思いにまっすぐ歩んだ先に、新たな目標が見えてくる
網倉先生が“今までのゼミ生の中でも印象深い”と語った、OGの閔 青和さんと対談。ゼミやキャリアのこと、学び続ける大切さなど、未来を切り拓くヒントが詰まっています。
新卒なのに、中途採用枠で入社したんです。(閔)
網倉 久しぶりですね! お元気でしたか? 今日は閔さんがゼミ選考面接の時に提出してくれた書類を、秘密兵器として持ってきましたよ。
閔 えっ! まだ残っているんですね!? 志望動機は……“私自身、日頃からなぜこの商品や歌手が売れるのかと考えるのがクセで、網倉先生の授業を楽しいと感じ、そのようなケーススタディーができる網倉ゼミしか選択肢はありませんでした。”
網倉 今読むと僕をヨイショした文章だね。自己認識は間違っていないと思うよ。閔さんは、目標が決まって道筋が分かると、努力を続けられる人。
閔 シンプルにやりたいことだけチャレンジしたいので。就職活動も同じで、広告会社と出版社しか受けませんでしたからね。就職氷河期と呼ばれた2001年卒で、業界を絞っていたから全然決まらず……。そんな時に、広告会社の中途採用の募集を見つけ、卒論を添えて送ってみたんです。
網倉 私を採用しないと、御社は損をするぐらいの売り込みをしたんでしょ? 学生に任せておけばみんな志望先を見つけてくるから、僕はあまり閔さんの就職活動の相談にのってなかったよね? 時々、ゼミで活動の状況を聞いて、頑張ってね! ぐらいの感じだったと思う。
閔 そうしたら、卒論を読んだ志望企業の当時のマーケティング局長が気に入ってくれて、新卒なのに中途枠での採用が決まったんです。幸い4月入社だったので、基礎的な研修だけは参加できたものの、いきなり実務でしたね。例えば、商品を作るという場合はあらゆるリサーチが必要なので、そのための材料集めからスタートしたんです。
網倉 そういえば入社してすぐ、僕に電話してこなかったっけ? 「中途だから早々に配属されたけど、何をしていいか分からなくて」って。
閔 ちょうどその頃、研修でメディア局の雑誌部門に行き、月刊情報誌の編集タイアップ広告を先輩と一緒に担当させてもらった時、雑誌の面白さを味わったんです。当時はまだ20代前半で、何でも挑戦してみようという感じでした。出版社への思いが強くなり、1年半ほどでウエディング雑誌の出版社に転職したんです。
網倉 さっき触れた秘密兵器の書類に、卒業したら何をやりたいか書いてもらったんだよね。2年生のゼミ選考の時だけど、閔さんはメディアの制作をやりたいと答えていたから。その頃にもう決まっていたんだね。
閔 ただ、実際に働いてみると、もともと自分がイメージしていた仕事の内容とかなりギャップを感じてしまい……。2年ほど在籍したものの、楽しさは感じられませんでした。以前の仕事のほうが良かったという話をしたのは、前職の上司と会った時。派遣契約を条件にマーケティング局に戻れるようにすると言ってもらえて、復帰を決めたんです。
大切なのは、実務経験を積むことと学ぶ機会を持つこと。(網倉)
網倉 閔さんが広告会社に戻ってからだと思うけど、働く先輩の話を聞くという大学の企画に参加してもらったよね。「スーパー派遣社員として、会社のデータベースのことは何でも知っています」と話してくれた時は感心したよ。
閔 新入社員の時にたたき込まれて、重宝がられていましたから。数々の仕事を担い、気づいたら12年もいたんです。ただ、そろそろ正社員として働ける会社に転職したいと思い、現在のJPメディアダイレクトに入社しました。マーケティングに長く関わってきて、もっと統計学的に根拠のあるデータ分析ができるようになりたいとも考えていたんですよね。
網倉 学生時代はデータに興味を示さなかったけど、データを使って統計分析する大切さを分かってもらえたんだね。
閔 今はデータ分析を実務で携わらせてもらい、データサイエンスの必要性を感じています。実際に手を動かすようになると、解釈の仕方が分からないとか、いろいろな壁がありまして。データを活用して新しい価値を生み出す業務を、と採用されましたが、独学なので分からないことも多く、体系的に学びたいと思っていたら……。
網倉 上智の大学院で応用データサイエンス学位プログラムをやります、という広告が出ていたんだ。
閔 ビジネスに役立つデータ活用ということで、すぐに検索しちゃいました。現職の上司と面談した際、母校の大学院に通いたいと伝えたら、後押ししてくれました。一定の条件さえクリアしていれば筆記試験が免除されるとのことでしたので、ビジネス統計の資格も慌てて取得したんですよ。そんな経緯で入学したので、はじめのうちは授業についていくだけで精一杯でした。
網倉 理工学と経済学の2つの領域をまたぐところが、今回の領域横断的な学位プログラムの特徴なんだよね。統計分析の最先端も学べるし、もう一方で実務応用も学べるという。
閔 データサイエンスは、ビジネス力、情報処理能力、統計知識といったものが絡み合った学問なので、どこに力を入れるかで、選択科目も違ってきますよね。私は人の行動や心理に興味があるので、マーケティングの授業を厚く取っていこうと思っているんです。マーケティング調査したものに対するエビデンスとして、データを活用していければと考えています。
網倉 物事を決定する時、今までは経験や勘に頼るところがあったよね。今はデータがたくさん取れるけど、意味のある解釈が出せないと単に数字が並んでいるだけ。それを学ぶために大切なのは、実務経験を積むことと、別の環境で学ぶ機会を持つことだと思う。学び続けることは、これから大切になるだろうね。
人生は初めてのことばかり。やりたいことをやってほしい。(網倉)
閔 学生時代は何が自分に向いているのか見つからない人がいるし、もしやりたい職に就けても向いていなかったということもあるんですよね。でもそこで終わりではなく、やりたいことが新たに見つかれば、そちらに行けばいいと思うんです。
網倉 みんな失敗してはいけないと思い込んでいる。最初の就職で大企業に行かないと、転職できないようなことを言う学生も。楽しそうだからやってみるぐらいの気持ちでキャリアを始めても、いくらでも修正できる。人生は初めてのことばかりだから、やりたいことをやってほしいね。
閔 世の中がすごいスピードで変化しているので、自分もどんどん変化していかないといけないんです。たぶん、その過程に自身の成長があると思っています。
網倉 そうですよ。学生時代、閔さんはExcel*があんなに苦手だったのに、今はここで勉強していますからね。
閔 就職のために勉強するのではなく、「こんなことをしました。こんなことが好きです」と、自分の「好き」を伝えられる人が魅力的だと思います。楽しく過ごしながら、就職活動も学生生活も送ってほしいです。楽しんだもの勝ちだから。
*Excelは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
※この記事の内容は、2023年10月時点のものです。