11月7日、特別ゲストとして幼魚水族館館長の鈴木香里武氏を招いたサステナブルシーフードイベントが四谷キャンパスメインストリートで開催されました。
あわせて、一日限定で環境に配慮したブルーシーフード(※)をメインとした料理を提供する「FISH A WEEK 週一魚」が出店。鈴木氏の「持続可能な食事を~あなたの健康と海の豊かさのために~」と題したトークショーに参加して海の環境について考えると同時に、魚を食べることで美味しくSDGsに貢献できる機会となりました。
昨今では、地球温暖化の影響による海水温上昇や、プラスチックごみによる海洋汚染、乱獲などにより、海洋資源減少の深刻化が課題となっています。一方で、30億人以上の人々が海洋資源に依存して生活していると言われていることから、こうした海洋問題を解決することは不可欠な状況にあります。また、海洋資源保護は、SDGs14「海の豊かさを守ろう」の取り組みのうちの一つでもあり、社会全体での協力が求められています。
トークショーは、自身の魅力のPRや社会課題に対する考え方を発信するインフルエンサーとしての活動を競い合う「ソフィアンズコンテスト2024」でグランプリに輝いた外国語学部英語学科の中嶋未来さんが司会を務め、お昼休みの時間帯に開催されました。多くの学生が会場を行き交い、鈴木氏の魚や海に関する興味深いトークや、鮮やかな青が目を引くキッチンカーに自然と惹きつけられていました。
はじめに鈴木氏は、「かわいい部門」や「不機嫌部門」などオリジナリティあふれるジャンルを切り口に、映像や写真を通してさまざまな種類の幼魚とその特徴を紹介しました。
そして、「漁港の近くにいると海の環境の変化を感じる場面が多い」と、地球温暖化が原因で海水温度が上昇しているために、漁獲量や魚の価値に影響が出ている現状を語りました。冷たい水を求めて北上するも、北海道の人々に食べる習慣がほとんどないことから、良い値がつかないブリを例に、「魚の価値はその土地の文化次第。漁獲量の約3~4割は未利用魚として捨てられていますが、その理由の一つにその土地で知られていないことがあります。その魚を知ることで、価値が生まれ、サステナブルな魚食文化につながっていく」と強調しました。
「海の変化を自分事として考えてみてください。まずは海の生き物を好きになり、実際に海に行ってみて、楽しみながらサステナブルな行動を起こしてみる。このイベントが、その一歩を踏み出すきっかけになればうれしいです」と述べ、トークショーを締めくくりました。
このイベントを企画したのは、ダイバーシティ・サステナビリティ推進室の学生職員である堤そよ佳さん。学食メニューに肉料理が多く、魚料理や環境に配慮した食材を使用したメニューが少ないことを課題に感じ、一から企画を練って同部署の職員に提案。約4カ月の準備期間を経て実現に至りました。
「食を通して手軽にサステナビリティに貢献できることを、上智生に周知したいという思いがこのイベントの原点です」と語る堤さん。
特に苦労したのは、環境問題への意識が高くない学生にも興味を持ってもらう工夫を考えることだったそうです。「今回は鈴木香里武さんの力をお借りし、楽しみながら海洋問題の現状を知ることで問題を身近に感じてもらい、サステナブルシーフードを美味しく味わえるキッチンカーを呼ぶことで手軽に環境に貢献できると同時に購入者自身も健康になる。SDGsに貢献すると、自身にもメリットがあることを伝わるようにしました。さらに、企画趣旨が伝わるポスター作成やウェブサイトでの情報発信などの広報にも力を入れました」
上智大学はSDGsへの意識が高い学生が多いものの、一部の分野に偏っていたり、学ぶ意欲はあるが行動まで到達できていなかったりと、向き合い方は一人ひとり差があると述べ、「多くの学生を募ってSDGs課題を自分事として考えられる場を定期的につくっていきたい」と今後の意気込みを語ってくれました。
上智大学は「For Others, With Others(他者のために、他者とともに)」の教育精神のもと、サステナビリティ活動に力を入れており、本イベントを主催したダイバーシティ・サステナビリティ推進室のみならず、授業の一環や、課外活動団体の活動など、さまざまな場面で貢献しています。
※ブルーシーフードとは、資源量が比較的豊富で、生態系を守りつつ、管理体制の整った漁業により漁獲されている、持続可能と認定された海産物のことを指します。そのため、ブルーシーフードガイドに掲載されている水産物を積極的に食べることにより、枯渇した水産資源の回復を促進することができます。