看護は模倣ではなく、試行錯誤しながら自ら考えて実践する社会貢献

総合人間科学部看護学科
准教授
舩木 由香

基礎的な看護技術の研究に取り組む看護学科の舩木由香准教授。模倣ではなく自分で考えて実践する力を身につけ、「あなたのことが知りたい」という気持ちを持つことが大切と語ります。

私はもともと看護師でした。教員になったのは、高校の恩師が看護資格だけでなく教員免許も取得できる学校を勧めてくれたことがきっかけです。現在は、基礎看護学領域という基礎的な看護技術の研究をしています。

看護を学ぶ学生は、技術習得のために一生懸命看護技術の練習をしますが、いざ現場に行くとうまくいきません。学校と現場は違うので当然なのですが、私自身、「あんなに一生懸命練習したのになぜできないんだろう」と思ったのがこの研究を始めるきっかけでした。

そこで注目したのが、「人とうまくやっていく力」です。患者さんにもスタッフにも分からないところを聞くことができて、自ら打開する力を持っている学生の方がひょっとしたら看護技術の習得もうまくいくのではないか。そういうところからこの研究を始めました。

看護は相手の尊厳を守り、相手を尊重する気持ちが大切

学生にはなるべく自分で物事を考え、看護技術の習得に取り組むように指導しています。あえてデモンストレーションは行わず、試行錯誤しながら演習してもらいます。それは模倣ではなく、自分で考える力を身につけて欲しいからです。

基礎看護学領域では、2年生で初めて2週間の実習に行きます。実習には私も同行するのですが、1日の終わりに皆で集まり、どんなことをして、スタッフや患者さんからどのようなことを言われたかを話し合います。また、実習先の看護師からも話を聞いて、学生たちの現場での様子を把握するように努めています。

実習は患者さんに了解していただいた上で学生が看護しますが、難しいのはやはり病態が複雑な患者さんを受け持ったときです。患者さんの懐に踏み込む積極性は大事なのですが、むやみに踏み込んだら拒否されてしまうかもしれません。うまく踏み込めるのは、患者さんに寄り添って折り合いをつけることができる学生です。

患者さんと接するときに必要なのは、患者さんの尊厳を守り、尊重する気持ちです。「あなたのことが知りたい」という気持ちがあれば、相手にも伝わります。自分の方から壁を作ってしまうと、相手にもそれが伝わります。一歩踏み込める関係を築くのはとても難しいことですが、その方法は自分で考えるしかありません。

看護は自ら学び、考えて実践していく力が必要

看護を学ぶことは、社会への応用そのものと言っても過言ではありません。今、医療現場は目まぐるしく変わっています。技術の進歩も日々加速し、何ができるのかだけではなく、自分で学習していく力、自分で考えて実践していく力が非常に重要になります。ですから、授業では看護師役と患者役を設定し、患者役の学生に看護師役の看護の感想を聞いたり、「もうちょっとこうしたらいいかな」「ここはやっぱりこのほうが良かったよ」と、学生同士でフィードバックする機会を設けています。患者さんの立場になり感じることは、実施した援助を振り返る上でとても大切です。

実際、現場では授業で習得したことだけでは対応できない場面にたくさん出会います。その都度、患者さんと話し合い、必要な援助を判断する必要があります。分からないところは自分で考え、実際に看護しなければいけない点が、座学と実習の最大の違いであり、学生にとっては一番難しいことかもしれません。

もちろん、どのような看護をするにも根拠が必要です。看護の知識だけでなく、疾患に対する理解も必要です。患者さんの生活やそれまで大事にしてきたもの、そういったところもあわせて考え、最善の策を考えられる力を身につけて欲しいですね。

この一冊

『寡黙なる巨人』
(多田富雄/著 集英社)

ある日突然、脳梗塞で倒れ、半身不随になりながら懸命にリハビリを続け、文筆活動に復帰した著者の壮絶な闘病記です。障害を負った人の気持ちを理解するということはどういうことなのかを考えるのに役立つ本です。

舩木 由香

  • 総合人間科学部看護学科
    准教授

弘前大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程卒、放送大学大学院文化科学研究科修了。修士(学術)。上智大学総合人間科学部看護学科助教、関東学院大学看護学部講師を経て、2018年より現職。

看護学科

※この記事の内容は、2022年12月時点のものです

上智大学 Sophia University