他者理解=自己理解。インドネシアとの出会いが変えた私の未来。

「国際寮での出会いがなければ、今の自分の研究課題には到達しなかった」と語る、兵庫県出身で大学院グローバルスタディーズ研究科の織田悠雅さん。学部生の頃から国際寮に住む彼が、寮生活の中で得た経験や将来の目標とは?
興味の追求も未知の分野の探求も、上智なら両立できる
私は高校時代、国際政治学や地域研究に興味がありました。上智大学を選んだ理由も、学びたかった分野や専攻が豊富に揃っていること、そして全学部が一つのキャンパスに集う総合大学であることが決め手となりました。上智なら、さまざまな分野の学問に触れることができるので、自分の可能性をさらに広げられるのではと思ったのです。実際、学部生の頃は他学部の授業を積極的に履修しましたが、自分の興味関心を深めるだけでなく、幅広い知識を得ることができたと感じています。
兵庫県宝塚市出身の私にとって、東京の大学への進学には少し勇気が必要でしたが、自分自身の成長につながる選択だったと思っています。関西と比較して、東京の方が日本全国、世界各国から訪れる人が多い。自分とは全く異なる価値観や考え方を持つ人たちと出会う機会が増え、自分の視野が大きく広がりました。
生まれ育った土地を離れ、新たな環境で頑張るのであれば、さらに自分が成長できる環境を選びたいという気持ちもありました。そこで見つけたのが国際寮。英語でコミュニケーションを取れるようになりたい、外国人の友人を作りたいという思いで入寮しましたが、入寮前に自分が想像していた以上の経験を積むことができました。
他者を知ることで、自分自身についても理解を深められる

英語を使う生活に憧れがあって国際寮に入寮したものの、入寮後に苦労したのは当然ながら英語でのコミュニケーション。日常生活も寮生同士のミーティングも基本は全て英語なので、自分の考えや気持ちを的確に表現することの難しさを痛感しました。思った通りに伝えることができずに歯がゆい思いをしたこともありますが、今となってはその経験があるからこそ、語学力だけでなく、苦しくてもあきらめない力も養うことができました。
大変なこともあった反面、楽しい思い出も数えきれないほどあります。寮生活で好きなのは、授業が終わって寮に帰ってからの仲間との時間。出身や年齢も異なる人たちと夜にいろいろな話をするのが、私にとってリラックスできる時間でもあり、ワクワクする時間でもあります。これは一人暮らしでは経験できない、寮生活の醍醐味ですね。
このような環境で、私が改めて感じたのは他者理解の重要性。私は寮生活の経験から、自分とは違う他者との出会いを通じてこそ、自分が考えていることや自分が当たり前だと思っていることが見えてくると考えています。上智大学のモットーとして「他者のために、他者とともに」という言葉がありますが、相手のことを知らないと、何が相手のためになるかがわからない。自分のことを知らないと、相手のために自分には何ができるかもわからない。だからこそ、多様なバックグラウンドを持つ人との出会いや、自分と違う経験や知識、信条を持つ人を理解しようと努める中で、自分は何を大切にしているのか、どうしたいのかを考える機会を得られるのは意義深いことだと思っています。
国際寮の魅力は一言では語り尽くせないのですが、一生の付き合いになる深い友人関係を築くことができるのは最大の魅力ではないでしょうか。また、世界中の国や地域から留学生が来ていることもあり、日本にいながらにして異文化を深く知ることができるのも他にはない魅力だと思っています。
国際寮での出会いがインドネシア研究に繋がった
学部時代は総合グローバル学部でインドネシアの政治について研究しました。大学院に進学してからは、地域研究専攻でインドネシアの宗教、特に多数派の宗教と少数派の宗教間の関係に焦点を当てた研究に取り組んでいます。
インドネシアを研究しようと思ったきっかけは、寮で出会ったインドネシア出身の留学生でした。彼は私が初めて出会った寮生ですが、この出会いをきっかけに、寮内のインドネシアコミュニティに出入りするようになり、交流を深める中で、親友もできました。インドネシアの人たちの人の穏やかな人柄に惹かれて、彼らのインドネシアという国にも興味を持つようになったんです。
その中でも特に印象深いのが、2019年のインドネシア大統領選挙。インドネシア国内でも多くの差別や対立があることを知りましたし、何より自分と年齢がそこまで変わらない学生が母国の政治について熱く議論する姿に驚きました。日本にいながらインドネシアの内側を知れたこと、そしてインドネシアの人たちの穏やかさと彼らの社会の中にある差別や対立にギャップがあるように思えて、強い好奇心が自分の中で芽生え、インドネシアを研究しようと思ったんです。当時、私は学部2年生。寮での出会いがなければ、大学院でインドネシアを研究する今の私には至っていないと思います。
宗教に注目する背景には、私自身中高カトリック系の学校で学んできたこと、上智大学で多くの神父様やカトリック信者の方々と出会う中で、カトリックという宗教への興味が深まったことがあります。今研究しているのもインドネシアのカトリック教会についてですが、インドネシアでは宗教的マイノリティとされるカトリックの社会での位置づけや、教会コミュニティの在り方を中心に研究しています。
宗教というと、日本では一部の人しか関係のないことだと感じられることが多いと思いますが、インドネシアでは毎日の生活に深く根づいた習慣的な要素もあります。宗教が実践される場において、どのような社会的対立があるのか、対立する人々が協働できることはあるのか、対立構造の中の人々の関係性はどのようになっているのかを研究することに意味があるのではないかと考えるようになりました。
私はまだ研究を始めたばかりですが、学問の根本的なところには他者を理解し、自分を理解するという側面があると考えています。そのため、今後はインドネシアの研究に加えて、私の住んでいる日本の社会の常識や「当たり前」可視化して問い直し、日本社会で生じている課題解決に必要な別角度からの視点を提供できるよう研究に取り組んでいけたらと考えています。
※この記事の内容は、2023年7月時点のものです