映画への憧れが開いた扉。フランスで見つけた新たな目標
上智大学では毎年多くの学生が日本を飛び出して世界各国に留学しています。言語、文化、生活習慣の違いを乗り越えた先に見えたものとは。留学した学生たちの声を集めました。
留学に行こうと考えたきっかけは何ですか。
幼い頃から映画や音楽をきっかけに外国の言語や文化に興味を持ち、いつかは留学したいとずっと考えていました。高校時代にイギリスへの語学留学を予定していたのですが、コロナの影響で中止となってしまい、大学では必ず留学しようと入学前から決めていました。
留学先(国・大学)はどのように選びましたか。
高校での語学留学が中止になったことをきっかけに、せっかく行くなら語学留学ではなく、現地の言語で自分の興味のある芸術分野を学びたいと考えるようになりました。特に映画に強い関心があったため、映画発祥の地であるフランスで学ぶことを目標にフランス語学科への入学を決心し、入学と同時にゼロからフランス語を学び始めました。
留学前に不安に感じていたことはありますか。
初めての一人暮らしということもあり、不安だらけでした。ビザや大学・住居の手続きをフランス語で行うことにもかなり苦労しました。出発前は「まずフランスに無事に到着できるのか」という不安が大きく、言語や文化の壁については、留学が始まってから意識するようになりました。
留学のために準備したこと、また、しておけばよかったと思うことはなんですか。
フランス語学科の授業でフランスの言語や文化についてはみっちり勉強してきたつもりでしたが、いざフランスでの生活が始まると、特に言語面で苦労しました。
最初は現地のフランス語、特に学生が話すフランス語は聞き取ることすらできませんでした。ラジオやYouTubeを活用して、もっとカジュアルな話し方にも慣れておけばよかったと思います。
大学や学生の雰囲気はどのようなものでしたか。
私が通っていた大学は私立のカトリック系大学だったので、設備や学生の雰囲気が上智大学に近いように感じました。また、留学生が多いことから、履修の手続きだけでなく、住居・保険・交通機関の手続きに関しても、大学がしっかりサポートしてくれていました。
どのように交友関係を広げていきましたか。
現地の学生と同じ授業を受けていたため、授業に追いつくのが難しかったです。そんな中、既にできあがっている学生の輪に入るのはとても緊張しました。しかし、唯一の留学生ということもあって声をかけてくれる学生もいて、テスト前にノートを借りたり、昼食を食べながら予習・復習に付き合ってもらったりしました。
同じ寮に住んでいた学生とは、共用キッチンをきっかけに親しくなりました。留学生がとても多い寮だったので、お互いの国の料理を振る舞い合うこともよくありました。食事や買い出し、勉強など、1日の大半を寮の友人と過ごしていました。
授業の様子、学習内容、試験などは日本と比較して違いがありましたか。
授業用のスライドやレジュメがなく、ひたすら教授の話を聞いてノートを取る形式でした。知らない単語が出てきて調べている間にも授業は進んでいくため、最初は2時間の授業が終わるとぐったりしていました。
試験は選択問題ではなく論述問題が基本でした。フランスのdissertation(小論文)の型を掴むまでは、どのように論を展開すればよいのか、どのような表現を使えばよいのか分からず、とても苦労しました。
学業以外でもっとも力を入れたことは何ですか。
心身の健康をとても意識していました。日本では両親と暮らしており自炊の経験もありませんでしたが、生活に慣れてからは健康的な食事を心がけていました。スーパーや日曜日に開かれる地元の市場で安くておいしい野菜や果物を手に入れられたので、食生活を整えやすい環境でした。
自分の性格上、学業面で妥協したくなかったのですが、燃え尽きてしまっては意味がないので、疲れたときは友人を誘って近くの公園へ散歩に行ったり、一緒に料理をしたりして気分転換をしていました。
留学先ならではの魅力や、新たに気づいた点は何ですか。
リールはフランスとベルギーの国境近く、パリから鉄道TGVで約1時間の街です。白い石造りの建物が並ぶパリとは対照的に、煉瓦造りの建物が多いことが特徴です。学生が多い活気ある街で、大学近くのJardin Vauban(ヴォーバン庭園)はいつも学生で賑わっており、私も毎日のように足を運んでいました。便利で活気がありながらも、パリのようなせわしない雰囲気はなく、とても居心地よく過ごせました。
最も印象に残っている出来事や、衝撃を受けたことは何ですか。
フランスに住む人たちが親切だったことです。「フランス人は冷たい」「英語で話しかけても返してくれない」という話を聞いたことがありましたが、私はそう感じませんでした。パリのメトロで大きなトランクを運んでいたときも、TGVの荷物棚にトランクを載せるのに苦戦していたときも、周りの人が助けてくれました。
また、イタリア旅行中に出会ったフランス人の老夫婦とは、英語とフランス語を交えながらその場で会話が弾み、今でも手紙のやり取りをしています。
留学中のトラブル、大変だったことは何ですか。また、どのように乗り越えましたか。
寮の部屋でネズミが出たことです。壁の穴からおそらく入ってきたのですが、寮の管理会社にフランス語で修理を依頼することに苦労しました。何度メールを送ってもなかなか対応してもらえなかったため、隣の部屋に住んでいた友人と協力して自分で対処しました。その友人とはこの出来事をきっかけに仲良くなれたので、今となってはフランスらしい良い思い出です。
留学の前後で比較して、成長できたと実感する点や意識が変わった点はどこですか。
うまくいかないこと、予想外の出来事に対処できるようになったと思います。完璧主義で予定調和を好む性格ですが、留学中は「うまくいったらラッキー」くらいの気持ちでいました。その結果、新しい環境や物事に挑戦できる強さを持てるようになったと思います。
留学経験は今後の人生にどう影響しそうですか。
留学へ行く前は考えてもみなかったことですが、大学卒業後にフランスの大学院に進むことを考えています。フランスでの生活が気に入ったこと、また今回の留学で学業面において悔しい思いをしたことから、さらに学びを深めたいという気持ちが芽生え、もう一度挑戦したいと思っています。留学によって、自分の視野も今後の人生の選択肢も広がったと感じています。
留学に行こうか迷っている人に一言
留学の準備も留学先での生活も大変なことばかりですが、必ず良い経験になると思います。完璧に準備してから行こうとすると、永遠に行けないかもしれません。私自身、フランス語も生活力も十分とは言えない状態で飛び込みましたが、なんとかなりました。うまくいかないことも、予想外のトラブルも、すべて現地で乗り越えられます。迷っているなら、まず行ってみることをおすすめします。