4月15日、ジョージタウン大学女性・平和・安全保障研究所(Georgetown Institute for Women, Peace and Security (以下、GIWPS))のメレーン・バービア研究所長をはじめとする代表団計13名が本学を訪問され、サリ・アガスティン理事長、杉村美紀学長、飯島真里子グローバル化推進担当副学長、齊藤玉緒教授(理工学部物質生命理工学科)、出口真紀子教授(外国語学部英語学科)との懇談および本学学生によるキャンパスツアーの機会が設けられました。
GIWPSは、ジョージタウン大学ウォルシュ外交学院内にある研究所で、紛争予防や平和構築、経済成長、気候変動や暴力的過激主義のような世界的脅威への対処において女性が果たす重要な役割に焦点を当て、より平和で公正な世界を促進することを目的に、世界的な会議の主催や、戦略的パートナーシップを推進しています。メレーン・バービア所長は、オバマ政権で任命された初代米国国際女性問題担当大使で、長年にわたり女性の権利と地位向上に尽力してこられました。
本学と同じカトリック・イエズス会によって設立されたジョージタウン大学と本学との繋がりは深く、本学が1935年に初の留学生を派遣して留学制度を始めた先がジョージダウン大学でした。その後、1975年に交換留学協定を締結して以来、交換留学や大学院特別進学制度などを含めた活発な学生交換、学術研究交流を行っています。今回のGIWPS代表団の訪問では、17代目で初の女性学長に就任したばかりの杉村学長をはじめとする本学の女性研究者、女性役職者とともに、主に高等教育機関および研究機関としての大学における女性の活躍推進について意見交換を行いました。

懇談に先駆け、アガスティン理事長から代表団歓迎の挨拶が行われ、続いてグローバル教育センターより本学の大学説明が行われました。その後、杉村学長から自身の研究者としての経歴や、学長就任の所信表明も含め、高等教育機関として学生、研究者、教職員の女性躍進を後押しすることの重要性について語られました。

バービア所長からは、杉村学長への学長就任に関する祝辞と初の女性学長への期待の言葉が述べられ、互いに国内最古のイエズス会大学として「他者のために、他者とともに」の教育精神を共にすることに加え、国際平和や国際貢献への視座を高く持つ両大学が、今後女性の地位向上に関してもさまざまな面で協働や知見交換を行っていくことの意義について語られました。
続いて、代表団と杉村学長との質疑応答が行われ、主に日本における男女の教育機会均等や、女性の志望率が高い専攻分野、卒業後の進路やキャリア支援等についての質問があがりました。杉村学長からは、他大学事例紹介も交えながら日本の現状が語られ、女性の大学進学率や就職率といった点での表面的な問題点は多くない一方、医療分野を含む理工学分野への女性進出立率や、就職後の管理職層への女性登用率の低さが顕著であり、日本の家父長制文化とも絡む根深い社会問題であることが指摘されました。
学長への質疑応答の後には、齊藤教授から、同志社大学と本学が共同実施した文部科学省科学技術人材育成費補助事業(JST)「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(調査分析)」の概要について、出口教授から本学における「マジョリティ特権」にかかる具体的な取組・知見についてそれぞれプレゼンテーションが行われ、飯島副学長からは、自身の研究分野および大学全体の取り組みについて説明されました。

齊藤教授は、JST調査結果として、特に私立大学において、女性研究者支援に関わる意思決定プロセスの整備が遅れていることをあげ、ライフイベントとの両立に苦慮する研究者の声が政策に反映されづらいという問題について提起したうえで、その主たる要因が私立大学における女性管理職層の割合の低さであると結論付けました。さらに、この問題への解決策として、組織を奉仕や支援によって導くサーバント・リーダーシップを育むことが本学の志であると述べました。

出口教授は、差別の問題はマジョリティ側の問題である、という前提に立ち、マジョリティつまり強者側にいる人々にどうすれば「差別」を自分ごととして捉えてもらえるか、という課題について、自身が教鞭をとる全学共通科目「立場の心理学」を例にあげ、学部学科を問わず全学生が受講可能な科目においてマジョリティ側の「特権」について可視化し教授することによって学生一人ひとりの意識変革が起こり、キャンパス全体のダイバーシティ推進の一助になっていると報告しました。

飯島副学長は、自身の研究分野であるグローバル・ヒストリー、移民史の概要について伝えた後、外国人労働者や移民が増加する現代の日本社会において、他者理解やダイバーシティ推進という観点からも、日本国内では学ぶ機会の少ない、マイノリティとしての日系移民の歴史について学生たちが学ぶ意義は大きいと述べました。また、マイノリティとしての日本人という話題に関連し、留学先の米国ではマイノリティとなる本学学生が、現地でどのような物理的・精神的サポートを受けることができるかということについても関心を寄せていると語りました。

3名のプレゼンテーションの後には、杉村学長からユネスコチェアの取組について、本学ではユネスコの活動を土台とし、特に「平和、人権、サスティナビリティ」を軸に、人間の尊厳、平和、持続可能性に関する教育と研究を推進していることに触れ、女性の活躍の促進とどのように一致させるかが大切な視点となることの示唆がありました。続いて代表団との意見交換が行われ、日本の高等教育機関、研究機関における女性のキャリアと家庭の両立について質疑応答が行われたほか、代表団側からは、留学先としてのアメリカの大学の魅力について、ジョージタウン大学での取り組みを交えながら教育研究面、留学生へのサポート体制といった観点から詳説がなされました。
懇談の締めくくりとして、今後両大学が女性の権利と地位向上および平和・安全保障分野において更なる協働体制を構築していくことが合意されました。その後在学生2名が代表団に四谷キャンパスを紹介するキャンパスツアーが行われ、会は和やかな雰囲気で締めくくられました。