ゴンサルベスAI ラボ:人間と共に働く、良心を持った人口知能の開発

理工学部情報理工学科
教授
ゴンサルベス タッド

理工学部のゴンサルベス タッド教授はAIとその関連技術を専門としており、教授が率いるゴンサルベスAI ラボは、AIの最先端研究やその応用に取り組んでいます。その主な研究分野をご紹介します。

1.屋内配達ロボット

私たちは、人間の介入なくナビゲーションと走行を行う自動運転車の延長として、廊下を迷うことなく通りながら近くのエレベーターを探し、さまざまな階に上がって荷物を届ける屋内配達ロボットを開発しています。その他にも、この技術を拡張させ、ドローンが屋内や混雑した環境下で障害物を避けながら飛べるように学習できるようにしています。この自律技術の核となるのが、効率的なディープラーニングアルゴリズムの開発です。

2.アートや音楽の生成

Stable Diffusionはテキストプロンプトから独自の画像を生成することができるAIです。ユーザーがこのプログラムを使うことによって、さらに画像に手を加えることができます。 AI音楽生成プログラムの場合は、ユーザーが入力したメロディーを学習し、さまざまな曲を作曲します。

3.言語分析

無料で利用可能な大規模言語モデル(LLM)を活用して、外国語を学んでいる学生のエラーパターンを抽出し、それに応じた学習問題を設計する言語モジュールを構築しています。

4.自然界からヒントを得たメタヒューリスティクスアルゴリズム

メタヒューリスティクス最適化アルゴリズムとは、自然現象や生物、特に社会的動物の行動から発想し、複雑な最適化問題や探索問題を解決しようとするものです。私たちの研究室では、これらのアルゴリズムをハイブリッド化して内部学習メカニズムで強化し、大規模なベンチマーク問題でテストしてから、現実社会の複雑な問題に取り組みます。

新しいアイデアを生み出す、遊び心と想像力

ゴンサルベスAI ラボには、心躍る新しいアイデアに満ちた、国内外の学生が数多く所属しています。ハードウェアの組み立てや長大なプログラムの作成など、学生たちは常に自身の研究に没頭しています。個人のテーマに取り組んでいる学生が多いものの、チームで取り組む学生もいます。週に1回、上級生がプログラミングの授業を行うことで、全員がプログラミングのスキルに磨きをかけ、ディープラーニングの最新フレームワークの知識を身に付けるようにしています。また、互いを啓発・奨励して意欲を高めるために、ミーティングやプレゼンテーション、ディスカッションも行っています。指針としている原則は、「実践学習」です。さらに、企業とのコラボレーションを行い、ディープラーニングプログラムの開発ならびに実用的なアプリケーションへの組み込みを行っています。

AI内部の良心の開発を目指して

人類は今、過去最大の技術的問題に直面しています。AIとその応用が普及するにつれ、私たちは知能を持ったマシンとともに生き、働くことを余儀なくされるでしょう。これらの機械が非常に重要な決断を下すこともあるでしょう。私たちの運命を機械の手にゆだねることは、どこまで安全なのでしょうか。もし機械がコントロールを失い、道を踏み外してしまったらどうなるのでしょう。

現在のAIアルゴリズムは、大量のデータを取り込み、時に説明不能で偏った予測を生み出す、いわば巨大な獣のようなものです。政府はそのために規制を作っていますがそれは外側からのコントロールにすぎません。私たちはこの獣の内側に倫理的良心を埋め込もうとしています。これら2つを合わせることによって、初めてこのAIという獣を飼いならすことができるのです。

私たちは人間の優れた智慧(sophia – 最上の叡智)を用いて、AIに人間と同じ倫理的価値観を学習させねばなりません。ゴンサルベスAI ラボの大きなビジョンは、知識、経験、共感を備えた人間の良心を模倣するAI内部の良心を開発することです。

この一冊

『Jonathan Livingston Seagull: a story, 1st ed.(かもめのジョナサン)』
(Richard Bach/著 Macmillan Publishers)

真の幸福と自由を見出すために、社会規範から離れることを渇望するかもめのジョナサンは、私たちの中にも存在していると思います。「目が教えてくれることを信じてはいけない。目に映るものは限界だけだ」というジョナサンの言葉は、今も私の原動力となっています。

ゴンサルベス タッド

  • 理工学部情報理工学科
    教授

上智大学大学院理工学研究科博士課程修了。工学博士。2005年より本学にて教鞭を取る。

情報理工学科

※この記事の内容は、2023年9月時点のものです

上智大学 Sophia University