上智大学Sophia Future Design Platform推進室では、UC Berkeley Executive Education(以下Berkeley Exec Ed) とUC Berkeley’s Haas School of Business(以下Berkeley Haas)との共催により、短期ビジネスコース「Innovation Boot Camp」を12月9日~12日の4日間で実施しました。
UC Berkeleyは、ビジネス、科学、技術などのさまざまな分野で世界をリードする全米トップの公立大学であり、同校のビジネススクールとして1898年に創設されたBerkeley Haasは、シリコンバレーでの経験豊富な世界クラスの教員陣と、最先端のイノベーションとビジネス研究で知られています。

本学では、産学協働の学びの場を創成する企業会員制の講座「プロフェッショナル・スタディーズ(PS)」の会員企業からの意見をはじめ、大企業におけるイノベーション創出に関するプログラムへのニーズが高かったことから、イノベーションやイントレプレナーシップ教育において世界トップレベルを誇るBerkeley Haasとの共催により、新たなエグゼクティブ教育の実現に向けて本コースを企画しました。
Berkeley Haasからは、組織の柔軟性やダイナミックリーダーシップ等を専門とするDr. Homa Bahramiと、企業の成長・イノベーションや破壊的技術(AI等)の戦略的展開等を専門とするDr. Saikat Chaudhuriが参画。本学からは、シリアルアントレプレナーであるとともに、世界銀行グループをはじめ複数の組織でリーダーや役員を歴任した西口尚宏特任教授が講師を務め、Berkeley Haasのセッションで学んだことを自身の組織で実践するための振り返りを行いました。

主な受講者は、PS会員企業および本学関係企業の役員、部長、および若手幹部候補層。金融、製造、運輸、建設など多様な業種17社から32名のビジネスリーダーたちが集いました。
1~3日目はBerkeley HaasのDr. BahramiとDr. Chaudhuriが、実例に基づくケーススタディやグループディスカッションを交えて講義を実施。常に受講者との双方向の対話のなかで行われ、まずは受講者たちが所属企業の実情や課題についてグループ内で共有し全体に向けて発表。教員がその個別事象を普遍化した課題に置き換え、解決策等のフィードバックを行うという形式で進行しました。

Dr. Chaudhuriのセッションでは、起業家のインタビューをもとに成功する起業家のマインドセットや条件について考えた後、既存企業におけるイノベーション経営の課題および社内外からのアプローチ方法についてケーススタディを実施。日本には既に規制や文化などイノベーションに向けた強みがあるとして、受講者に対し強いエールを送りました。
また、組織がAIを戦略的に取り入れる際に障害となり得る課題や陥りがちな7つの落とし穴と、導入準備状況を明確に測定するための指標を説明し、自社が現在どのステージにあり次にどのようなアクションを取るべきかについてグループディスカッションを実施。このセッションでDr. Chaudhuriは、「新たな技術の導入を考えるとき、障壁になるのは技術そのものではない。組織と戦略が一番のキーであり、成功するリーダーは、技術を使って何を実現したいか、それをどのような構成員とどのような方法で行うかという組織作りと戦略論に長けている」と説明しました。

Dr. Bahramiのセッションでは、VUCA時代におけるイノベーションの課題を踏まえたうえで、約12,000人のイノベーションリーダーに対して行った現場調査から導いた成功するイノベーターの5つの適応能力を紹介。事前に受講者が受検したアセスメントテストの個人結果を各々に配付し、受講者同士や歴代の成功者の結果と比較しながら、チームのイノベーション向上のためにどの適応DNAを活用・実践していきたいかグループで話し合いました。
また後半は、イノベーションを推進しステークホルダーと上司に影響を与えるためのケーススタディを行うとともに、実践的なステップやチェックリストを紹介。受講者のこれまでのイノベーション推進に関する最高/最低の経験を振り返り、そこから得られた実践的な教訓を全体で共有しました。この中でDr. Bahramiは、「イノベーションに必要な3つの『U』とは、Urgent Need(緊急のニーズ)、Unique Product / Service(ユニークなプロダクト・サービス)、そしてUnified Team(結束感のあるチーム)。最も大切なのは3つ目のチーム力なので、今回の学びをぜひチームに持ち帰り生かしてほしい」と受講者にメッセージを送りました。

西口特任教授による最終日のセッションでは、自社での実践に向けて会社ごとのグループに分かれ、ディスカッションを通してBerkeley Haasのセッションでの学びを構造化するとともに、イノベーション経営の国際規格(ISO56001)をヒントとして紹介。本コースの集大成として、2035年に輝いている自社のプレスリリースというテーマで各社がプレゼンテーションを行いました。

プログラムの最後には修了式が行われ、本コースを修了した受講者に対し、本学およびBerkeley Exec Ed連名の修了書が手交されました。
本コースでは、全プログラムを通してセッションごとにグループメンバーを変更し、毎回異なるメンバーと議論ができる環境が提供されました。このことは、Dr. Bahramiが講義の中で繰り返し伝えていた「イノベーションを起こすには、いつもと同じ環境、いわゆるコンフォートゾーンに留らないこと。自分とは異なる業界や価値観を持つ人から学ぶことを忘れないでほしい」という、シリコンバレーにおけるクロスポリネーション(相互受粉)の考え方にも通じています。

各日プログラム後に実施したネットワーキングにはほぼ全員の受講者が参加し、異業種や異職種同士の活発な交流の場となりました。
受講者の満足度アンケートにおいても、学習とツールやネットワーキングの機会を含めた全体的な受講体験は素晴らしいものであったと想定を超える高評価を得ることができました。Innovation Boot Campが受講者とその所属企業、そして日本のイノベーションエコシステムに与えるインパクトは大きいものと実感しています。
受講者満足度アンケートの結果(回答率100%)
Innovation Boot Campはアンケートで大変高い評価をいただき、全ての評価項目で6以上のスコア(7段階評価)を獲得したBerkeleyプログラムに与えられる「Club 6」ステータスを取得しました。
評価項目 | スコア | 100%換算 |
---|---|---|
1. 本コースで学んだ内容を効果的に応用できる確度 | 6.00 / 7 | 86% |
2. ROI(投資利益率) | 6.40 / 7 | 91% |
3. 各教員の教育効果(平均) | 6.55 / 7 | 94% |
4. 本コースでの経験全体 (事前課題や当日のディスカッション等含む) |
6.50 / 7 | 93% |
5. カスタマーサービス | 6.63 / 7 | 95% |
受講者の声(一部抜粋)
・大企業におけるイノベーションというテーマと、講義の内容、他業種と方とのコミュニケーションの組合せが非常に良かった。
・シリコンバレーの成功者の立ち位置だけではなく、既存企業の戦略を考えることで自社の立ち位置で考える訓練ができた。企業の強みを認識することができ自信になった。
・ステークホルダーへの働きかけ方の中に、適応DNA(※受講者は事前にアセスメントテストを受検、個人結果を当日各々に配付)の観点を用いてアプローチするというのが新たな視点だった。事実に基づき選択肢を与え、当事者意識をもって適時にコミュニケーションを取ることや、抵抗者への1on1での会話など、実践的な示唆を多く得た。
・インタラクティブな講義がダイナミックだった。受講生の発言から話題を広げ、本質的な話に持っていくという魅力があった。そして、先生方の表情、反応、話し方、接し方が何より素晴らしく、包み込まれるような感じだった。
・4日目に社内のメンバーで集合して改めて復習をする時間は、得た知識を自社の課題に落とし込むために大変役立つ時間だった。イノベーションに関するISO規格についても、イノベーションを起こすのに必要なことが体系化されており分かりやすかった。
Innovation Boot Camp 2025の実施
2025年度も11月17日(月)~20日(木)の日程で、Berkeley Exec EdおよびBerkeley Haasとの共催によりInnovation Boot Campを実施する予定です。
詳細については、Sophia Future Design Platform推進室の公式サイトでご案内します。
【本件問合せ先】
学事局 Sophia Future Design Platform推進室(プロフェッショナル・スタディーズ事務局)
Email: prostudies-co@sophia.ac.jp