これまでの日本は、高い生産性を誇る製造業を背景に、経常収支黒字を重ねる世界首位の対外純資産国で、1人当たりGDPや家計貯蓄の水準からみても豊かな国とされてきました。しかし、近年は、先進国で最速の少子高齢化と人口減少などで潜在成長率が低下し、効果的なコロナ禍での経済復興策も議論されています。今までの日本的雇用システムや大胆な金融政策を継続していくべきか、デジタルエコノミーやグリーン社会の実現に日本の企業や政府はどう対応していくべきか、企業と政府の分析と対応が求められています。
経済学の役割は、こうした経済問題に対して、経済合理的な経済主体(企業や家計)を想定してその要因や動向を分析し、解決することです。またその合理性の想定の再検討も先進的な研究対象となります。たとえば、ミクロ経済学は、市場メカニズムの機能と限界を考え、市場競争と企業の戦略、政府の政策のあり方を分析します。マクロ経済学は、経済成長と景気循環の要因と金融・財政政策対応の方法と効果を考えます。これら理論を、現実のデータで実証し、経済予測に結びつける分析手法が計量経済学です。これらの理解は、企業や政府を問わず、的確な経済分析に基づいた政策の立案や戦略の構築に活かせます。
カリキュラムの特徴
博士前期課程では、体系化された経済学の理論や分析手法を学ぶことで、国内外の調査研究機関、金融機関、シンクタンク、政府部門などで、経済分析や予測、コンサルティング、資産運用や資金調達の業務に役立てることを目指します。博士後期課程では、学術研究機関などで活躍できる独立した研究者の育成を目指し、3年間での博士学位取得を積極的に支援します。
授与学位
- 博士前期課程:修士(経済学)
- 博士後期課程:博士(経済学)
取得可能な教員免許・免許教科
- 高等学校専修(公民・商業)
※教員免許が取得できる専攻は、博士前期課程に限ります。また、1種免許状を取得済、あるいは1種免許状取得要件を満たしている教科のみ取得可能で、必ずしも全教科取得できるわけではありません。
経済学専攻の特色
体系化されたカリキュラム
現代の経済学の共通基盤といえるミクロ経済学・マクロ経済学・計量経済学を、1年次の春学期から必修科目(コア科目)として着実に学びます。この理論体系をもとに、各自の研究課題に応じて選択できる応用経済学の科目で、より高度で専門的な知識に発展させます。
少人数で対話的な論文演習
最近の研究動向を踏まえた修士論文を完成させるために、少人数で対話的な指導が指導教員から受けられる論文演習を必修としています。研究課題ごとに高度な分析手法やデータなどの最新のノウハウが提供され、セミナーなどを通じてプレゼンテーション能力も養います。
標準化された経済学試験での選抜
博士前期課程の入試では、日本経済学教育協会のERE(経済学検定試験)の評価によって専門科目の筆記試験を免除しています。学界で標準的な経済学の理解を重視し、志願者の知識と筆記試験の出題内容とのミスマッチがないような、選ばれる大学院を目指しています。
修了生の最近の主な研究テーマ
- 鉄道不正乗車の実態分析 ― ICカード降車タッチデータに基づく実証分析 ―
- 投資家センチメントを考慮した複数因子モデルの推定と実証研究
- 日本企業の国際会計基準導入の動機と導入効果に関する実証研究
- 状態数拡張したマルコフスイッチングモデルによるブルベア相場の分析
- 金融リテラシーと中小企業の電子決済導入
- アジアにおける対内直接投資が輸出の高度化に及ぼす影響
教育の方針
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博士前期課程
本課程では、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 経済を、理論的、実証的、歴史的に分析する力
- 現代社会が直面する事象や問題について経済学の知識を活用し論理的に思考する力
- データ処理・分析を通じてデータに潜む情報を表現する力
- 研究を適切に実行し、その成果を学術論文として完成させる力
博士後期課程
本課程では、学生が修了時に身につけるべき能力や知識を次のように定めています。修了要件を満たし論文審査に合格すれば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 自ら選んだ専攻分野で専門家としての能力を深め、高める能力
- 学術性の高い研究課題を設定し、経済学の適切な枠組みを用いて考察・分析を行う力
- 自立した研究者として独自の研究を遂行し、研究で得た知見や洞察を用いて世界や社会の発展に貢献する力
- 研究を適切に実行し、その成果を学術論文として完成させ、発信する力
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博士前期課程
本課程では、ディプロマ・ポリシーに沿って、1年次のコースワークで経済学の理論や分析手法を修得し、2年次では指導・審査グループの助言のもとでテーマを設定し学位論文を作成するよう、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。
- 1年次コースワークでは、基礎科目である「ミクロ経済学特講Ⅰ」「マクロ経済学特講Ⅰ」「計量経済学特講Ⅰ」および、「論文演習Ⅰ(基礎)」を必修科目とし、選択科目では各自の研究関心に応じて応用経済学の科目を開設する。
- 「ミクロ経済学特講Ⅰ」「マクロ経済学特講Ⅰ」では、経済学の理論や分析手法を学び、「計量経済学特講Ⅰ」では、数量的分析手法を修得する。また、「論文演習Ⅰ(基礎)」や「選択科目」では、最新の研究動向を参考にしながら、現代社会が直面する事象や課題をどのような経済学的視点から分析できるのかを学ばせる。
- 2年次では、論文テーマの設定や考察・分析枠組みの選択等について、指導教員を中心とした3人の教員から構成される審査・指導グループにより学位論文作成を指導する。
- 学位論文審査では、研究課題を経済学の適切な枠組みにより分析し、学術的な位置づけを明確にしながら論理的に記述できているかを問う。
博士後期課程
本課程では、ディプロマ・ポリシーの達成を目的として、コースワークで経済学の高度な理論や分析手法を修得し、「研究指導」により博士論文作成の指導を受け、学内セミナーでの研究報告により学位論文の完成度を高めるよう、以下の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。
- 「研究指導」を必修科目とし、博士論文のテーマ設定や分析手法の選択等について指導を行う。
- コースワークとして理論経済学、応用経済学、経済統計の分野の科目を選択必修科目として開講する。
- 学内セミナーで研究報告し、指導教員をはじめ他の教員からも助言を受け、論文の完成度を高める。
- 研究成果の一部が査読付き専門雑誌へ掲載されるように指導を行う。
- 学位論文審査では、独自の学術的価値を有するか、自立した研究者として研究遂行能力があるか等を問う。
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博士前期課程
本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。
- 社会の事象や問題について、経済学の視点から考察・分析することに関心をもっている学生
- ミクロ経済学、マクロ経済学、統計学について学部卒業レベルの基本的な知識を修得している学生
- 学部卒業レベルの基礎的な英語力を有している学生
- 社会人としての経験を通じて経済の事象や問題への深い関心をもち、経済学の分析手法を修得してキャリア形成等に役立てる意欲を持つ学生
博士後期課程
本課程は、次のような資質を持つ学生を求めています。
- 経済学の研究・教育や経済学を応用した調査・予測等の業務に従事する意欲を持つ学生
- 博士前期課程レベルの経済学の学問知識を修得している学生
教員一覧
Matthias SCHLEGL 准教授
研究分野 | [ Macroeconomics,International finance ]Theoretical analysis of the dynamics of inequality. |
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長江 亮 特任助教
研究分野 | [ 障害と経済の研究 ] 障害者の生活・就労に関する研究、障害者施策の政策評価研究、社会的弱者の就労に関する研究、利他性や向社会的行動をもたらすナッジに関する研究 |
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