47都道府県の分析から、地域特性に応じた低炭素都市計画の重要性を提示

本研究の要点

  • 日本全国47都道府県を対象に、2005~2020年の都市形態と炭素排出量を分析
  • 「よりコンパクトならより低炭素」とは限らず、脱炭素効果は都市の規模や密度によって異なることを明らかに
  • 高密度都市圏と低密度地域では主要因が異なり、全国一律の高密度化には限界があることを示唆
  • 市街地面積約6万ha超で影響が急増

研究の概要

上智大学大学院地球環境学研究科博士後期課程のLei Li大学院生、Shujie Sun大学院生、同研究科の銭 学鵬教授を中心とする研究グループは、Xinjiang UniversityのZijie Pang氏、City University of Hong KongのLiang Dong教授、立命館アジア太平洋大学のJi Han教授らと共同で、日本の都市形態と炭素排出量の関係を全国規模で分析しました。

図1:研究対象地域(日本全国47都道府県を北部・東部・西部の3地域に区分)

研究グループが2025年に公表したISTNRの方法論を基盤として、2005年、2010年、2015年、2020年の衛星画像と、47都道府県のCO₂排出量・人口データを統合しました。

地理的加重回帰(GWR)、ランダムフォレスト(RF)、SHAPを組み合わせ、都市形態と排出量の関係にみられる地域差、非線形性、指標間の相互作用を分析しました。

その結果、東京・大阪などの高密度地域ではコンパクト性に関わる指標の影響が大きく、北海道などの低密度地域では形状の複雑さや分断化の影響が相対的に大きいことを示しました。都道府県単位の分析データでは、市街地面積が約6万ヘクタールを超えると予測排出量への影響が急速に強まりました。また、隣接市街地率55~70%、人口密度約4,000~7,000人/km²は、普遍的な計画上の最適値ではなく、排出抑制とより整合的な主要な非線形応答範囲として確認されました。

本研究は、「都市はコンパクトであるほど低炭素になる」とは限らないことを示しています。高密度都市では内部構造や公共交通の改善、低密度地域では市街地の過度な分散や分断化の抑制が重要であり、地域特性に応じた都市計画が必要です。本研究成果は、都市研究・都市政策分野の国際的な学術誌『Cities』Volume 171(2026年4月)に掲載されました。

論文および著者

媒体名

Cities(Volume 171, Article 106831)

論文名

Uncovering nonlinear threshold effects of urban morphology on carbon emissions: Toward optimal low-carbon urban spatial planning

論文掲載日

2026年4月

オンライン版URL

https://doi.org/10.1016/j.cities.2026.106831

著者(共著)

Lei Li, Shujie Sun, Zijie Pang, Liang Dong, Ji Han, Xuepeng Qian

研究の背景

図2:都市形態指標の炭素排出量への寄与を示すSHAP分析結果

本研究は、都市形態と炭素排出の複雑な関係をデータ駆動型手法で解明する一連の研究の一環です。研究グループは、統合時空間非線形回帰(ISTNR)の方法論を2025年に『Sustainable Cities and Society』(Volume 125, Article 106381)で公表し、同年5月の「2025 NEW環境展」では、「低炭素型都市空間計画の最適化に向けた新たな時空間非線形回帰モデル」として研究内容を紹介しました。本研究は、この基盤方法論を日本全国47都道府県の2005~2020年データへ展開したものです。

都市の空間構造は、移動距離、土地利用効率、エネルギー需要を通じて炭素排出量を左右します。コンパクトな都市は公共交通や短距離移動を促し得る一方、「よりコンパクトならより低炭素」とは限りません。従来の単一都市・単一スケール・線形モデルでは、複数指標の相互作用や地域ごとの転換点を十分に捉えられませんでした。

日本各地で少子高齢化や人口減少、都市縮小が進む中、コンパクトシティは都市サービスの維持や空間利用の効率化を図る上で、重要かつ有効な対応策の一つとなっています。本研究では、都市化が拡大型から内部再編型へ移行しつつある日本を対象に、衛星画像から市街地を抽出し、規模、密度、分断化、形状複雑性、集積性、連結性の6側面を示す指標を算出しました。

分析の結果、東日本の大都市圏では市街地規模と人口密度が特に重要である一方、西日本では市街地規模に加えて連結性関連指標の重要性が高まり、北日本では形状の複雑さや小規模な空間非効率の影響が相対的に大きいことが示されました。これらの地域差は、全国一律の高密度化には限界があることを示唆しています。

分析対象データでは、市街地面積が約6万ヘクタールを超えると予測排出量への影響が急速に強まり、集積度が高い領域でも増加傾向がみられました。人口密度約4,000~7,000人/km²、隣接市街地率55~70%は、排出抑制とより整合的な主要な非線形応答範囲でした。市街地面積と連結性がともに高い条件では、両者の相互作用によって予測排出量への影響がさらに増幅し、単一の数値を普遍的な政策閾値とせず、複数指標を連携して調整する必要性が示されました。

今後の展望

本研究は、都市を全国一律に高密度化したり、単一のモデル閾値を普遍的基準として扱ったりするのではなく、地域特性と複数の都市形態指標の応答範囲を踏まえて空間計画を設計する重要性を示しています。今後はISTNRを他国・他都市へ適用し、都道府県境を越える交通・物流や排出の波及を考慮した広域連携、公共交通、機能配置、緑地・生態系施策を組み合わせることで、実効性の高い低炭素都市計画への活用が期待されます。

助成情報

本研究は、科学技術振興機構(JST)SPRING(課題番号:JPMJSP2169)の支援を受けて実施されました。

本研究内容に関するお問合せ

上智大学大学院 地球環境学研究科

教授 銭 学鵬(qianxp@sophia.ac.jp)


報道関係のお問合せ先

上智学院広報グループ (sophiapr-co@sophia.ac.jp)

上智大学 Sophia University