6月3日から20日まで、「国連の活動を通じて世界と私たちの未来を考える」をコンセプトに「上智大学国連Weeks/June 2019」が開催されました。第11回となる今回は、プレ企画を含む9つの企画に多彩なゲストが登壇したほか、SDGsパネル展が実施されました。本学学生のほか高校生も多数来場し、参加者は延べ約2,200人と過去最多となりました。

<プレ企画>シンポジウム「EUにおけるESGと統合レポートの現状と展望-日本企業の対応は?」

5月22日に、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)との共催シンポジウム「ESG投資と統合レポート-EUにおける現状と展望-日本企業の対応は?」が開催されました。開催にあたって、レディング大学(英国)のヘンリー・ビジネススクールとEYジャパン気候変動・サスティナビリティサービスの協力を得ました。

上智大学は国連グローバル・コンパクトに2015年に署名して以来、GCNJと共同でシンポジウム開催を続けており、今回が7回目です。テーマのESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視し選別して行う投資であり、SDGsの推進力としても大きく期待されています。ESG投資の判断には非財務的情報が極めて重要です。欧米ではESGに対する関心が急速に高まっており、EUでは非財務情報を統合した報告書の作成が義務付けられています。本シンポジウムでは、EUでの先進的取組事例を概観するとともに、我が国における企業や投資家の動向を共有することでこれからの課題を探りました。

グンナー・リメル教授

上智大学グローバル化推進担当副学長の杉村美紀教授による開会挨拶の後、司会を務めるグローバル教育センター浦元義照教授による趣旨説明がありました。基調講演には、後述のスペシャリスト養成講座で中心的な講師となるレディング大学ヘンリー・ビジネススクールのグンナー・リメル教授を招聘しました。同教授による「EUにおけるESG投資と統合レポートの現状と展望」の後、GCNJ業務執行理事の後藤敏彦氏、株式会社花王の柳田康一氏、アラベスク・アセット・マネジメントのネイサン・アベラ氏、および引間雅史上智学院経営企画担当理事による報告とパネルディスカッションが行われました。ファシリテータは、EYジャパンの牛島慶一氏が務めました。最後にGCNJ代表理事の有馬利男氏が総括し、シンポジウムを締めくくりました。

パネルディスカッションの様子

杉村教授は冒頭の挨拶で、上智大学が2020年度に新たな社会人プログラムであるプロフェッショナル・スタディーズを開設予定で、今年11月15日には開設記念イベントとして「ビジネスと人権」の世界的権威であるジョン・ラギー ハーバード大学ケネディー・スクール教授による基調演説が予定されていること、また11月18日からプレ企画としてスペシャリスト養成講座「非財務情報と投資の最先端-世界水準のESGを学ぶ」を開講する旨の発表がありました。

会場には企業人や学生など131人が参加し、質疑応答でも活発な意見交換が行われました。我が国の企業においてもESG投資の必要性が認識され、統合報告書への取組も広まっています。一方で、現状では企業間で温度差があり、悩みをもつ企業も多くみられるようで、本シンポジウムが参加者にとって有意義なものであることが窺われました。

<プレ企画>「ILO 100周年記念 労働CSRセミナー 外国人のディーセント・ワークと人権をめぐる課題と労使の対応」

5月31日には、ILO創設100周年を記念して、上智大学・ILO駐日事務所・日本ILO協議会との共催による労働CSRセミナー「外国人のディーセント・ワークと人権をめぐる課題と労使の対応」が開催されました(GCNJと日本生産性本部が協賛)。企業・労組・一般市民や学生など231名が参加し盛況となりました。

わが国の外国人就労者は200万人を超えるといわれ、高度人材の活用や非熟練労働者の受け入れが大きな課題になっています。昨年12月には「移住グローバル・コンパクト」が国連総会で採択されました。セミナーでは、これらの情勢を踏まえ、外国人労働者のディーセント・ワークと人権をめぐる課題と労使の対応を検討し、今後の課題を議論しました。

パネルディスカッション

長谷川眞一日本ILO協議会専務理事の司会で始まり、ILO駐日事務所代表の田口晶子氏、上智学院グローバル化推進担当理事のプテンカラム ジョンジョセフ教授が開会挨拶を行いました。「アジアにおける労働移動の状況と課題」と題した基調講演をILOアジア太平洋総局・労働移動上級専門家の二リム・バルア氏が行い、続いて厚生労働省海外人材受入就労対策室の吉田暁郎室長による特別報告「外国人人材の雇用に関する現状と課題」がありました。その後、株式会社アシックスの吉本譲二氏、ものづくり産業労働組合・JAMの古山修氏、NGOシェアの沢田貴志氏が、それぞれ現状と課題について発表しました。続くパネルディスカッションには、これらの登壇者に本学グローバル教育センターの浦元義照教授とGCNJ教育人権分科会幹事を務めるオリンパスの龍田久美氏がコメンテータに、日本ILO協議会の熊谷謙一氏がモデレーターとして加わり、活発な議論が繰り広げられました。参加者から寄せられた多数の質問も取り上げ、各パネリストからコメントがありました。

我が国にとって大きな課題である外国人労働者受入態勢の整備や環境整備、地域社会における共生と支援の促進に向けて、各人からの知見を共有し、考察する貴重な機会となりました。

シンポジウム「紛争と人道支援-国連の人道支援調整体制と課題」

6月3日、極めて困難な状況の中で行われる紛争下での人道支援について、国連はどのようにその調整を行い活動しているのかを考えるシンポジウムが開催されました。

はじめに、国連人道問題調整事務所(OCHA)のアンドリュー・ワイリー氏が基調講演を行いました。ワイリー氏はOCHAについて、自然災害や紛争などで最も弱い立場におかれている人々の生命と尊厳を守るため、1991年の国連総会決議により設立されたことを紹介し、人道性、中立性、公平性そして独立性という人道原則を護持し活動していると説明しました。

国連の人道支援調整活動の課題について議論

続いて、植木安弘総合グローバル学部教授の司会で、人道支援の専門家である本学客員研究員のジェシカ・アレクサンダー氏と元WFP(世界食糧計画)アジア総局長の忍足謙朗氏をパネリストに加えて、パネルディスカッションが行われました。

講演会「MISIAが見たアフリカの教育と開発支援」

6月4日、6号館101教室において、アフリカの支援活動を行い、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の名誉大使を務める歌手のMISIA氏を招いて、講演会が開催されました。

始めに、ビデオ映像によりMISIA氏の活動が紹介されました。続いて本人が登壇し、アフリカ各地のスライドを投影しながら、アフリカとの出会いやアフリカへの思いを語りました。

アフリカ開発会議の名誉大使を務めるMISIA氏が講演(撮影 Santin Aki)
MISIA氏がアフリカとの出会いや思いを語った

後半は、NHK国際報道局シニア・エディターの道傳愛子氏(1988年外国語学部英語学科卒)をモデレーターに、ケニアのスラム街で貧困の子どもたちの学校であるマゴソスクールを主宰する早川千晶氏とMISIA氏の対談が行われました。対談の中で両氏は、「学ぶことはスラムの子どもたちにとって希望であり、世界につながる鍵である」と教育の重要性を強調しました。

さらに学生代表として、上智大学の実践型プログラム「アフリカに学ぶ」に参加してカメルーンを訪問した山本明日香さん(法学部法律学科4年)と「めぐこ」-アジアの子どもたちの自立を支える会-代表の島田航太さん(文学部史学科3年)が加わり、スライドを使ってそれぞれの活動を紹介しながら意見交換を行いました。

講演会「『国連職員と話そう!』 元国連事務次長補 丹羽敏之氏を迎えて」

6月5日、2号館国際会議場において、講演会「『国連職員と話そう』—元国連事務次長補丹羽敏之氏を迎えて」が開催されました。

丹羽敏之氏は、民間企業で働いた後に国連機関に移り、36年間もの長きにわたり、国連開発計画(UNDP)、国連事務局、国連児童基金(UNICEF)などで働いた経験を持っています。

丹羽敏之 元国連事務次長補による講演

丹羽氏は、国連や国連の各機関について、その役割や特徴を解説しつつ、国際機関の職員としての働き方や心構えを分かりやすく説明しました。そして、国連職員として働くなかで、良き助言者の存在と人的ネットワークの大切さを強調しました。また、国際機関では思いやりや根回しなど日本的美徳に加え、積極的に自己主張することも必要だと語りました。

この講演会には、大学生や社会人だけでなく、高校生も多数参加しました。中には、将来は国際機関で働きたいとの希望を持っている生徒もいました。講演会終了後には、多くの参加者が丹羽氏を囲み、熱心に質問しながらメモを取っていました。

キャリア・セッション「国際機関・国際協力キャリア・ワークショップ」

6月6日、国際機関や国際協力分野でのキャリアを考える学生などに向け、講演会と来場者参加型のワークショップが開催されました。
はじめに、元国連事務次長でフォーリン・プレスセンター理事長の赤阪清隆氏が「目指せ、国際機関-こんなに素晴らしい職場はほかにない!」と題して基調講演を行い、国際協力分野を目指す学生へメッセージを送りました。

国際機関の専門家を囲んでクロストーク

後半は、上智大学国際協力人材育成センターのアドバイザリー・ネットワークから、国際協力機構(JICA)理事長特別補佐の岩切敏氏、日本ユネスコ協会連盟事務局長の川上千春氏など11機関の専門家を迎えて、それぞれのブースに分かれクロストークが行われました。参加者からは、「実際に国際機関で働く方と直接話ができる貴重な機会だった」などの感想が寄せられました。

シンポジウム「JICAの平和構築支援と広報戦略~国際機関との連携も視野に~」

6月11日、セミナー「人間の安全保障と平和構築」が、四谷キャンパス2号館17階の国際会議場で開催されました。

このセミナーは、人間の安全保障と平和構築に関し、日本を代表する専門家や政策責任者を講師としてお迎えし、学生や市民、外交官やNGO職員、国連職員、政府職員、マスコミや企業など、多様な分野から集まった人たちが、共にグローバルな課題について議論を深め、解決策を探っていくことを目的にしています。

今回は、国際協力機構(JICA)広報室長の天田聖氏が、「JICAの平和構築支援と広報戦略 ~国際機関との連携も視野に~」をテーマに講演しました。

(左から)東教授 天田室長 アガスティン教授

このイベントの詳細はこちらをご覧ください

シンポジウム「ISIS後のイラク・シリアにおける平和構築と難民支援~UNHCR協会・現場からの報告」

6月17日、国連UNHCR協会特別顧問の滝澤三郎氏、同事務局長の星野守氏、JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)アルビル駐在員の斉藤亮平氏および東大作グローバル教育センター教授によるシンポジウムが開催されました。

滝澤氏と東教授は、今年2月中旬にイラクのバグダッドを訪問し、現地の主要政党指導者たちと平和構築や難民・国内避難民問題について議論しました。また、星野氏はイラク北部アルビルを訪問し、現地でがんや白血病の子どもたちへの医療支援を行っている斉藤氏とともに、難民キャンプを訪れました。

イラク、シリアの現状や活動内容を報告した

シンポジウムでは、それぞれの立場から、イラクおよびシリアの現状や現地での活動内容を報告しました。そして、平和構築の課題として、武器の回収、生活基盤の回復、共生するための和解の作業などを挙げました。会場一杯の参加者からは質問が相次ぎ、活発な議論が展開されました。

トークイベント「世界の難民問題-日本からできること」

6月20日、6号館101教室において、「世界難民の日」にちなんで、トークイベントが開催されました。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)親善大使を務めるアーティストのMIYAVI氏が登壇し、約500人もの来場者がつめかけました。

はじめに、司会を務めた宝島社の田村真義氏(2002文新卒)との対談で、MIYAVI氏は、ケニアや数日前まで渡航していたバングラデシュで撮影した写真とともに、音楽やサッカーで現地の人たちと交流して感じたことなどを説明しました。

UNHCR親善大使のMIYAVI氏(左から2人目)と

続いて、小松太郎総合人間科学部教授と日比野桜子さん(総教4)が加わり、難民問題に関する対談を行いました。MIYAVI氏は世界各地の難民キャンプを回った経験から、日本人の難民問題への関心の低さを指摘し、日本も率先して、難民問題の解決に取り組むべきと訴えました。

客席からも多数の質問があり、「私たちが今すぐできることは」との問いに、MIYAVI氏は、「難民の人たちのためにできると思うことを、どんな小さなことからでも良いので始めてみよう」とアドバイスしました。

上智大学 Sophia University