22カ国の言葉を扱う言語空間。語学を「学ぶ」から、「使いこなす」教育へ

言語教育研究センター
センター長
教授
藤田 保

授業の提供に加え、外国語をいかに習得するか、その充実を図るために、多種多様なプログラムを用意している上智大学言語教育研究センター。センター長の藤田保教授は、「井の中の蛙」から脱却し、世界の人々と交流するコラボレーション力の育成に心血を注いでいます。

言語教育研究センターは、上智大学全体の言語教育を担う組織です。学部・学科を限定せず、あらゆる学生に外国語教育を提供しています。英語やフランス語、ドイツ語のほか、アラビア語、インドネシア語などまで、外国人留学生に対する日本語教育も含め、22もの言語を扱うのが注目すべき点です。

なかでも「ランゲージ・ラーニング・コモンズ(LLC)」という施設では、語学学習をさらに充実させるための、さまざまなプログラムやサービスを提供しています。大学院生や留学生が中心になって少人数チューター制で外国語会話を学べるレッスンをはじめ学習プログラムは実に多彩。異なったバックグラウンドを持った学生たちと互いの言語や文化について会話することが貴重な体験となるLanguage Exchangeや、語学検定試験の対策講座など至れり尽くせりです。

英語でのレポートや論文執筆に関する相談や、留学準備などの相談は、学習アドバイザーが担います。授業だけでは、一人ひとりの喋る時間はどうしても限定的。ここなら語学力を伸ばしたい学生が、どこまでも伸ばせる環境が整っているのです。

世界の人たちと協調できる、コラボレーション力を

英語教育では現在、コミュニケーション能力の育成にフォーカスされています。自分でテーマを見つけ、どう話すと内容が的確に伝わるのか、流れを捉えながら思考していくのです。ただ単に単語を100万語覚えても、それを思いのままに使いこなせなくては意味がありません。決して一方的ではなく相手の声に真摯に耳を傾けて、コミュニケーションを深めていくことが重要です。

自動翻訳のレベルは、この数年で飛躍的に上がりました。それでも、語学を学ぶことは必要です。行間や言外に込められたニュアンスは、文字を置き換えただけでは伝わりません。文化的な側面も含めて理解すべきで、そのためにも読み取る力や、細かなニュアンスの表現を習得することが大切なのです。

言語は、よりよい社会を構築していくための欠かせないツールです。ネットがここまで発達した今、「井の中の蛙」から脱却し、世界の人たちと向き合っていかなければなりません。いかにイノベーティブに、世界の人たちと協調していくのか。これからの時代に求められる確かなコラボレーション力を、生きた言語を学ぶことで身に付けてもらいたいですね。

言語の学習は、自らのアイデンティティーを探ること

私はもともと言語習得が研究分野です。「人はどうやって言葉を身に付けるのか」、赤ちゃんが生まれ、やがて成長していくなかでの言語習得プロセスを調査してきました。また、バイリンガル、マルチリンガルと呼ばれる子どもたちを対象にしたフィールドワークの一つとして、日系ブラジル人コミュニティの子どもたちが、日本語そして保護者の話す母語、その双方をどのように習得しているか過程を調べました。

すると、「どう教えれば効果的か」も見えてきます。言語習得と、言語教育の両輪の研究を通じて感じるのは、言語について学ぶことは自身のアイデンティティーに関わることだ、という点です。グローバル社会で生きるからこそ、なおさらそれが大切なのです。

異なる価値観を持った人と話をすれば、思ってもいなかった発見があるはずです。多言語や文化に触れ、自分自身のアイデンティティーを見いだすことにもつながっていくでしょう。

この一冊

『みんなの「わがまま」入門』
(富永京子/著 左右社)

「わがまま」は、悪いことだと思いがちですよね。でも、例えば「ブラック校則」について皆が我慢するなか、「私、こんなの着たくない!」と一人の生徒が抵抗すれば、むしろ皆にとってより良い方向に向かうかもしれません。感じたことを表現する大切さを説く本です。

藤田 保

  • 言語教育研究センター
    センター長
    教授

上智大学外国語学部比較文化学科卒業。同大学院言語学専攻博士前期課程修了。高崎経済大学経済学部助教授、立教大学異文化コミュニケーション学部教授などを経て現職。

言語教育研究センター

※この記事の内容は、2022年5月時点のものです

上智大学 Sophia University