データサイエンスで環境・健康の課題を解決する

地球環境学研究科地球環境学専攻
教授
安納 住子

環境衛生学、空間情報科学が専門である地球環境学研究科の安納住子教授は、機械学習や深層学習を用い、環境変化が人間に及ぼす影響について研究を行っています。感染症の流行予測や危機管理に活かせる研究とは?

私の専門は環境衛生学および空間情報科学です。環境の変化によって人はどのような影響を受けるのか、人が健康かつ安全・快適に過ごすためにはどのような環境が適しているか、などを明らかにするため、機械学習や深層学習の技術を駆使して、ビッグデータを分析する研究に取り組んでいます。また、これらの技術を使って環境・健康の課題を解決するグリーンAIにも力を入れています。

人間の開発行為による環境変化が感染症を引き起こす

現在取り組んでいるのは、感染症の流行予測や環境・健康問題に関する研究です。とくにデング熱については、台湾、アフリカと協力して研究を進めています。デング熱は、蚊が媒介するウイルス性の熱性・発疹性疾患で、流行には環境変化や気候変動が深く関係していると考えられています。無計画で急速な都市化、気温の上昇や降水量の増加などがデング熱の流行に関係しています。開発はメリットもありますが、こうしたデメリットもあります。

最先端技術を使って環境・健康問題を解決したい

こうした感染症は、衛生状態の悪い途上国ではより深刻です。新たな感染症はおそらく10年くらいしたらまた現れるでしょう。アフリカからは、環境・社会・経済的要因による人獣共通感染症の発生を予測する内容の研究依頼を受け、取り組んでいるところです。これまで、スリランカ、台湾から依頼され、共同研究を行ってきました。

研究は先ず現地に行ってデータを収集することから始めます。自分の目で見なければわからないことがたくさんあるので、フィールドワークは必須です。途上国での研究は大変ですが、最先端技術を使ってデータを分析し、まとめ、論文発表できたときは達成感があります。

過去に学生インターンとして従事していたNASAで、地球温暖化解決のため地球の軌道を変える方法を真剣に模索する研究者の姿を目にし、さすがNASAに勤めているだけあって常人ではないと思いました。奇抜な発想からブレイクスルーは起きるもの。私もそうした姿勢で研究を続けていきたいと思っています。

この一冊

『The Last Whole Earth Catalogue』
(Stewart Brand/編 Random House出版)

地球上で生きるために役立つツールや情報を幅広い分野に渡って紹介したカタログです。古い本ですが、今でも参考になる内容です。裏表紙に書かれた「Stay hungry. Stay foolish.」という言葉のように、私もそうありたいと思います。

安納 住子

  • 地球環境学研究科地球環境学専攻
    教授

ニューヨーク医科大学大学院修了。修士(公衆衛生学)。神戸大学大学院修了。博士(医学)。芝浦工業大学で専任講師、准教授を経て、2019年より現職。

地球環境学研究科

※この記事の内容は、2022年9月時点のものです

上智大学 Sophia University