11月下旬、教皇フランシスコが、ローマ教皇としては38年ぶりに訪日します。カトリック男子修道会イエズス会を設立母体とする本学では、同じイエズス会出身の教皇の訪日を記念して、9月から11月にかけて「教皇フランシスコ訪日記念特別シンポジウム」シリーズを実施します。
9月19日、この特別シンポジウムシリーズの第1回として、イエズス会司祭のアントニオ・スパダロ神父による講演会「教皇フランシスコによる慈しみの地政学」が開催され、170人を超える聴衆が参加しました。
スパダロ神父は1966年生まれ。哲学や社会コミュニケーションを学んだ後、2000年にローマのグレゴリアン大学で神学博士の学位を取得しました。1850年に創設されたイタリアで最も歴史と伝統を有するイエズス会総合雑誌『チビルタ・カットリカ』の編集長を務めるほか、教皇フランシスコの私的顧問として、教皇の人となりを間近で見ている人物の一人でもあります。
スパダロ神父は、教皇フランシスコが繰り返し用いている「慈しみ」という言葉をキーワードに、教皇の考えについて講演しました。
スパダロ神父は、教皇が世界の紛争地域や対立を抱えている場所を幾度も訪問している事例を挙げながら、教皇庁は一方の立場に加担することなく、双方の視点でものごとを考えていると語りました。昨年の中国との暫定合意にも触れ、「これは到達点ではなく出発点にすぎない」とし、まだ多くの課題は残っているものの、関係改善は可能と考えていると述べました。
また、スパダロ神父は、教皇はテロを正当化しないが、テロリストのことは「可哀想な犯罪人たち」や「放蕩息子」と表現していると話しました。彼らは悪魔の化身ではなく、悪に走らないように止めてもらいたいのではないか、と教皇は考えていると述べ、「敵をも愛するという教皇の姿勢は、まさに『慈しみ』の勝利である。平和と正義の実現のためには連帯が必要であり、共通善を世界に実現することが『慈しみ』である」と語りました。
さらに、教皇の訪日についても言及しました。教皇は、訪日時に、津波、地震、原発事故の被害に遭った人のために祈り、また、核兵器廃絶についても何か語るだろうと述べました。
最後に、スパダロ神父は、長年にわたって日本で活動しイエズス会総長を務めたペドロ・アルペ神父と元本学神学部教授のアドルフォ・ニコラス神父の両名について触れたほか、元本学学長のヨゼフ・ピタウ大司教の思い出も語りました。ピタウ大司教から、「神は時速3マイルで歩んでおられる。それは、人間の歩くスピードと同じである。神は常に人々に寄り添っている」と言われたことが思い出に残っていると述べました。そして、教皇は希望と未来を拓き、傷ついた世界を癒してくれる存在であるとの言葉で講演会を締めくくりました。
講演会終了後、本学大学院神学研究科神学専攻博士前期課程2年次の小島さやかさんから花束を受け取り、本学を後にしました。