まずは他者に寄り添い歩める人間に、愛を持って人のために働ける人間に。

浅野 鈴さん
神学部 神学科

“上智で多様な価値観を持つ人々と関わる中で、誰も取りこぼさない社会について深く考えるようになりました”と話す神学部4年の浅野鈴さん。意欲的に取り組んだ学業と課外活動から得た数々の気づきを胸に、大学院進学を決めた彼女が目標とする自分自身の在り方とは?

勉強に対する向き合い方が高校時代と変わった

私は幼稚園から高校まで、カトリックの学校に通っていました。神学部を選んだ最大の理由は、さまざまな本や映画、そして海外の文化に触れる中で、世の中にはキリスト教の影響を受けた思想や考え方が広く存在しており、それを学ぶことが世界を知ることに繋がると感じたからです。上智の神学部は学生同士の距離感が近く、先生方も悩みや進路の相談に真摯に応じてくださる。神父様の先生も多く、私にとって神学部は勉強だけでなく人生そのものを学べる場です。

入学して最初の発見は、キリスト教や神学は、聖書学や哲学、歴史学といった複数の分野から成り立っていること、そしてさまざまな視点からアプローチすることができるということでした。全く違う分野の授業で学んだことが相互に関わり合っていることも多く、勉強するたびに新たな発見がありました。そのうちに、学びに対するアプローチはいろいろあっていい、そのアプローチは一直線に進まなくてもいいことが分かってきました。脇道に逸れて、いろいろなことを吸収してから戻ってきてもいい。それに気づいてからは、高校のときよりも広い視野で学び、アウトプットすることができるようになったと思います。

上智のいいところは、キャンパスが1つに集約されていることで、多種多様な価値観に触れるチャンスが多いこと。そして、国際情勢や社会問題に関心を持つ学生が多く、普段の会話の中にも学びの機会や学びを活かす機会が溢れていることではないでしょうか。また、上智では他学部の授業も比較的簡単に履修ができるので、私は哲学科などの授業も履修していました。自分とは違う専門を学ぶ学生たちと意見交換をすると、自分の考え方や物事の捉え方を客観的に知ることができて、良い機会になりました。

多様性豊かなキャンパスで“違い”の捉え方を見直した

多様性豊かな上智のキャンパスにいると、当然ながら文化や宗教の違いを感じる瞬間が何度もあります。人間は自分が知らないものに対して過剰に攻撃的になったり防御的になったりするものだと思います。宗教もその一つではないでしょうか。でも、神学部で勉強を続けるうちに、そのような心の動きを加害側と被害側の両方の立場から深く理解できるようになってきました。これは、神学を学ぶ上で文化的・社会的背景から相手の考え方を知り、その人自体を理解して、最後は気持ちを分かち合うという学びのプロセスを経験してきたからこそだと思っています。

また、一見似たような学生同士、それが仮に日本人同士でも、それぞれが大切にしているものは大きく違うということにも気づかされました。私には死生観についてまったく異なる考えを持っている友人がいます。多くの点で考え方が私と似ていたので、死生観が違うと知った時はとても驚きましたが、考えてみれば違って当然でした。その人が心の奥で考えていることに触れたとき、それを自分が拒否したり否定したりせず、一つひとつの価値観をかけがえのないものとして大切にしなければならないということを再認識した出来事でした。

神学部の外では、演劇サークルとダンスサークルで構成される演劇協議会の会長を1年間務めていました。コロナ禍で行動が制限される中、なんとかして活動を継続する方法を必死に模索し、1度だけ学外の劇場で公演を打つことができたときは本当に嬉しかったです。また、このような課外活動を通じて他学部の学生と交流するのは、とてもいい経験でした。脚本に対する感想や登場人物の心情を話し合っていても、自分が思いもしないような意見が出てきて面白かったです。

誰も取りこぼさない社会を自らが率先して作りたい

数々の学びと思い出に溢れた4年間でしたが、一番記憶に残っているのは、やはり教皇フランシスコの来日と上智大学への訪問です。それまでは教皇様をとても遠い存在のように感じていましたが、実際にお会いしてみると、教皇様は私たち一人ひとりを見てくださっていると強く感じました。あのあたたかな眼差しは今でも鮮明に覚えています。学部のみんなでメッセージフラッグを作り、教皇様を出迎えるという二度とない時間の中で、神学部全体が1つになった感覚も忘れることはないでしょう。

神学部で学ぶうちに私が特に関心を持つようになったのは、日本人としての自分とキリスト教の関わり。そのため現在は、日本思想とキリスト教の関わりをテーマに卒論に取り組んでいます。卒業後は大学院に進学し、キリスト教の秘跡や典礼がどのような教理をもとにしていて、それを信じる人々にどのような影響を及ぼすのかということを研究する予定です。

将来は、人々の日々の営みや文化を守り、活性化につなげていくような職業に就きたいと思っています。上智で多様な価値観を持つ人たちと関わる中で、誰も取りこぼさない社会について深く考えるようになりました。好き嫌いや意見の違いを乗り越えて、その社会を実現するために必要なのは、まさに「他者のために他者とともに」という上智の精神ではないでしょうか。神学部でも人のために働くことの大切さをたくさん教えていただいたので、まずは私が一緒に寄り添い、ともに歩めるような人、どのような環境に置かれても、愛を持って人のために働ける人になりたいですね。

※この記事の内容は、2021年10月時点のものです

上智大学 Sophia University