
学科の特色
フランス語学・文学の総合的な学習を通して語学と文学の研究の方法論を学ぶほか、自主的な文献収集と読解で批判的な思考過程を体験します。それと同時に自らの言葉で問題を表現し、対話する技術と感性を養います。文学者が社会の常識的な考え方や大勢順応的なあり方と戦いながら人間性を極めていく姿勢は、フランス文学の特徴の一つです。
そのため、単にフランス語能力を身につけてフランス文化に精通するだけでなく、どのような社会にあっても批判意識と問題意識を持てる人材、さらに国際的な研究者の養成を目標としています。
カリキュラムの特徴
多彩な作者・時代の芸術作品や過去のテキストから、自身が探究する課題と出会う
1〜2年次は集中的に語学力を高めながら、文学・文化研究の基礎力を養います。3年次以降は、語学では「特修フランス語」で4技能を徹底的に習得。専門分野では、さまざまな作者や時代の芸術作品をテーマとして学ぶ「フランス文学研究」「フランス文化研究」、芸術作品や報道資料の文章を教材として言語への理解を深める「フランス語学研究」の3系列に分かれて、文学をはじめ語学、美術、映画、演劇、思想、社会に関する多様な科目から選択します。ここから各自がテーマを見つけ、担当教員の細やかな指導・コミュニケーションのもと、議論と検討を重ねて4年次の卒業論文へとつなげます。
※科目の詳細については、シラバスをご覧ください
科目紹介
- フランス文学研究(授業例)
『パンセ』の断章を読みながら、パスカルが行った人間観察について考えます。「むなしさ」「みじめさ」の実感は人間の偉大さにもつながるという人間観を、複数の断章を通して浮き彫りにします。
- 文献演習A( 授業例)
スマートフォンやSNSがコミュニケーションの中心となる時代に、日記や手紙はどう変化したでしょう。物語と自伝の違いを分析しながら、自伝コミックを題材に、「自伝」への理解を深めます。
- 文献演習B( 授業例)
デュマ・フィスの小説『椿姫』を読み、そこに描かれた高級娼婦の世界とブルジョワ社会の関係、パリと地方の違い、花の役割、飲食の場面などを考察します。本作を原作としたオペラ・バレエ作品との比較も行います。
- 英仏翻訳演習Ⅰ・Ⅱ
文学や報道など幅広い選択肢のなかから選んだ文章を題材に、英語からフランス語への翻訳を学びます。文法や語彙といったポイントをおさえ、よりよい翻訳方法への理解も同時に深めます。
- 舞台芸術論I・II
17世紀から現代までのオペラ・バレエ作品を分析します。音楽やダンスを考察する際に必要な要素を学びます。時には同じ物語から生まれた複数のオペラ・バレエやその異なった演出を比較し、舞台芸術作品の特性を考えます。
- フランス美術論Ⅰ・Ⅱ
各時代の絵画の歴史的な位置づけ、画家ごとの特性、伝記的事実など体系的な知識を身につけたうえで、実際に作品分析を複数回行い、芸術作品を分析する力を着実に養います。
取得可能な教員免許と教科
- 中学校教諭1種(フランス語)
- 高等学校教諭1種(フランス語)
学芸員課程が履修できます。
学生の研究テーマ例
- 『異邦人』の奇妙さについて
- エドゥアール・マネの絵画と視線
- 「庭師」、「責任」、「絆」から読み解くサン=テグジュペリの人間観
- バレエブランにおける愛
- カルメンは本当にファムファタルだったのか?
- フランス文学における女性の強かな生き方について—『クレーヴの奥方』と『シェリ』を通して—
- 文芸小説における日仏翻訳の技巧とその展望
- L’identité juive de Chagall : dans ses oeuvres leur judaïsme paradoxal
教育の目的・方針
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読む・書く・聞く・話すという4つのフランス語運用能力を総合的に習得させるとともに、文学を中心に、フランス文化に関する深い教養を身につけさせること
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高度なフランス語運用能力とフランス文化に関する教養を備え、複眼的思考と異質なものへの寛容さを身につけた、国際的な場でも活躍できる人材を養成すること
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本学科では、フランス語の修得、及びフランス語圏の文学を中心に、様々な文化・社会事象の学習を通じて、複眼的思考や批判的精神や創造性を備えた人材の養成を目的として、学生が卒業時に身につけているべき能力や知識を次のように定めています。卒業要件を満たせば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
- 文学や芸術・文化に対する関心と理解力
- 仕事や研究や社会貢献に役立つフランス語運用能力
- 情報や知識を能動的に獲得し、それを客観的かつ多角的に分析する思考力
- 自分の意見や研究の成果を、口頭や文書で的確に構成する力と、わかりやすく伝える表現力
- 自発的に課題を見出だし、解決してゆくための総合的な力
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本学科では、ディプロマ・ポリシーに沿って、入学から卒業まで、専任教員が継続的に学生の知的成長に寄り添い、ひとりひとりの個性を尊重しながらその能力を伸ばしてゆくことができるよう、次の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。
- 1・2年次のフランス語教育においては、小人数のクラス編成により、読む・聞く・書く・話す能力をバランスよく養成する。また人文学研究に必要な知識や方法論と、口頭発表や論文作成に必要な技術やアカデミック・リテラシーを身につけさせる。
- 3・4年次には、文学テキストの精読や文学研究に加え、高度な実践的フランス語運用能力を修得するための科目や、美術、舞台芸術、映画、思想、社会など、さまざまな領域に関わる科目を開講し、個々の学生が自らの関心に応じて、文化・社会事象を探求できる力を養成する。
- 卒業論文を必修科目として、4年間に修得したあらゆる知識や分析力を総合的に活用させる。
- 4年間の学習における教育目標の一貫性、および教育プログラムの継続性と発展性を重視する。またいずれの段階においても、一方的な知識伝達に終始することなく、学生の資料収集能力や読解力、表現力、協調性をのばすための実践的な教育を重視する。
- 高度なフランス語力とフランス及びフランス語圏の文化や社会に関する知識を身につけ、英語・日本語以外の言語による情報の収集と発信、及び異文化社会間の相互理解や協力関係の深まりに寄与する人材を育成する。
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ひとりひとりがフランス語の修得と、フランス語圏の文学をはじめとする文化事象の学習を通して人間に対する理解を深め、他者との平和的共存をはかりつつ自己の個性を高めてゆくことを期待する本学科は、以下のような学生を受け入れます。
- フランス語やフランス語圏の文学・文化を学び、柔軟かつ論理的な思考力を養い、自己とは異質なものを理解することに関心や意欲がある。
- 人文学に関する講義を聞いたり、芸術作品を鑑賞したり、書物や論文を読んでその要点をまとめたり、自分の考察を口頭や文書で発表するために必要な常識と、言語能力とを備えている。
自発的、主体的に考え、学ぶことができると同時に、他者との対話や共同作業を通じて学びあうことの意義を認識している。