コロンビアで開催された国際イエズス会大学連盟総会に参加しました

IAJU総会はコロンビアの教皇庁立ハベリアナ大学がホスト校を務めた

6月30日から7月3日にかけて、国際イエズス会大学連盟(IAJU)の総会がコロンビアの教皇庁立ハベリアナ大学で開催され、上智大学からはアガスティン・サリ理事長と杉村 美紀学長が参加しました。この総会は3年に一度開催され、2025年は“Our Mission in Challenging Times”をテーマに掲げ、約300人の参加者が世界各地のイエズス会大学の連携と大学の社会的役割について議論しました。

会議の中心は、イエズス会のアルトゥロ・ソーサ総長による“The Jesuit University: Witness to Hope, Creative and Dialogical Presence”と題する講演でした。総長はまずイエズス会大学の「カリスマ」を再確認することを促し、それが希望や正義、和解といった具体的使命へとつながる原動力であると位置づけました。変動する世界情勢のもとで大学は単に知を伝える場にとどまらず、人権擁護や市民参加の促進に取り組むべきだと述べ、特に移民・難民など困難な状況にある人々に寄り添う支援の重要性を強調しました。

イエズス会のアルトゥロ・ソーサ総長による講演

気候危機に関しては、故教皇フランシスコの「Laudato Si’」の精神を教育や研究、大学運営に組み込む必要性を訴え、キャンパスとカリキュラムの双方でエコロジー意識を醸成することを求めました。併せて、急速に進展するAIやデジタル技術については、無批判な技術導入を避け、人間の尊厳と倫理を基盤にした教育設計やデータの透明性確保、批判的思考の育成が不可欠であると指摘しました。総長は対話と和解の重要性を繰り返し述べ、学生一人ひとりへの配慮や教職員のリーダー育成を通じたネットワーク強化を呼びかけました。

ソーサ総長の呼びかけを受け、総会では「民主主義の危機」「学生のウェルビーイング」「世俗主義」「AIの利点と課題」「移民と難民」「環境正義」の六つのテーマに沿った全体会が行われました。

各地域のコンソーシアムは自らの文脈に応じた具体案を提示し、ニカラグアでの大学閉鎖への受け入れやオンライン教育による支援、学生のメンタルヘルスに対する予防と識別体制の強化、世俗社会との対話を視野に入れたカリキュラム設計、段階的なAI教育と倫理枠組みの共有、奨学金やメンター制度を通じた移民・難民支援、そしてキャンパス運営と教育への環境配慮の統合などが活発に議論されました。

世界各国のイエズス会大学から約300人が参加

最終全体会では各地域コンソーシアムが地域内で深めた議論と今後の取り組みを発表。本学も加盟するアジア・パシフィック連盟(AJCU‑AP)では、アテネオ・デ・マニラ大学のロベルト・C・ヤップ学長がタスクフォースの立ち上げを報告しました。

会場からは地域内連携にとどまらずコンソーシアム間での協働を進めてほしいとの要請が相次ぎ、人的交流や国際共同学位等の教育プログラムにおいて協力を進めたいというコメントもあり、IAJUの役割が改めて認識されました。今回の総会の総括や次回総会に向けた建設的なコメントがいくつか示され、総会は閉会しました。

※記事内の写真はすべてハベリアナ大学提供

上智大学 Sophia University