私が走り続けるのは、寄り添いあう世界を作りたいから。

“私たち学生にも、今の社会を変える力はあるはずです”と語る国際教養学部4年の木村奈穂さん。国際機関で難民支援に携わるという目標に向け、アメリカの大学院進学を決めた彼女に、不公正な社会に立ち向かう勇気と自信を与えてくれた経験とは?

見過ごされがちな問題に目を向けたことで、情熱をもって学びたい分野を見つけた

私が上智大学の国際教養学部を選んだ理由には、高校時代、アメリカに1年間の交換留学をしたことが深く関係しています。生まれ育ちは日本ですが、海外で学ぶという経験をしたことで、もっと深く世界について学びたいという気持ちが芽生えました。入学当初はフォーカスしたい分野が自分の中でも曖昧でしたが、欧州政治、紛争解決、人間の安全保障といったトピックをカバーする入門科目を履修したことで自分の学びたいことが明確になり、最終的には人類学と社会学を主専攻、政治学を副専攻とすることを決めました。

入門科目の中で特に私の興味を掻き立てたのは、セクシュアリティやジェンダーに関する問題と、日本で苦境に置かれている難民の問題。日本では、このような問題が見過ごされがちで、マイノリティとよばれる人たちは社会の隅に追いやられてしまっています。授業の中では性的同意の重要性を議論する中で、時代遅れとも言えるジェンダー認識が日本の社会に深く根付いていることを学びました。そして、その認識が私たちの考え方や行動に影響を及ぼし、今日の不平等と不公正を生み出しているということを改めて実感しました。不平等や不公正の問題は、日本で新たな人生を歩みたいと願う難民の方々をはじめ、社会から疎外されてしまった人々の前に深刻で厳しい問題として立ちはだかっているのです。

平等で公正な社会を作るためにできることは、学生にもある

難民問題に焦点を当てた授業の一環で、日本にいる難民申請者と難民に関する調査を行ったときのことは、特に印象に残っています。拘留センターに収容されている難民申請者から、母国で受けた迫害のこと、日本に亡命を希望する理由、いつまで経っても難民認定が下りない苦悩を直接聞くことができたのは本当に貴重な経験でした。インタビュー後は、彼らの声を1人でも多くの人に届けるために、クラスメイトと協力して彼らの現状を発信する英語と日本語のバイリンガルサイトを立ち上げました。

インターンシップやボランティアの機会が多いのも、上智の魅力の1つではないでしょうか。私も自分の英語力を生かして、アフリカ開発銀行とブルキナファソ大使館という国際的な組織で働くことができました。これは将来のキャリアに直結する貴重な経験でしたし、既存の政治や社会の仕組みを批判的に見て、今の世界をよりよくするには、どのような変化が必要なのかを考えるきっかけになりました。

大学での学びは社会に直接繋がっているのだから、教室の中だけで考えていてはいけないという先生方の力強い言葉は、私の心に深く刻まれています。私たち学生にも、今の社会を変える力はあるんですよね。これは大きな励みになりました。また、理論と実践の両方を学んだことで、社会に蔓延する不公正な基準や思い込みにも、物事の本質を見極め論理的なアプローチで対峙する自信がついたと思います。

多くの人に支えられながら人格とスキルを磨き、憧れの大学院へ

国際教養学部には、それぞれの進路に応じて学生を手厚くサポートする体制が整っています。就職に関する相談をする学生が多い中、大学院への進学を目指していた私は、志望校の選択方法、出願に必要なスコアの取り方や説得力のあるエッセイの書き方など、進学に必要なありとあらゆる指導を受けたおかげで、これらに悩む時間が大幅に短縮されました。留学をサポートしてくださる部署を紹介してもらったことや、長期的なキャリアパスの設計を手伝ってもらったこともあります。いつもそばで私を見守り、新たな視点と教訓を授けてくれた先生方には感謝しかありません。

今日の私があるのは、先生方だけでなく多数の友人のおかげでもあります。キャンパスの外でも交流を持ち、4年間ともに切磋琢磨した友人たちからは、授業と同じくらい多くのことを学びました。上智では一人ひとりの意見が尊重されます。だからこそ自分の意見が素直に言えるし、相手の立場に立って考えられるようになる。その過程で自分が無意識のうちに持っていた偏見を捨て、相手の気持ちに寄り添い、受け入れることができる人間になれたような気がしています。

卒業後は第一志望だったアメリカの大学院に進むことが決まっています。論文執筆に求められるアカデミックライティングやプレゼンに必須なスピーチの力は学部の必修科目の授業の中で磨き上げることができました。また、進学にあたって提出が求められたエッセイは、授業でお世話になった先生から個別指導を受けて準備をしました。国際教養学部の先生方とクラスメイトの存在、そして実践的な授業はもちろん、一人ひとりをしっかりとサポートしてくださる体制がなければ、目標としていた大学院に合格することもなかったでしょう。将来は国際教養学部と大学院での学びを生かして国連で働き、ジェンダーを理由にした暴力の被害者となっている難民女性の支援活動に携わりたい。その夢に向かって、努力を重ねていくつもりです。

※この記事の内容は、2022年1月時点のものです

上智大学 Sophia University