上智大学では、毎年11月25日の女性に対する暴力撤廃の国際デーから12月10日の世界人権デーまでの期間(12月3日国際障害者デーを含む)を「ソフィア・ダイバーシティ・ウィーク」と位置づけ、期間中さまざまなイベントを行っています。今年で9年目を迎えた本取り組みで、学生と教職員が協働して目指しているのは、多様性を受け入れる共生社会の実現です。今年は、8つの対面イベントと2つの期間中常設展示企画、そして社会福祉学科の実習施設である「ふらっとなかの」「いろえんぴつ」2施設によるパン・お菓子の出張販売を実施しました。
今年のテーマは「Your style, Your story, Our Sophia.」。テーマには一人ひとりの個性や背景を尊重し、その多様性が交わることで上智という共同体をより豊かにしていこうという思いが込められています。多様性とは、性別や考え方、民族、文化、宗教、そして障がいの有無など、あらゆる違いを含みます。全プログラム共通で、そうした多様な人々の「スタイル」や「ストーリー」に出会い、自分自身の価値観を広げてもらうことを目的としました。
特に今年は、社会福祉の分野に重点を置き、本学学生で車いすモデルとしても活躍する玉置陽葵さんが登場するファッションショー&トークイベントや、障害当事者がHIV予防啓発の主体となったブラジルの国際協力プロジェクトに関するパネルディスカッション、福祉×アート×ビジネスで新たな文化を創ることを目指す株式会社ヘラルボニー協力のワークショップなどが実施されました。さらに、事前予約なしで立ち寄れるイベントから、専門家を招いてアカデミックにダイバーシティを学べる場まで、気軽でも本格的にもダイバーシティと向き合える工夫がなされていました。
また、今年から新たに課外活動団体「Sophia Diverse Colors」を立ち上げ、ダイバーシティ・サステナビリティ推進室と共に企画を担うことで、より充実したイベントが実現できました。
11月27日にはMCにタレントの関根麻里さんをお招きして、元K-POPアイドルで現在モデルとして活躍する廣川茉音(MAY)さん、MEN’S NON-NO専属モデルで俳優の海谷遠音さん、ソフィアンズコンテスト2025でグランプリを受賞した本学学生で現役のドラァグクイーンとしても活動するクアラルンプール・とき子さんの3名によるトークショー「Own Your Story」を開催しました。
まず、クアラルンプール・とき子さんによるドラァグクイーンショーから幕開け。今回初めてショーを体験する参加者が大半でしたが、皆を巻き込む圧巻のパフォーマンスに、会場内には拍手や歓声が響き渡りました。盛り上がりが最高潮に達した中で、4名の登壇者がステージに揃いました。はじめに、多様なフィールドで自己表現を続ける3名の人生を辿り、「自分らしい生き方とは何か」をテーマに、自らの個性をどう捉えているのか、そしてその過程で抱えた葛藤や訪れた転機について語られました。
廣川さんは「大きなことを成し遂げないと自らの強みにならないわけではありません。自分の好きなことを一番に考えて、やりたいことに挑戦してほしい」と、中学生のときに単身渡韓しアイドルとして歩まれてきた今までの挑戦を振り返り、これからモデルとして活動する決意を示されました。
東洋医学との出会いをきっかけに辛かった時期を乗り越えられたと話す海谷さんは「『これが私の自分らしさだ』と決めると、それ以外の自分を受け入れられなくなります。そのとき、そのときの自分に素直に生きていくことが、結果的に自分らしさになるはず」と自身の経験を共有してくれました。
大学3年生のときに、突然重い病と向き合うことになったクアラルンプール・とき子さん。「自分が人と違うことに恥ずかしさを感じていた時期もありましたが、死を意識したときに『やりたいことは、やれるうちにやらなきゃ!』と強く思いました。今までマイナスに思っていたことをプラスに転換してくれたのが、ドラァグクイーンの世界です」と、前向きに今の自分を語る姿が印象的でした。
関根さんが「自分らしさに正解はないから悩むことは当たり前。自分が良いと思ったように生きて、皆さんもown your storyを歩んでください」と締めくくり、最後にクアラルンプール・とき子さんよるクリスマスショーが行われ、盛況のうちに閉会しました。
その他期間中には、外国語学部教員がヨーロッパ諸国とラテンアメリカを政治・文化的視点から考察する講義や、JICA職員によるアフリカの女性スポーツに関する講演など、さまざまなアプローチ方法でダイバーシティの意義と直面する課題を参加者と共有しました。
ソフィア・ダイバーシティ・ウィークを統括した、上智大学卒業生で日本航空株式会社から本学に職員として出向中の飯田さんは、「今年度は、敷居を上げずに気軽に参加できる企画から学びを深めるアカデミックなイベントまで幅広く開催しました。学外からも多くの方にご参加いただき、本学のダイバーシティに触れていただく機会となりました。学生が『ダイバーシティとは何か』を自ら考え主体的に企画・実施する姿勢に伴走する中で、その捉え方の多様さを運営側としても改めて認識しました。本イベントでの学びが、参加者みなさまの日々の生活や行動につながることを願っています」と振り返りました。