現地の生活に溶け込んだからこそ分かるウルグアイの魅力
上智大学では毎年多くの学生が日本を飛び出して世界各国に留学しています。言語、文化、生活習慣の違いを乗り越えた先に見えたものとは。留学した学生たちの声を集めました。
-なぜウルグアイへ留学に行こうと考えましたか。
高校2年生の時に、南米のチリに1年間留学をしました。大学でもチリに留学するつもりでしたが、入学と同時に新型コロナウイルスが流行し、今まで普通にできていたことができなくなりました。その時に、「時間とチャンスが与えられているときに、できるだけ経験を積むことが大切」だと気付き、既に知っているチリではなく、他の南米の国に留学することにしました。新型コロナの影響でかなり閉鎖的だった大学生活を1日でも早く変えたくて、春出発にこだわっていたこともあり、条件が合うウルグアイに決めました。
-留学前に不安に感じていたことはありますか。
まずは、本当に渡航ができるかということが出発の1カ月前までわからなかったので、この留学が流れることを心配していました。出発前に自分自身が感染することも恐れていたので、必要以上の外出は控えていました。また、ウルグアイは、上智大学からまだ誰も留学したことがなく、南米の国々の中で最も情報が少ない国。チリと同じくらいにウルグアイを好きになれるかが不安で、「やっぱりチリに留学したらよかった」と後悔することを懸念していました。結果的に、ウルグアイも大好きになったので、杞憂に終わりました。
-留学のためにしておけばよかったと思ったことはありますか。
空港からホテルに着くまでの道順を、可能な限り詳細に調べておくことです。最も安価な交通手段である路線バスで、空港から中心街に出たのですが、ホテルの住所だけではなく、その両隣の道の名前や周りの店の名前などをメモしておくべきだったと後悔しました。到着直後は私のスマホにインターネットもつながっていなかったので、バスからなんとかして降りたあと、大きいスーツケースを引きながらモンテビデオの街を1時間以上さまよいました。今となっては笑える失敗談です。
-大学や学生の雰囲気はどうでしたか。
大学はモンテビデオの中心地から少し離れたところにありますが、隣に人気サッカーチームのスタジアムやバスターミナルがあるので、キャンパス周辺は活気に溢れています。学生からは、のんびりした雰囲気が感じ取れました。課外活動が盛んではなく、ウルグアイ人の学生は授業が終わると家に直帰していたので、キャンパスで現地人の友達と過ごすことはあまりありませんでしたが、一緒に授業の後に作業をすることはよくありました。
-どのように交友関係を広げていきましたか。
ウルグアイの学生はシャイな人が多い印象を持ちました。だから、友人作りは思っていたよりも難しかったです。1学期目は広い交友関係を築くために、グループワークが多く、少規模な授業を選んだのですが、とある授業では、あまりにも専門用語が多くて難しい上に、周りに相手にしてもらえず、かなり辛い思いをした経験もあります。したがって、波長が少しでも合う人ともっと仲良くなるという目標に変えて、クラスメイトとたくさん話しました。結果的に、休日に集まったり、旅行をしたりする現地の友達ができてよかったです。
-授業の様子、学習内容、試験などは日本と比較して違いがありましたか。
授業は、日本よりも小規模なものが多く、教師との距離は近かったので、常に双方向のやりとりがありました。授業のあとに質問をするのではなく、疑問点はその場で質問することが当たり前でした。学習内容は、スペイン語であることを考慮しなければ、日本よりやさしかったと思います。試験は、2年生までの授業はほとんどありません。授業内でのプレゼンとレポートで評価される科目が多かったです。ミニテストが毎回ある授業もありました。
-学業以外でもっとも力を入れたことは何ですか。
現地人と関わりを持って、語学力を向上させ、ウルグアイのことをもっと知ることに力をいれました。ウルグアイ人とルームシェア、バレーボールクラブに入って現地人と一緒に練習、サッカー観戦、一緒に飲みに行く、などを通してウルグアイ人の生活に入ることを意識していました。周りの留学生はあまり現地人の友達はいなかったのですが、私は1学期ではなく1年の留学というのもあったので、絶対にこの目標は達成しようと考えていました。
-留学先ならではの魅力や、新たに気付いた点は何ですか。
まず、モンテビデオの魅力は、住まないとわかりません。よく、「やることある?」「楽しいの?」と聞かれますが、そういった観光地としての魅力は、隣のブエノスアイレスに勝ることはありません。私も、着いたときは「これが首都なのか?」と思ったほど、規模の小さな都市です。しかし、そうであるからこそ、勉強をする環境としては最高です。また、四季があり、快晴の日もあれば大雨の日もあります。時には明るく、時には暗いモンテビデオの空気から、ここで生活していることを実感していました。ここが留学先で良かったと思います。
-最も印象に残っている出来事や、衝撃を受けたことは何ですか。
留学が始まって間もないころ、聖週間で1週間の休みがあったので、留学生同士でブエノスアイレスに旅行をすることになりました。総勢10人で、米国、英国、ブラジル、日本出身と、文化も言語も異なるグループだったのですが、大変なこともありながらも、楽しく安全に終えることができました。このカオスな旅行が無事終えられたことが、今では奇跡のように感じています。彼らとは、今でも連絡をとりあう間柄の良き友達です。
-留学の前後で比較して、成長できたと実感する点や意識が変わった点はどこですか。
単独行動も団体行動も以前より上手くなったと実感しています。言語や価値観が異なる人たちとの生活、時間を共有することを通して、意見交換のスキルも向上したと思います。単独行動としては、やはり度胸がついたと思います。この留学以降は、一人で海外へ旅をするようになったので、留学での経験が成長させてくれたと思います。
-留学経験は今後の人生にどう影響しそうですか。
帰国してからまだ1年も経っていませんが、既に現在の生活にかなり影響しています。国際交流の楽しさ、素晴らしさを実感したので、イスパニア語学科生と留学生が交流するためのイベントを企画する団体El Puenteの活動を活性化させています。また、スペイン語を現地で学んだ経験から、現在は言語教育にも興味を持っているので、日本語ボランティアにも赴いています。現在はチリの首都サンティアゴでインターンシップ中なのですが、現地スタッフと働く中で、ウルグアイ人や他の留学生と関わることで学んだコミュニケーション方法を実践しています。これからも、留学での経験や学びが自分の人生の糧になると思います。
-留学に行こうか迷っている人に一言お願いします。
私の留学は間違いなく人生を変えました。私は人生を変えたいと思って留学を決めたので迷いはなかったのですが、もし少しでも挑戦したいという気持ちがあって迷っているのならば、留学をすることをおすすめします。私は、東京にいても、サンティアゴにいても、常に心のどこかにモンテビデオがあって、そこでがむしゃらに生きた経験が、今に生きています。学生のうちでないと海外の大学に留学することも難しいと思います。また、感性が若く思考が未熟なうちこそ、海外で学ぶ価値が大きいと思います。あなたが勇気を出して一歩踏み出すことを心から応援しています。