女子学生の進路選択を支援する対話の場 ――キャリアと大学院進学を考える

6月26日、女性リーダーの育成とジェンダーギャップの是正を目指す「30% Club Japan」と連携し、「女子学生のキャリア形成と大学院進学」をテーマにセミナーを開催しました。
本学四谷キャンパスでの対面とオンライン配信を組み合わせたハイブリッド形式で実施し、学内外から女子学生や高校生など約120名が参加しました。

学部卒業後の進路選択に関して、とりわけ文系分野においては「就職に不利ではないか」との懸念から、大学院進学をためらう学生が少なくありません。しかし、大学院での学びは、今後ますますグローバル化が進む社会において、長期的なキャリア形成や社会課題の解決に大いに役立つと考えられます。
そこで本セミナーでは、大学院修了生や企業の意見を共有し、「女子学生にとっての大学院進学の意義とキャリア形成を考える機会の創出」を目的として実施されました。

杉村美紀学長

冒頭の開会挨拶では、杉村美紀学長が「大学院での学びは、専門性の習得にとどまらず、思考力や実践力を養う場でもあり、将来のキャリアの礎となる」と述べ、学生一人ひとりが自身の可能性を見つめ直す契機となるよう、本セミナーへの期待を伝えました。

日本電気株式会社(NEC)福士由希子氏

基調講演には、日本電気株式会社(NEC)人材組織開発統括部 ディレクターの福士由希子氏を迎えました。国内外の大学院進学率や女性リーダーの事例を紹介し、「世界では女性たちが学び続けている」と語り、「学ぶ意志が企業から高く評価される時代に入っている」と進学の意義を強調しました。

PwCコンサルティング合同会社 吉武希恵氏

続く卒業生によるトークセッションでは、本学の修士課程を修了し、現在は民間企業で活躍する3名が登壇。本学グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻を修了後、PwCコンサルティング合同会社でリサーチ業務に携わる吉武希恵氏は、「修士課程で身につけた“正しい情報に基づく論理的思考”は、今の仕事の土台となっている」と述べ、学びの価値を語りました。

株式会社サイバーエージェント 和田波望氏

また、本学理工学研究科理工学専攻生物科学領域を修了後、現在は株式会社サイバーエージェントでABEMAのオリジナルドラマプロデューサーとして活動する和田波望氏は、自身のキャリアを「点と点をつなぐ旅」と表現。「目の前の“楽しい”に全力で向き合う経験が、自信と可能性を広げる」と、学生への応援の言葉を贈りました。

株式会社電通 近藤杏奈氏

本学理工学研究科理工学専攻分子生物科学領域を修了後、株式会社電通でアニメーションへの投資やプロデュース、スポンサーセールスに携わる近藤杏奈氏は、「“やらない後悔より、やって後悔”という親の言葉が修士進学を後押ししてくれた。大学院進学は社会に出る前の自信につながった」と、進路に迷う学生に向けた温かなメッセージを伝えました。

後半のパネルディスカッションでは理工学部物質生命理工学科の齊藤玉緒教授がモデレータとなり、大学院進学のメリットや課題、大学を卒業して就職することとの違い、ライフステージに対する不安などが率直に語られました。参加者からは「院進学は費用や社会人としての遅れを懸念していたが、登壇者の自信に満ちた姿を見て、自分もそうなりたいと気づいた」「いわゆる『研究者』という固定観念にとらわれない、多様なバックグラウンドを持つ修士学生の存在を知ることができ、その後、企業で幅広く活躍する可能性についても理解が深まった」「登壇者が口を揃えて、大学院での経験を自らの「自信」へと昇華されている様子が印象深かった」との声が寄せられました。
閉会の挨拶では横山恭子学生総務担当副学長が登壇。「女性は自分の能力を低く見積りがち(Correll, 2001)などと言われていて、『自分なんか・・・』という女子学生が多くいるが、“なんとなくだけれどもっと続けて学んでみたい”という素直な気持ちを大切にしてほしい。学生がそう感じたときに、大学として寄り添える体制を整えていきたい」と語り、本学の進学支援への思いを述べました。
本セミナーは、女子学生・高校生たちにとって、進路選択をめぐる多様な価値観にふれ、将来の可能性を柔軟に考える貴重な機会となりました。

パネルディスカッションの様子
横山恭子学生総務担当副学長

-30% Clubとは-
30% Clubは2010年に英国で創設された、取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的とした世界的キャンペーンです。20ヵ国以上で展開され、日本では2019年に設立された「30% Club Japan」が活動しています。
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上智大学 Sophia University