LGBTQ+をテーマに性の多様性を考える映画祭を開催しました

性的マイノリティ当事者の安心感と、非当事者への理解醸成を目的とした「上智LGBTQ+映画祭 Sophia PRIDE Film Festival」を6月18~27日の期間で開催しました。

毎年6月は、世界中で性の多様性を称え、尊重する「プライド月間」です。本学では、学生・教職員の1人ひとりが自分らしく存在でき、すべての構成員にとって上智大学が自分の大切な居場所となるよう、性的指向、性自認・性表現はもちろん、人種、性別、年齢、宗教・信仰、思想などさまざまな違いを理解し尊重するため、ダイバーシティ・エクイティー・インクルージョン&ビロンギング(DEI&B)を推進しています。本映画祭はその取り組みの一環として、昨年教職協働・職員協働イノベーション研究「性の多様性への理解促進と当事者(LGBTQ+)に対する環境整備の研究~SOGI の差異を否定しない就学・就労環境を実現する~」メンバーが企画し、今年は上智学院ダイバーシティ推進室が主催した2回目の実施となりました。

期間中は、さまざまな視点から性の多様性を考える4作品を上映。参加者がより作品やテーマへの理解を深められるように、上映前後に本学教職員や実際にマイノリティ支援を行っている専門家らが解説を行いました。

映画祭初日は、トランスジェンダーの少女とその家族が当たり前に許容されるべき個性を周りに受け入れてもらうために奮闘する「リトル・ガール」を上映。推薦者である学生センター職員の新井さんは、主人公の少女にとっての幸運は最大の理解者、少女の場合は家族がそばにいることであると強調し、「マイノリティ当事者を前にどう対応していいかわからないとき、自分の混乱を防ぐために、従来の自分の規範に頼って、他人に対して心が狭くなってしまうことがあるでしょう。今一度こうあるべきと考える自分の規範が何に影響されたのかを考えることで、皆も自分自身も生きやすくなる社会になると、この映画を通して感じます」と、多様性を尊重し寄り添うことの大切さを語りました。

最終日は、米国カリフォルニア州での同性婚をめぐる裁判を追った「ジェンダー・マリアージュ」を上映しました。上映前後に、外国語学部英語学科の出口真紀子教授がコメンテーターとして登壇し、同性婚をめぐる米国の歴史的背景や日本の現状などを解説。「同性婚が合法化されている国は既に30カ国以上あり、同性婚による損害は未だ報告されていません。日本社会においても同性婚をめぐるアクションが活発化していくことを願っています」と締めくくり、マイノリティ理解を促進するにあたり、海外の先行事例や歴史的背景から得られるエビデンスをもとに社会と交渉する可能性に気づかされました。

本イベントを企画したグローバル教育推進室職員の江口さんは、「上智大学が当事者にとって安心できる場所であってほしいという思いで、それぞれの作品を選びました。参加者の中には初めて当事者が置かれている現状を知った方もいたようです。作品を通して考えるきっかけになったのであれば嬉しく思います。映画祭開催はアクションの1つにすぎません。今後も当事者の安心感と非当事者の理解醸成のための継続的なアクションを行っていく必要があると思っています 」と振り返りました。

上映作品リスト

リトル・ガール
“女の子”と認めてもらえない7歳のサシャと、子どもの自由と幸せを守りたい母。一つの家族の「譲れない戦い」を写した心ふるえるドキュメンタリーです。
虹色の十字架~ある牧師の物語~
本学新聞学科に在学していた学生が制作し、若い世代が取材したすぐれた映像ドキュメンタリーとして2018年に赤十字国際委員会主催「ヤング・リポーター・コンペティション」で大賞となった作品です。今回の上映では、この作品で取り上げられていたLGBTQ+のための活動や結婚式の司式を行う日本キリスト教団の中村吉基牧師の講演も合わせて行いました。
チョコレートドーナツ
同性愛者のカップルが育児放棄されたダウン症の男の子と出会い、幸せな時が訪れるはずの3人に襲い掛かる不条理な出来事の数々。時代が追いついていなかった切なさと悔しさが入り混じるヒューマンドラマです。
ジェンダー・マリアージュ
同性婚が認められたカリフォルニア州ではバックラッシュが起こり、2008年11月に再び同性婚が禁じられてしまう。これに抗して訴訟を起こした2組の同性カップルの闘いを5年にわたって取材したドキュメンタリー作品です。

上智大学 Sophia University