上智大学(東京都千代田区、学長:杉村美紀)総合人間科学部の石井 由香理准教授らの研究チームは、全国の福祉事業所を対象に、トランスジェンダー等の要/被保護者に対する相談対応に関する調査を実施しました。
2023年6月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が施行されました。セクシュアル・マイノリティが差別的な扱いを受けることなく社会生活を営むためには、国民の理解を深めることに加え、公的制度の運用にたずさわる者が十分な知識を持ち、組織として支援体制を構築することが必要になります。本調査は、福祉事務所におけるトランスジェンダー等の要/被保護者に対する相談対応の実態把握を目的に実施しました。なお、調査全体の結果は、上智大学学術情報リポジトリで今後公開予定です。
本研究は2026年3月10日発行の「社会学論集第50号」に掲載されました。
性的マイノリティに関する研修の実施頻度については、1年に1回以上実施している事務所が25(16%)、数年に1回程度実施している事務所は16(11%)、それより少ない頻度で実施している事務所が4(3%)でした。実施したことがない事務所は103(68%)で、7割近くが実施していないという結果でした。
性的マイノリティへの相談対応に関連するガイドラインを作成・活用していない事務所は116(全体の76%)であり、依拠するものがなく、現場の判断でケースワーク業務を行うことになることが予測できます。
次いで、公共機関作成のものを用いているのが13(42%)、独自のガイドラインを作成・活用しているのが3(10%)でした。その他にも、男女共同参画センターが作成したものを活用している事例もありました。
トランスジェンダー等の被保護者を含む世帯数については、全152ケースのうち43%のケースにおいて無回答でした。13%のケースで0世帯、35%で1世帯以上9世帯以下、9%で10世帯以上を担当していました。多くの福祉事務所においてトランスジェンダー等の被保護者を含む世帯は非常に少ないものの、全体の10%程度、世帯数の回答があった中では20%程度の福祉事務所が、10世帯以上を担当していました。
研究を主導した石井 由香理准教授は次のように述べています。
「今回の結果からは、トランスジェンダー等の人たちへの対応は、実質的に各福祉事務所の現場裁量に任されていることが明らかになりました。相談体制については、ガイドラインやマニュアルなどの活用、定期的な研修を行うことで、職員が必要な知識を身に着けていくこと、また、支援団体とのつながりを強化し、相談しやすい環境づくりをすることが今後重要となります」
社会学論集第50号
「トランスジェンダー等の人びとに対する全国福祉事務所の生活保護サービスについて」
2026年3月10日
上智大学学術情報リポジトリに登録中
石井 由香理、結城 翼、脇田 彩、宮田 りりぃ
2024年10月31日~2024年11月30日(一部の回答は12月13日まで受け付けた)
東京都内の全福祉事務所(支所含む)及び東京都以外の全国の政令都市および中核市の福祉事務所
328か所
自記式調査
厚生労働省が公開している全国の福祉事務所の一覧(2024年4月1日時点)
本研究チームで実施
上智大学 総合人間科学部 社会学科事務室准教授 石井 由香理Email: dsocio-co@sophia.ac.jp
上智学院広報グループEmail: sophiapr-co@sophia.ac.jp
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トランスジェンダー等の人びとへの生活保護サービスの質は各福祉事務所任せ-福祉職員への研修体制の整備が今後の課題に