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ニュース 第3回 「人間の安全保障と平和構築」 2019年6月11日 実施報告

第3回 「人間の安全保障と平和構築」 2019年6月11日 
実施報告

2019年6月11日(火)午後7時05分から、上智大学グローバル教育センターが主催する連続セミナー「人間の安全保障と平和構築」の2019年度の第3回目が、上智大学四谷キャンパス2号館17階の国際会議場で開催されました。

この連続セミナーは、人間の安全保障と平和構築に関し、日本を代表する専門家や政策責任者を講師としてお迎えし、学生や市民、外交官やNGO職員、国連職員、政府職員、マスコミや企業など、多様な分野から集まった人たちが、共にグローバルな課題について議論を深め、解決策を探っていくことを目的にしています。

今年3回目のセミナーでは、国際協力機構(JICA)広報室長の天田聖氏が、「JICAの平和構築支援と広報戦略 ~国際機関との連携も視野に~」をテーマに講演しました。

サリ・アガスティン教授

会の冒頭、上智学院総務担当理事を務める総合グローバル学部のサリ・アガスティン教授が挨拶をしました。そこで、自らの研究テーマである「武力紛争」の分析においても、人間の安全保障について考えることは重要であり、大学院生時代に人間の安全保障に注目した論文を書いていること。そして、人間の安全保障について、この連続セミナーのような形で、色々な角度から考察していくことは、上智大学の使命にも沿い、非常に重要なことだと考えていると述べました。

天田室長

講演では、天田氏がJICAの平和構築支援活動について、包括的にお話し下さいました。

JICAでは「信頼で世界をつなぐ」というビジョンの下、それを実現するために「人間の安全保障」と「質の高い成長」を実現することを、ミッションとして掲げています。天田氏は、紛争やテロ増加に伴い難民・国内避難民が増えていること、その難民受け入れ国の85%は途上国であること、難民問題の長期化、など世界の現状を語りました。そしてJICAは、「開発協力」という分野から平和構築支援を行っています。言い換えれば、JICAは政治分野などには直接関与しないこともあり、JICA単独で全ての問題を解決することは難しい面があります。だからこそ、国際機関との連携は欠かせないものであり、軍事・外交・援助を有機的に機能させることが極めて重要になります。JICAは各専門分野を繋ぐ架け橋のような役割も積極的に担いながら、JICA自身が得意とする「開発協力」という立場から、紛争が再発しない安定した国家づくり支援に力を入れています。

例えばルワンダでは、紛争当事者の社会復帰や犠牲者支援のための技能訓練・就労支援が、コンゴ民主共和国・コートジボワール・マリなどでは国家警察能力強化支援が実施されています。フィリピンのミンダナオにおいては、日本に対する信頼をベースに早期の段階から、日本独自の支援を実施しました。また、カンボジアでの地雷除去支援の経験をコロンビアやラオスなどで展開することも行われています。難民を受け入れるホスト国・ホストコミュニティ地域への支援や、海外のフィールドだけでなく、UNHCRと連携してシリア人留学生の受け入れ(シリア平和への架け橋・人材育成プログラム)も実施しています。

また講演の後半では、天田氏が務めている広報活動についてお話ししてくださいました。

広報(PR: Public Relations)とは、「組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互の利益をもたらす関係を構築し、維持するマネジメント機能である」と、アメリカの教科書『体系パブリック・リレーションズ』の定義を引用し、広報の目的を解説しました。その上で、世界・日本の動向といった世の中が何を求めているかをよく把握して広報活動を行うことが大切だと強調されました。JICAでは広報戦略に基づいて、持続可能な開発目標(SDGs)の「Goal 16:平和と公正をすべての人に」を達成するための支援や、紛争や国家間の軋轢に繋がりかねない自然災害の激化に対する自然災害対策の支援、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えたスポーツ分野での支援、また、発展途上国と日本の地方自治体との連携強化や、中小企業の海外展開支援など、世界と日本をつなぐ多様な活動を実施しています。

200人を超える参加者

この講演を受けて、コメンテーターであるアガスティン教授は、学生時代にODAに批判的な立場の教授の下で学んだ経験も踏まえて、JICAも様々な批判を受けながら、それを改善してきた歴史があり、現在のJICAの活動は高く評価されるとして、今後のJICAへの期待を語りました。また、アマルティア・センの言葉を用いて、国家・文化・経済的コミュニティなどにからくる「アイデンティティ」の過剰な強調が、暴力に繋がり、紛争に発展すると述べました。そして、この「アイデンティティ政治」を解消していくための支援の必要性を指摘しました。

東教授 天田室長 アガスティン教授

続けて質疑応答が行われ、大学生だけでなく高校生や社会人など外部の方々からも非常に多くの質問が、天田氏に寄せられました。平和構築支援に関しては、自然破壊などで問題視されている中国のODAについて、初めて訪れる国でどのように信頼関係を構築していくのか、どのような姿勢で開発援助に携わるべきか、などの問いが投げかけられました。広報については、海外青年協力隊などボランティアの広報活動に何が必要か、海外のことにあまり関心がない人々にもJICAの活動を知ってもらうために、JICAではどのような取組を行なっているのか、などの質問が出されました。天田氏は20近くの質問の一つ一つに、丁寧に答えて下さいました。その中で天田氏は、これから将来を担う若者こそが平和構築の問題にジブンゴトとしてしっかり向き合って欲しいと力説しました。

会の最後に、この連続セミナーの主催者で司会を務める上智大学グローバル教育センターの東大作教授が、発展途上国に対して、上から目線ではなく、パートナーとして接しているJICAの姿勢が、世界の多くの場所で日本の信頼に繋がっていると述べました。そしてその信頼を活かして、世界各地の紛争当事者間の対話を促進する役割、「グローバル・ファシリテーターの」役割を日本は果たせるはずと主張しました。

会場には、200人を超える方が詰めかけ、最後まで熱く議論が交わされ、非常に活気に満ちたセミナーとなりました。

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