震災に翻弄された就職活動。

ドイツ語学科を選んだのは、ドイツの鉄道や自動車、クラシック音楽が好きだったから。3年生の時には、念願だった交換留学に行くことができました。留学中は鉄道に1日中乗ったり、LCCを駆使してヨーロッパの周辺国に飛んだり、楽しく過ごしたのはいい思い出です。小澤征爾さんが、ベルリンフィルで指揮棒を振られたコンサートを生で聴けたことも忘れられませんね。

　またアルバイトも、大学時代の記憶に残る大きな経験です。新幹線や特急列車で車内販売をしていたのですが、単純に列車に乗れるということがすごく楽しかったし、お客様が車内でくつろがれていたり、旅を満喫されている姿を見るとうれしかったですね。

　そういった経緯から「人の移動を快適にしたい」というのが就職の目標になりました。しかし、ちょうど就職活動のタイミングと東日本大震災とが重なり、エントリーシートを出した企業からは「今年は採用を見合わせます」という連絡が来ることも多く、思うように就活は進みませんでした。最終的には内定をいただいた食品会社への入社を決めました。駅弁という形で人の移動を支えることができるのでは、と思ったからです。

　しかし、納得のいく就活ができなかったという思いもあり、転職のためにキャリアスクールへ行くことに。そこで「自分は本当は何がしたいのか」を本気で考え、「人の移動を快適にしたい」という思いを再認識したのです。

思いを貫き航空会社へ転職。

日本航空の採用試験に何度か挑戦し、2015年に合格。入社後は、羽田空港のグランドスタッフ、国際路線事業部を経験し、さらに経団連に社外出向。2022年の4月に日本航空に戻ってきました。現在は日本航空の経営企画本部で「中期経営計画」策定に関わる業務にあたっています。これまで会社の方針や考え方というものは、上からおりてくるものというイメージがありました。しかし現在は、会社の方向性を決める会議に出席し、経営陣が決断する瞬間に立ち合うこともあるので、やりがいと同時に重大な責任も感じながら働いています。

　また、有志による社内ベンチャーチーム※でも活動しています。その取り組みの中で、チャーター便でプロのオーケストラの方に演奏していただく「JAL音楽チャーターフライト」を企画し実現しました。「コロナ禍で苦しい時こそ、飛行機と音楽を掛け合わせ新しい可能性に挑戦し、世の中を元気づけたい」という発想です。機内は音楽会場として決して良い環境とは言えませんが、お客様からは「飛んでいる飛行機の中で生のバイオリンの音を聞く状況が面白かった、感動した」といった感想をいただき、本当にうれしかったです。会社から与えられた仕事ではなく、好きなものを取り入れて、自ら生み出した仕事を成し遂げたという思いから、実際に機内で演奏を聴いた時は感動で涙が出そうになりました。

　自分の失敗経験を含めて後輩の皆さんにアドバイスをするなら、就活時にあまり周りを気にし過ぎないこと。誰が一次通過したとか、どこに受かったとか、そういう情報に振り回されても良いことは何もありません。私の場合はとにかく焦ってしまい、手当たり次第にエントリーシートを出しては時間を無駄にしました。転職活動中にスクールのコーチから言われ、今でも強烈に覚えている言葉は「自分のやりたいことは自分しか分からない」です。とにかく自分自身と向き合う。生まれた環境や家族との関わり、小学校、中学校、高校、大学で、どう物事を考え、どう友達と付き合って、どう感じたのかを全部棚卸しする。そうして自分の嫌な部分までも観察できると、何か見えてくるものがきっとあるし、大切な物にも気付けるはずです。結局、自分のやりたいことは自分にしか分からないのですから。

※「W-PIT（Wakuwaku-Platform Innovation Team）」。個人のWakuwaku（潜在的意志）を起点に、異業種パートナーとの共創を通じてそれを実現していく、JAL社内のベンチャーチーム。

〈オフィシャルサイト〉 https://wpit-official.themedia.jp/

【15号館】
SDGsの達成と脱炭素社会の実現に貢献するため木造で建てられた最も新しい校舎。建物を覆う格子は東京都産の木材で地産地消に貢献、壁面緑化や屋上緑化も採用しています。

※この記事の内容は、2022年10月時点のものです。