11月26日、本学は、東ティモール民主共和国元大統領カイ・ララ・シャナナ・グスマン閣下に名誉博士号を授与しました。
グスマン閣下は、東ティモール独立運動の指導者として平和的解決を目指し初代大統領および首相を務め、その後も東ティモール再建国民会議党首として、同国の国内政治や外交に尽力。また、本学の設立母体であるイエズス会の教育活動に深く共感し、東ティモール政府および同国の聖イグナチオ学院(イエズス会が運営する学校で本学の海外指定校の一つ)と本学との更なる連携を深めていく上で重要な役割を担っています。
これらの功績は世界的に高く評価され、かつ本学の建学の精神と相通じることから、今回の授与となりました。
式典は福武慎太郎総合グローバル学部教授の司会のもと、曄道佳明学長の式辞、称号記授与、佐久間勤理事長の祝辞、グスマン閣下による記念講演と続きました。
グスマン閣下は講演の冒頭、「世界をよりよくするために献身的に働いた聖イグナチオ・デ・ロヨラの遺志を継ぐ上智大学から名誉博士号を授与されることに、身の引き締まる思いがする」と感謝の意を表しました。
講演ではまず第二次世界大戦後の時代について述べ、東ティモールに学校を設立し、若者たちによる占領者への抵抗闘争を支援したイエズス会の2人の神父を紹介。「闘争中は、安定、経済的・社会的福祉や発展をもたらす新世界秩序に期待し、それが闘争継続の支えだった。軍事的手段で敵を倒すことはできないことを知り、『抵抗することは勝利すること』がモットーとなった」と語りました。
続いて83年の停戦プロセス、91年のサンタクルスの大虐殺、92年の投獄などの経験を振り返りました。そして、99年の東ティモールの独立までには16年間待たなければならなかったと述べつつ、「東ティモールの独立は、国連と多国間主義が機能すること、紛争が交渉の場で解決できることを証明した」という、アントニオ・グテーレス国連事務総長の言葉を紹介しました。
さらに、9・11から現在のパンデミックや気候変動問題に言及し、新世界秩序が豊かな北と貧しい南との間に大きな格差をもたらし、脆弱な国は大国の戦場として利用されていると指摘。一方で、「多くの有能な若者がいる大学のような場でこそ変化を起こし始めることができる。学生は過去と現在の失敗から学び、より良い未来を築くことができる。明日の皆さんの実践こそが希望だ」と学生たちを鼓舞しました。
講演後、学生を代表して、今吉若菜さん(外ポ4)とモウジンホ・フレイタス・ジョバニア・ガレットさん(理機3)から花束が贈呈されました。ガレットさんは東ティモールから本学に留学している学生の一人。グスマン閣下からは、東ティモールを代表する工芸品の織物「タイス」がそれぞれに贈られました。
式典終了後は会場を移して、東ティモール出身の留学生や本学学生、他大学に在籍する学生も交えた懇談会を実施。和気藹々のうちに一連の行事を終了しました。
シャナナ・グスマン閣下の講演原稿(英文)は こちらからご覧いただけます。(254.10 KB)