの方々に声の仕組みやその大切さについて学んでいただくとともに、言語とダイバーシティについても一緒に考えていきたい」と話しています。

写真提供:Arp Karm, Estonian National Museum


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