上智大学と日本航空株式会社が奄美群島の環境と観光の共存を考えるシンポジウムを開催しました

2023年3月27日、本学四谷キャンパス6号館において、奄美群島(鹿児島県)の環境と観光の共存を考えるシンポジウム「奄美群島から考えるサステナビリティ」を日本航空株式会社(以下JAL)と共同で開催しました。対面およびオンラインで開催されたシンポジウムには約100人が参加しました。
「サステナブルな社会の実現」という共通の理念を有する本学とJALは、昨年1月21日に締結した連携協定のもと、奄美群島を舞台に環境保全と観光促進の両立による地域活性化をテーマに共同研究に取り組んでいます。本シンポジウムでは、昨年度に実施した宇検村での調査研究発表と奄美群島におけるサステナビリティに本学とJALが取り組む意義についてパネルディスカッションが行われました。

オープニング講演をする あん・まくどなるどアイランド・サステナビリティ研究所長
オープニング講演をする JAL常務執行役員 柏頼之氏
宇検村の紹介をする 宇検村村長 元山公知氏

シンポジウムは岡田隆学術研究担当副学長の開会挨拶で始まり、引き続きアイランド・サステナビリティ研究所長を務める、あん・まくどなるど地球環境学研究科教授およびJAL常務執行役員の柏頼之氏によるオープニング講演がありました。その後、宇検村の元山公知村長が登壇し、世界遺産登録された豊かな自然をはじめ、伝統行事、村の人々、村の取組みなど、写真と歌を交えながら村の魅力を紹介しました。

共同研究プロジェクトを説明する JAL産学連携部長 栢沼史好氏
河川の水質調査結果を発表する 黄光偉教授
住民意識調査結果を発表する 柘植隆宏教授
「世界自然遺産価値保全と宇検村新たな観光のあり方への4つの視点」を発表する 織朱實教授

次に行われた調査研究発表では、まずJAL産学連携部長の栢沼史好氏が、共同研究プロジェクトの概要とその目的である環境保全と観光促進の両立モデル(奄美モデル)の構築に向け、生物多様性を守る滞在体験を宇検村で実証するためにプロジェクトがどのように進められているのかを説明。その後、地球環境学研究科の3人の教授からそれぞれ宇検村での調査研究発表がありました。
黄光偉教授は、冒頭で環境保全と観光促進を両立するという理念を具現化するためにはエビデンスに基づいた地域環境の現状把握が必要であると説明し、宇検村で実施した河川の水質調査結果を発表しました。観光客が増えると生活排水増による水質汚濁進行が予想され河川の自浄能力の向上が求められるが、それは河川景観とセットで議論すべきだと述べました。
柘植隆宏教授は、宇検村で行った観光に対する住民意識調査について発表しました。調査結果から、観光客増加に対する抵抗感は見られず、世界遺産になることで村に若い人が増える点や経済的に豊かになる点が期待されている一方で、自然が壊されることやゴミ、排水の増加などにより環境の悪化が危惧されており、自然破壊や環境悪化を起こさない観光による地域活性化を目指すことが望ましいと結論付けました。
織朱實教授は「世界自然遺産価値保全と宇検村新たな観光のあり方への4つの視点」と題した発表の中で、宇検村の地域課題解決と経済(観光)と環境保全をどう融合していくのか、調査、研究分析を進めていく上で、①SDGs的視点(環境、経済、社会のバランス)、②多様な関係者からの視点、➂世界自然遺産価値活用からの視点(自然保全と利用)、④事例比較的視点(国内外の自然遺産取組・地域活性化の事例比較)の4つの視点を持つ重要性について述べました。さらに地域課題解決に向け、学生研修やアンケート、事例調査やワークショップを通して、①村の魅力を再発見し、②価値の利用と保全のバランスを図り、➂他の自然遺産地域と連携して観光モデル事業を考えるなど、協働による新たな価値を創成する3つのステップのサイクルについて説明しました。
教授たちの発表の他、昨年奄美大島研修旅行に参加した地球環境学研究科の大学院生が、研修最終日に行った観光モデルに関する発表の一部と宇検村で撮影した動画も紹介されました。

左から 織朱實教授、元山公知村長、栢沼史好氏、柘植隆宏教授

パネルディスカッションでは、織教授がモデレーターを務め、元山村長、栢沼氏、柘植教授が登壇。宇検村を調査研究対象とする意義、村の魅力、観光商品としての魅力、世界遺産の活用、持続可能な観光など多岐にわたり話を進めました。また途中、奄美や知床の観光戦略の立案に携わる環境省などの職員がオンラインで加わり、宇検村での観光のあり方について議論を深めました。
質疑応答の後、最後に柏氏が近江商人の「三方よし」の経営哲学に触れ、売り手と買い手の満足に加えて社会貢献(自然保全)ができてこそ良い商売と言えると閉会の挨拶を述べ、シンポジウムを締めくくりました。

上智大学 Sophia University