学生生活の至るところに散りばめられた、未来に繋がる気づきの瞬間。

池田 希さん
総合グローバル学部総合グローバル学科4年

「相手の立場に立って考えるということを今まで以上に意識するようになりました」と話す総合グローバル学部4年の池田希さん。世界の見方を変えるような授業と非営利団体の活動を通して彼女が得た、いくつもの気づきとは?

言葉にも世界にも、自分の常識を当てはめていた

入学前の私には、とにかく国境を越えた地球規模でのスケールで解決が必要な諸問題、いわゆるグローバルイシューを学びたいという強い想いがありました。でも、当時の私は海外と関りのない生活を送っていたので、自分がどんな分野で貢献できるのかが分からず、日々模索を続けていました。そんなときに難民に関するニュースを見て、関心を持ったんです。上智大学にはグローバルイシューを扱う学部学科が多いですが、私の場合は、1年生の段階で市民社会、国際関係や国際協力に関する基礎知識をつけてから追求したい専門分野を選択し、自分の進むべき方向性が決められるという点に魅力を感じて、総合グローバル学部を選びました。

入学して大きく印象が変わったのが、“グローバル”という言葉。入学前は、この言葉に「カッコいい」とか「世界が1つになる」といったイメージを持っていましたが、学部での学びを通して、全てを一緒くたにするのではなく、1人ひとりの個性や多様性を認め合うことこそが真のグローバルであるということに気づきました。その一方で、言語の多様性が失われているというような事案についても考えさせられることも多くて。「世界が1つになる」って、ポジティブな意味に解釈されがちですが、多様性という側面からみると、それは必ずしも良いことばかりではない。グローバル化は私が思っていたよりも複雑な事象で、必ずしも良いことばかりではないという発見もありましたね。

授業で、“インターナショナル”と“グローバル”の違いを学んだときも衝撃を受けました。インターナショナルは国家を超えたつながりであり、そこには国境が前提として存在します。でも、グローバルというコンセプトのもとでは、国境を超えた地球規模で問題を捉える。それまでの私は国境ありきで世界を見ていたので、この違いには驚きましたね。自分の中の常識が覆された瞬間でした。

自分の当たり前は、みんなの当たり前じゃない

学生生活の中で一番印象に残っているのは、インドとフィリピンの子どもたちの教育支援を行う学生団体での活動です。というのも、現地の方々とのつながりを通して、支援する側の私たちがもらっているものの多さに気づいたからです。国際協力には支援される側とされる側の上下関係ができてしまうようなイメージがありましたが、そんなことは全然なく、実際は私たちのほうが多くを学ばせてもらっていました。現地では、一緒に行ったメンバーたちと「教育支援とは何か」について一晩中話し合い、「私たちにできることは何なのか」を毎日のように考えていたことを覚えています。

また、移民問題に取り組むNPOでの活動を通じて、日本に来る外国人労働者や移住者の方々と直接向き合うこともできました。私は自由に海外へ行けるのに、彼らはとても不公平で難しい条件を突きつけられている。自分が同じ状況に置かれたら、一体どう思うだろうか。そうやって彼らの問題を自分事として捉えたり、彼らの立場から物事を考えたりする中で、自分の当たり前は世の中の当たり前じゃないことを痛感しました。かつての私は、こうした移民や難民の問題について、なんとなく海外の問題と認識していたんです。日本で向き合うイメージが持てなくて、海外に出て学ぶものなんだろうと思い込んでいたりして。ですがこの活動を通じて、日本にいても取り組めるグローバルイシューって、実はすごく多いんだと気づかされたんです。

このような経験を通して意識するようになったのは、自分の常識を人に押し付けないということ。それに、自分はいいと思っていても相手にとっては嫌なことって、実はたくさんあるんですよね。それを4年間で学んだので、自分の意見を言う前に、まずは相手の立場に立って考えるということを今まで以上に意識するようになりました。

本当に人のためになりたいからこそ、選べる自分の道がある

上智大学には、自分で何かしたいと思って行動を起こすことをポジティブに受入れてくれる環境があります。移民問題に対する理解を深めたいと思ったときも、その分野を専門とする先生に相談したら、NPOで働くことを提案してくださいました。四谷キャンパスはアクセスがいいので、学外で行われる活動に参加するときも、大学に立ち寄ってから行けるというのは心強かったですね。活動前に先生と疑問点や問題点などを話したり、リサーチをしたりすることができましたから。

私は上智で尊敬できる同級生や後輩、先生方にたくさん出会うことができました。みんな1人で頑張っているわけじゃないんですよね。友人の中にも、普段は見せないけれど、しっかりした軸を持って目標に向かって進んでいる人がいて、その姿を見ていると刺激をもらえますし、私も頑張ろうという気持ちになれます。これらの出会いに加え、イエズス会の神父様たちからキリスト教の精神や宗教観を学んだことも、私の支えになっていると思います。

卒業後は、総合商社で働きたいと思っています。学生団体やNPOの活動では、確かに100%相手のために考えて行動するという貴重な経験ができましたが、経済活動を通じて他者貢献をしてこそソリューションを生み出せるということに気付いたんです。だから私は、総合商社でインドのインフラ整備・開発に携わりたい。学生団体でお世話になった現地の方々に貢献したい。国際協力やNGOについて知らないまま就職していたら、「相手のために」という視点を強く持つ経験がないまま、就職活動に臨んでいたかもしれません。もちろん総合商社では、さまざまなビジネスを創造し、利益を出すことも重要です。これまでの経験と知見を活かして、ビジネスと他者貢献の両輪を上手に回す方法を考えていきたいですね。

※この記事の内容は、2021年9月時点のものです

上智大学 Sophia University